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  • 2023.03.22

体型の悩みが魅力に変わる着こなし術

「隠さず、魅せる」コーディネイトをプロが伝授!

体型の悩みが魅力に変わる着こなし術

きっと誰もが大なり小なり持っている、体型の悩み。そして、年齢を重ねることで生まれる、昔は似合ったのに……という新たな悩み。何をどう着たらいいのか、今の自分に似合う服がわからなくなっている人も少なくないでしょう。そんな人たちをパーソナルなコーディネイト術でスタイルアップしてきたのが、伊野佳代子さん。ボディポジティブやボディニュートラルという考え方が広がりつつあるように、それぞれの個性を生かし、お悩みさえも魅力に変える、簡単なテクニックを教えていただきました。

肩の丸みや二の腕のもたつきが気になる人へ

Styling Advice
とろみのある素材で上半身のボリュームを曖昧に

とろみのある素材で上半身のボリュームを曖昧に ドロップショルダーのトップスやカーディガンなら、胸もとをすっきり見せるVラインづくりも簡単

年齢とともに肉質がやわらかくなり、やせていても背中や肩の丸み、二の腕などを気にする人は多いです。こんなケースでは、トップスの素材とシルエット選びがとても大切

まず素材は、程よいとろみ感があるものを。からだのラインをストンと見せて、ボリュームをおさえてくれます。そして、デコルテの肌をチラ見せして、軽やかさを演出できるVネックであることが大事。おすすめは、とろみのある素材を使った、肩の位置を主張しないドルマンスリーブのシャツやカーディガン。上半身の厚みをソフトにやわらげてくれます。

隠そうとする意識から、生地が厚く硬めのリブ素材や、かなりオーバーサイズで肩の落ち感が激しいものを選びがちですが、むしろ肉感的に見えてしまうこともあるので気をつけて。見た目だけではわかりづらいため、必ず試着をして確認を。また薄着の季節は特に、ブラジャーなどのインナーウェアを見直すことで悩みの解決につながるケースも。バストのボリュームがからだの幅よりも広がるとふくよかに見えるので、脇のラインをすっきり見せるブラなどを取り入れるのも一策です。

そして、鎖骨が目立たずデコルテがきれいに見えないという人は、スキッパーシャツのようにVネックの切り込みが細めで深いトップス選びを。鎖骨まわりがそこまで見えず、縦のラインに目が向きやすいため、デコルテや首もとが美しく見えます。

上半身が華奢で貧相に見えてしまいがちな人へ

Styling Advice
フリルやプリーツ、プリントなどで華やかに

上半身が華奢で貧相に見えてしまいがちな人へ 胸もとのフリルが程よいボリューム感を演出。インナーを仕込むことでからだの薄さも目立たず、首もとの骨っぽさもさり気なくカバー

華奢で洋服が映えないと感じているなら、胸もとにデザインがあるトップスを選ぶのが得策。プリーツやフリルなどの立体的なデザインであるほど、ボリューム感がプラスできて華やかな印象になります。

その際の注意点が一つ。立体的なデザインの服でも、胸もとの開きが広いとかえって上半身の薄さが際立ってしまいます。最近トレンドのシースル系や薄手のタートルニットなどをインナーに合わせて、華奢なネックラインをより魅力的に見せましょう。

バストの位置が下がって、上半身がどことなくさびしい……。この感覚はバストの大小にかかわらず、年齢を重ねた女性の多くが感じるもの。そんなお悩みをプラスに変える、華のあるトップス選びは覚えておいて損はありません。

おなかが気になってトップスをインするのが苦手な人へ

Styling Advice
“片側だけイン”しておしゃれにメリハリを

おなかが気になってトップスをインするのが苦手な人へ 左:ゆったりサイズのトップスをストンと着ると、おなかは隠れるけどおしゃれ度は低め
右:サイドインでおなかまわりに斜めのラインが出現。“ぽっこり”が曖昧になり脚長効果も

ビッグシルエットのトップスの流行とともに、前身ごろをスカートやパンツにインする着こなしがスタンダードになっていますが、おなかまわりのぽっこり感を気にする人たちは躊躇しがちな傾向があります。

ただ、全身のバランスをきれいに見せるためには、トップスのボリューム感を調整するメリットは大。そこでおすすめしたいのが、トップスのセンターではなくサイド部分をインするテクニック。これでおなかを斜めに分断するラインができて、ウエストまわりもすっきりした印象に。腰から縦長のシルエットを見せることで、視覚的な脚長効果も生まれます。

Styling Advice
中央に寄せながらインするのが“前だけイン”のコツ

おなかが気になってトップスをインするのが苦手な人へ 中央に寄せながらインするのが“前だけイン”のコツ 左:前だけインしたあとに、生地をつまんでセンターに寄せながらたゆませるのがポイント
右:トップスがウエストラインにふわっとかかることでぽっこり感がやわらぎ、こなれ感はアップ

洋服のデザインなどによってトップスのサイドインが難しい場合は、“前だけイン”を大人仕様にアレンジしたバージョンを試してみて。やり方はとても簡単。トップスの前身ごろをインしたら、センターへ生地を寄せながら、少し生地を出していくだけ。扇形に寄ったギャザーの立体感で、おなかまわりも目立たずきれいに着こなせます

細身のパンツやスカートの着こなしに自信がもてない人へ

Styling Advice
隠しているのではなく、“おしゃれでやってます”的なレイヤードスタイルを

細身のパンツやスカートの着こなしに自信がもてない人へ 左:下半身のボリュームを長めのトップスでカバーするベーシックな着こなし
右:ショート丈のベストを重ねるだけで重心が上がり、おしゃれ度もアップ

体型の変化を感じ、これまでの服が合わなくなったという30代の方も多くいらっしゃいます。おなかまわりを気にされるケースが一番多く、以前より細身のパンツが似合わなくなったというお悩みもよく聞きます。

腰まわりが隠れる長めのトップスを着ることで安心する人が多いのですが、上半身が長く見えてしまうため、どうもしっくりこない。重心も下がって見えるから全身のバランスが取りづらく、着こなせていないと自信をなくしてしまいがちです。こんなときは、ショート丈のベストなどを重ねて、重心を上へ。このレイヤードスタイルで“カバー”のための着こなしが、おしゃれ上手な雰囲気に。合わせるロングトップスは、できればとろみや光沢のあるつるんとした素材のものを。空気をはらんで膨らんでしまうコットンなどよりすっきり見えて、大人の気品も感じられます。

また、合わせるボトムス選びも大切。レギンスのようなピタッとしすぎるものより、足首に向けて細くなるテーパードパンツのフィットしすぎないシルエットのほうが、脚のラインがきれいに見えるのでおすすめ。センタープレスが入ったものなら、細見え効果も加わってなおよしです。

自分に似合うパンツのシルエットがわからない人へ

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華奢な人はワイドタイプ、ボリュームのある人はジャストサイズのデニムを

細身のパンツやスカートの着こなしに自信がもてない人へ 左:腰まわりがふわっと広がるワイドパンツで、華奢なヒップもスタイルアップ
右:ふくよかなヒップラインは、しっかりとしたデニム生地でピタッとホールド

幅広い年代で迷いがちな、ボトムス選び。全身のバランスにも大きくかかわるだけに、外さない1本、1枚をキーワードでおさえておくことで、自分らしい着こなしに自信が生まれるきっかけにもなります。

例えば、腰まわりが細くペタンと見えてしまうのなら、ボトム選びのキーワードは“ボリューム”。スカートなら、チュールのようにフワッと広がる立体的なデザイン。パンツなら、タックの広がりが出るワイドパンツを。ともに丈が長めのものを選ぶことで脚長効果もアピールできます。

反対に、下半身のボリュームが気になるなら“ジャストフィット”がキーワード。ストレッチ素材やニットのような伸びる素材ではなく、デニムのような硬く厚い生地をジャストサイズでピタッと履くほうが、ヒップラインがきれいに見えて、体型を格好よく生かすことができます。トップスは短めにして、ちょっぴりマニッシュに。そんなアレンジをプラスしながら、着こなしを楽しんでください。

ずん胴に見える気がしてスタイルがきまらない人へ

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無理してメリハリをつけず、ワントーンにまとめてIラインを強調

細身のパンツやスカートの着こなしに自信がもてない人へ 左:上下を同系色でそろえ、縦長効果を狙った着こなし
右:ロングジレをまとうことで、Iライン効果がさらにアップ

身長や体重にかかわらず、全身のメリハリのなさを気にしてコーディネイトの幅を狭めてしまうのはもったいないこと。それならば、いっそストンとしたラインを生かしたIラインコーデを極めてみるのがおすすめです。

例えば、縦長のラインをイメージして、トップとボトムの色を合わせてみる。カラーは自分が落ち着く色であれば何色でもOK。トップにニットを合わせると裾のリブがアクセントになるので、着るだけでグッとこなれたスタイルに見えます。

さらに効果的なのは、同系色のワントーンコーデの上から、反対色のロングジレやアウターなどの羽織りものをプラスするテクニック。Iラインがより際立ち、色のメリハリで洗練度の高いおしゃれを楽しめます。

もしトップとボトムの組み合わせに自信がなければ、ワンピースでも大丈夫。華奢な人なら、ふんわり素材のワンピースをウエストマークして。グラマーな人は、ストンとしたIラインのワンピースを選んでみて。

正解にとらわれず、自分らしさを磨くのがおしゃれの楽しさ

パーソナルスタイリングでは、個人としても社会的にも成熟期を迎える30代からの相談がとても多いです。生活スタイルやからだのシルエットが変化して、今まで着てきた服が似合わなくなったり、服選びの基準に迷う変革期なのだと思います。そんなときは正解にとらわれず、襟や肩を抜く、着崩す、インする、重ねる、思い切ってラインを出してみるなど、ちょっとした工夫を取り入れて、しっくりくる着こなしを見つけてみて。いくつになっても自分らしいおしゃれを楽しんでください。

  • 伊野佳代子(いの・かよこ)
  • 伊野佳代子(いの・かよこ) パーソナルスタイリスト。大手アパレル会社でキャリアを重ね、ジュエリーからバッグ、靴、服まで幅広い知識を体得。出産を経て仕事復帰後、フリーランスでパーソナルスタイリングをスタート。イベントやオンライン講座なども定期的に開催し、セオリーどおりのファッションではなく、「その人らしさ」を尊重した大人カジュアルのスタイル提案で、多くの女性たちをサポートしている。
    https://www.stylingvary.com/
取材・文/田中あか音
撮影/新妻誠一
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC