2023.06.15

【特集】もしかして尿もれ? #05

産婦人科医・高尾美穂先生が教える/尿もれ対策「骨盤底筋トレーニング」

OTONA BODY BOOK 編集部

尿もれ特集の最後は、尿もれ防止の要となる骨盤底筋のトレーニングをご紹介。引き続き、産婦人科医・高尾美穂先生にアドバイスいただきます。

*軽失禁・尿もれは、加齢や出産などにともなって起こる、「尿をしようとしていないタイミングで、膀胱から尿がもれてしまう」状態をさします。

トレーニング前に復習!骨盤底筋のつくり、尿もれの仕組み
本来は骨盤底筋で支えられている膀胱の位置が下がり、尿道をしめつける力も弱くなります。この状態で咳、くしゃみ、笑う、重たいものを持ち上げる、などの動作をすると、おなかに強い圧(腹圧)がかかって、膀胱が圧迫され、尿がもれてしまいます。

立っているときも、
座っているときも
「しめる」意識で

骨盤底筋のトレーニング方法としては、直接筋肉に働きかける方法が一般的とされてきました。やり方は、お尻の穴の前、腟の穴の後ろのほう、このあたりをからだの内側にギューっとへこませます(骨盤底筋のトレーニングその1を参照)。感覚がなかなかつかみにくいと思いますが、立っているときでも、座ったままでも、思いついたときにできるという手軽さがあります。

骨盤底筋トレーニング その1 立って行う場合/足を肩幅に開いて立ち、顔は正面に向ける。肛門(の前のほう)、腟(の後ろのほう)をしめ、ゆっくり5つ数える。1日にトータル3~5セット行う。座って行う場合/足を肩幅に開き、背筋を伸ばし、肩の力を抜いて正面を見る。肛門(の前のほう)と腟(の後ろのほう)をしめ、ゆっくり5つ数える。1日にトータル3~5セット行う。

骨盤底筋の周辺の筋肉を動かして、
間接的にトレーニング

上のような筋肉に直接働きかける動きに加えて、私が提案しているのが、間接的なトレーニングです。骨盤底筋そのものを鍛えるのは難しく、収縮している感覚もつかみにくいものです。そこで、骨盤底筋の周辺の筋肉を収縮させることで、骨盤底筋にも影響を及ぼす、という方法はいかがでしょうか。

骨盤底筋トレーニング その2 ワイドヒップリフトで大殿筋(だいでんきん/おしりから太ももにかけての大きな筋肉)と内転筋群(ないてんきんぐん/太ももの筋肉)を同時に鍛え、下半身を強化。間接的に骨盤底筋に刺激を加えます。ワイドヒップリフトで大殿筋(だいでんきん/おしりから太ももにかけての大きな筋肉)と内転筋群(ないてんきんぐん/太ももの筋肉)を同時に鍛え、下半身を強化。間接的に骨盤底筋に刺激を加えます。

骨盤底筋のトレーニングその1(直接的方法)も、その2(間接的方法)も、骨盤底筋が収縮しているかどうかは、感じにくいものです。だからといって、やめてしまうのではなく、そもそも「感じにくいもの」だということを頭に置いて。トレーニングしながら、なんとなく周囲の筋肉を「使っている」と思えれば、それでOKです

加齢にともなって骨盤底筋に弾力がなくなり薄くなると、尿もれだけでなく子宮脱などにもつながったり、やがてボディラインの崩れを招くことも。尿もれを軽減し、日常生活の質を下げずに楽しく年齢を重ねるためにも、骨盤底筋とその周辺の筋肉を鍛える。ぜひ習慣にしてみてください。

  • 高尾 美穂(たかお みほ)
  • 高尾 美穂(たかお みほ) 産婦人科医・医学博士・スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。産業医として内閣府男女共同参画局、人事局で職員研修を担当。 長年ヨガを愛好し多くのヨガインストラクターを指導。YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答え、楽に生きられる考え方を配信している。 「ワコール フェムケア」サイト 監修 「高尾美穂オフィシャルサイト」
取材・文/おとなボディブック編集部
デザイン/日比野まり子