女性も要注意!加齢臭の正体とは

特集/においと香りと人のからだ

先生/関根嘉香(東海大学理学部化学科 教授)

----においは、たとえ不快なものであっても基本的にからだに害はありませんが、ちょっと歩いただけでも汗をかく今の時期は、自分の体臭が周囲に不快な思いをさせていないか気になるものです。体臭にまつわる研究で数々の賞を受賞している関根嘉香先生に、まずは体臭の種類を伺いました。 女性も要注意!加齢臭の正体とは

汗自体は無臭。皮膚表面の
化学反応でにおいが発生

体臭と聞いて、まず汗を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。体臭というのは人間の皮膚から出ているガス(気体)のことで、これを皮膚ガスと呼びます。皮膚ガスの放散経路は、皮膚腺由来、血液由来、表面反応由来の3通り。皮膚内部の汗腺や脂腺から分泌された成分が皮膚表面で化学反応を起こし、ガスを発生させるのが皮膚腺由来です。意外かもしれませんが、汗自体は無臭なんですよ。化学反応によって、あの酸っぱいにおいになるのです。

血液由来はその名の通り、血液の中を流れている成分が、皮膚表面に揮発して出てくるガスのこと。アルコールを飲んだりにんにくを食べたときに、呼気だけでなく、からだからもアルコールやにんにく臭がする経験を、みなさんしているのではないでしょうか。アルコールは、体内でアルコールが分解され、アセトアルデヒドに変化した後、血液から皮膚の表面に揮発し、そのまま体臭になることが最近分かってきました。にんにくは、食べた直後は呼気の数値が高いものの、4時間前後で食前の数値に戻ります。ところが、皮膚からは24時間においが出続けているのです。皮膚表面ではなく血中で分解・生成されるため、血液由来のガスはからだを洗ってもにおいが消えないのが特徴です。

女性も30代後半から
加齢臭やミドル脂臭が発生

表面反応由来によって発生するガスには、加齢臭ミドル脂臭と呼ばれるにおいの正体、2-ノネナール、ジアセチルがあります。加齢臭の成分、2-ノネナールは分泌量に差はありますが、誰もが30代後半からグンと増え、その後60代まで年々増え続けます。加齢臭は、男性特有のものだと思われがちですが、女性も男性ほどではないものの、30代〜60代まで増加傾向にあります。分泌量が増える原因は皮脂。年齢を重ねると分泌量は減りますが、2-ノネナールを発生しやすい皮脂の種類に変わるため、におうようになるのです。

ミドル脂臭の正体ジアセチルは、汗の中の成分が反応して発生します。30〜40代男性の分泌量が最も高く、50代になると減ってくるのが特徴です。なぜこの世代になると増えるのか、明確な答えは発表されていませんが、においの原料が乳酸であることはわかっています。筋肉を使うと乳酸が溜まることから、この世代の活動量が多い証なのかもしれませんし、皮膚の表面にいるバクテリアの活動がたまたま活発になるのかもしれません。加齢臭、ミドル脂臭ともに、男性のほうが多く分泌されるのは、女性よりもからだが大きく、基礎代謝量も多いからだと言われていますが、女性も30〜40代になるとジアセチルの分泌量が増えるので、汗をかきやすい人は特に油断は禁物です。

----一般的ににおいを感じやすいのは、加齢臭の成分2-ノネナールなんだとか。「ジアセチルは乳製品にも入っているにおい成分なので、鼻にツンとくるにおいではありません。ただ、いいにおいか、不快なにおいかをジャッジするのは、個々の経験によるため、加齢臭もミドル臭も不快に思わない人もいるのです」と関根先生。感じ方に差はあるとはいえ、周囲に不快感を与えないように、何らかの対策をしておきたいですよね。どんな対策をすればいいのか、次回ご紹介します。
関根嘉香

関根嘉香 東海大学理学部化学科 教授。慶應義塾大学大学院非常勤講師。室内空気汚染(シックハウス症候群)に関する研究では、シックハウス症候群の原因物質、ホルムアルデヒドの常温分解触媒を世界で初めて開発。その後、皮膚ガスの研究をスタートさせ、においによって病気を早期発見できるよう、日々研究に取り組んでいる。環境化学技術賞、室内環境学会賞・論文賞など受賞多数。

取材・文/山崎潤子
イラスト/はまだなぎさ