2019年8月9日~10月14日(月・祝)まで、京都国立近代美術館にて開催中の展覧会【ドレス・コード?――着る人たちのゲーム】。ワコールが全面的に活動を支援する、京都服飾文化研究財団の所蔵品を中心とした300点もの作品が展示されています。時代ごとのファッション、映画・漫画に描かれたファッションなど、さまざまな角度から"装い"について知り、感じることができる魅惑のイベント。その見どころをピックアップしてご紹介します。
「?」のつく13のテーマからファッションをひも解く
いち早く、着る文化に焦点をあてた展示に取り組んできた京都国立近代美術館が、5年に一度京都服飾文化研究財団とタッグを組むファッション展。これまでと違うのは、クリエイティビティに力を入れるのではなく、"着る"ということに対して疑問符をつけて観る人に問いかけ、ある種の批評性をプラスしていること。
そんな、想像力をかきたてられる13のテーマとは。
00:裸で外を歩いてはいけない?
01:高貴なふるまいをしなければならない?
02:組織のルールを守らなければならない?
03:働かざる者、着るべからず?
04:生き残りをかけて闘わなければならない?
05:見極める目を持たねばならない?
06:教養は身につけなければならない?
07:服は意思を持って選ばなければならない?
08:他人の眼を気にしなければならない?
09:大人の言うことを聞いてはいけない?
10:誰もがファッショナブルである?
11:ファッションは終わりのないゲームである?
12:与えよ、さらば与えられん?
会場に足を踏み入れると、最初に目に飛び込むのが「00:裸で外を歩いてはいけない?」。
ミケランジェロ・ピストレット《ぼろきれのビーナス》1967年 豊田市美術館所蔵
山のように積まれた古着を前にして、たたずんでいる女神ヴィーナスの姿が印象的です。古典美術の石膏像と組み合わせることによって、不用品だったはずの衣服が再び芸術品としての価値を得る...というのが興味深いところ。"服を着る"という社会の暗黙のルールを改めて問いかけられます。
18世紀の宮廷服からストリートカルチャーを反映した現代服までを網羅
漫画と連動した展示にも注目を。「01:高貴なふるまいをしなければならない?」では、18世紀のフランスを舞台にしたコミック『イノサン』『イノサン Rouge ルージュ』(坂本眞一)とのコラボが実現。自分の身分や特権を知らしめる豪奢なドレス、社会的な格差に対抗するための戦略的な異性装が展示されています。
左:スーツ(アビ・ア・ラ・フランセーズ)1790年頃
右:ドレス(ローブ・ア・ラ・フランセーズ)1770年代後半、素材1750-1760年代
「02:組織のルールを守らなければならない?」のコーナーには、多様なスーツがずらりと。そもそもは社会の規範に合わせて身に着けていたスーツですが、写真中央のアメリカのズート・スーツのように形を変えて生まれたものも。これが、年代によっては懐かしく感じる学生服を改造した"ボンタン"にもつながっているとのことで、ファッションのおもしろさに気づかされます。
中央:ズート・スーツ(ジャケット、パンツ)1940-1942年 ロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵
さらに、「06:教養は身につけなければならない?」には、インパクトの強いファッションが並びます。著名なアートを身につけることで、教養のある消費者の欲望を満たしてくれるというファッションのあり方も。
すべてコム デ ギャルソン/川久保玲 2018年春夏
こちらのバッグもしかり。美術史上、価値の認められている有名な作品をバッグに転用することで、商品としての価値はどうなるのか?というクエスチョンが生まれます。
左:ルイ・ヴィトン、ジェフ・クーンズ バックパック
右:ルイ・ヴィトン、ジェフ・クーンズ バッグ
2017年
ファッションでカテゴライズされる、第一印象
最後にピックアップするのは、写真からファッションについて感じとることのできる展示です。「08:他人の眼を気にしなければならない?」の壁一面に並ぶのは、オランダ出身の美術家、ハンス・エイケルブームが50以上の都市のショッピングモールで撮影した人々の装い。同じ場所、日、時間に同じTシャツを着ている人、上下デニムをまとっている人、迷彩柄の衣服に身を包んだ人...。カメラを首から下げ、ポケットの中からシャッターを切るという方法で記録された人々は、その時代のありのままのストリートファッションを記録してもいます。
ハンス・エイケルブーム《Photo Notes》 1992-2017年 作家蔵
身に着けているものによって、その人の第一印象が決まる。日常を過ごす人々のポートレイトだからこそ、自分や周りの人に置き換えて考えられます。

ファッションは「着る」だけではなく、「視る/視られる」ものであることを再認識させられます。タイトルの通り、13の「ドレス・コード」をまるで「ゲーム」のように、自分のこととして捉えながら展覧会を満喫しませんか?
「ドレス・コード?ー着る人たちのゲーム」展
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
会期:2019年8月9日(金)~10月14日(祝・月)
休館日:月曜休(8/12・9/16・23・10/14開館、8/13・9/17・24休館)
開館時間:9:30~17:00(金土曜~21:00)※入館は閉館30分前まで
入場料:一般1,300円、大学生900円、高校生500円、中学生以下無料
https://www.kci.or.jp/special/exhibitions2019/