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  • 2022.02.23

自分の本当の足のサイズ、知っていますか? フィットする靴がわかる「足型計測」体験

自分の足にぴったりフィットする靴、履いていますか? サイズは合っているはずなのに、「かかとがパカパカ浮いてしまう」「履くたびに靴ずれしてしまう」など、悩みは次々出てくる…。そこで今回は、ワコールオリジナル足型自動計測機「REAL FOOT(special customized for WACOAL)」(以下、 REAL FOOT)に記者がトライ。サイズはもちろんのこと、実は靴選びの重要な要素である“かかとの丸み”まで、足を立体的に測定する様子をレポートします。

※「REAL FOOT」を開発・展開しているのは株式会社ドリームです。

自分の本当の足のサイズ、知っていますか? フィットする靴がわかる「足型計測」体験

片足15秒のスピードスキャンで、サイズからかかとの丸みまでがわかる

計測のために訪れたのは、新宿髙島屋の婦人靴売り場。実はワコールは、30年以上前から「女性の足」についての研究を重ねていて、2004年には「もっと歩きたくなる足へ」をコンセプトにした「サクセスウォーク」を発売。ビジネス用の黒パンプスを軸に、デザインパンプス、ローファー、ブーツに至るまで、歩きやすさに特化した靴をバリエーション豊かに展開しています。

歩きやすさはもちろん、洗練されたデザインを追求しているのが「サクセスウォーク」。
歩きやすさはもちろん、洗練されたデザインを追求しているのが「サクセスウォーク」。

「サクセスウォーク」のラインアップがそろう靴売場に設置されているのが、ワコールが誇る足型自動計測機「REAL FOOT」。ここで計測できるのは、まず「足長(足のかかとから、一番長い足指の先端までの長さ)」。そして「足幅(足の親指と小指、それぞれの付け根にある骨の出っ張り部分を直線でつないだ長さ)」、そして「足囲(足の親指と小指、それぞれの付け根にある骨の出っ張り部分を取り巻いた一周の長さ)」。加えて、「かかと幅」と、靴のフィッテイングに重要だと言われる「かかとの丸み」まで判定できるのが最大の特徴です。

夏はむくんだり、冬は縮こまったり。時期によって足のサイズは変わるので、季節ごとに測定するのもおすすめ。
夏はむくんだり、冬は縮こまったり。時期によって足のサイズは変わるので、季節ごとに測定するのもおすすめ。

さっそく計測機の前に立ち、計測スタート! パネル画面の指示どおりに性別や生年月日などを入力したら、靴を脱いで裸足になり、機械の中に足を入れ、「測定開始」ボタンを押すだけ。足に違和感を感じることはなく、あっという間に「計測終了」のアナウンス。右足と左足を入れ替え、さらにアナウンスがあったら、すべて終了。測定自体は、片足なんと15秒ほど! 

思っていたサイズと違う…自分の思い込みが外れていくのが新鮮!

画面右上にある2次元コードを読み込めば、データをそのまま持ち帰ることが可能。
画面右上にある2次元コードを読み込めば、データをそのまま持ち帰ることが可能。

さて、画面にはさっそく自分の足の3D画像が! 普段見慣れない立体的でリアルな形にドギマギしつつ、今回はFHA認定バチェラー(上級)シューフィッターであるワコールの大塚幸子さんと一緒に、自分の足型をチェックしていきます。まず驚いたのが、自分の「足長」が思っていたより小さかったこと。いつも靴は23.5cmを履いていたのが、実際の足のサイズは22.7cmだということが発覚!

さらには、なんと「かかとの丸み」があまりない「ラインタイプ」ということも判明。これまでかかとのかたちを気にしたことなどなく、いたってノーマルだと思い込んでいたので、「かかとの丸みがないタイプだったのか」と新たな発見の連続です。

かかとの丸み
「かかとの丸み」は、かかとのもっとも突出している点から、もっともくびれている点の距離から算出。記者は「かかとの丸み」があまりない「ラインタイプ」。
これまでのサイズを履いてつま先立ちをすると、かかとが抜けてしまう。
これまでのサイズを履いてつま先立ちをすると、かかとが抜けてしまう。

「思っていたサイズと違ったという人は意外に多いんですよ。そんな方にも納得していただくために、まず最初は今まで選んでいたサイズを試し履きしてもらうこともあります」と大塚さん。さっそくサクセスウォークを履いてみると、「まぁ、こんな感じかな」といういつもの感触。

「では、つま先立ちをしてみてください」
指示のまま、恐る恐るつま先立ちをしてみると…かかとがすっぽりと抜けてしまう!

「つま先立ちをしてみて、かかとが抜けてしまう場合、実際より大きいサイズを選んでいる可能性があります。さらにラインタイプの人は、かかとに丸みがあまりないため靴に引っ掛かりにくく、脱げてしまいやすい傾向にあるんです」とのこと。なるほど指摘されたとおり、これまでずっとかかとがパカパカするのが悩みでした。

「では、測定に沿ってサイズを小さくしつつ、さらにかかとの丸みがない方のための『かかとが小さいタイプ』があるので、こちらを試してみてください」。

左が「かかと小さめタイプ」、右が「定番タイプ」。「かかと小さめタイプ」を履いてつま先立ちをすると、かかとが抜けることはなくなった。
左が「かかと小さめタイプ」、右が「定番タイプ」。「かかと小さめタイプ」を履いてつま先立ちをすると、かかとが抜けることはなくなった。

履いてみた率直な感想は、少しきついかなという印象。ただ同様につま先立ちをしてみると、見事かかとは抜けずに足にフィット! そしてフロアを歩いてみると、足とパンプスが一体化しているようで歩きやすい! この“靴が足に吸い付いてくるような感覚”は初体験です。まるでスニーカーを履いているようで身も心も軽い軽い! 今までのパンプスとは違う歩きごこちに、目からウロコがポロポロと落ちていきます。

正しいサイズを知って、「本当にここちよい靴選び」へ

「サクセスウォーク」は、足幅の狭いBから広いEEEまで、なんと6種類がそろう。
「サクセスウォーク」は、足幅の狭いBから広いEEEまで、なんと6種類がそろう。

「これまでも『靴が脱げやすい』という悩みは寄せられていましたが、足幅の細いタイプに変えるという対応策しかなく、それが足を窮屈にする原因にもなってしまい、悪循環をたどっていたんです。正しい足長と足幅を把握することは大前提の上で、さらに大切なのがかかとの形。自分はどんなカーブを描いているのか、ぜひ一度測定してみることをおすすめします」(大塚さん)

何よりうれしいのが、このデータは2次元コードで読み取りが可能。3D画像を含めた計測数値をスマートフォンで持ち帰ることができます。ジャストサイズを知り、かつ携帯しておけば、「買ったけど、合わなくて履かなくなった靴」を増やすことがなくなるし、靴選びがラクになり楽しくなるはず。さらにその靴のおかげで足が疲れにくくなるのだから、その効果は絶大です。

女性ひとりひとりの悩みに対応すべく、様々なシリーズを展開している。
女性ひとりひとりの悩みに対応すべく、様々なシリーズを展開している。

「『サイズバリエーションが豊富でぴったりサイズがみつかりやすいタイプ(WFN050)』はもちろん、今回ご紹介した『かかとが小さくて脱げやすい方のための新設計タイプ(WFN550)』など、さまざまなタイプを取りそろえています。

自分の悩みに寄り添い、希望を叶える一足を見つけに、ぜひ立ち寄ってみてください」(大塚さん)

各店舗では、「REAL FOOT」のほか、パンプスコンシェルジュによる「足型計測相談会」や、さまざまなサイズを自由に履き試せる「TRY FIT」などを開催中。立体的に足のサイズを計測することで、自分の足と向き合ってみてはいかがでしょうか。

<足測定&靴選びコラム>
研究者にインタビュー!「靴選びに“かかとの丸み”が重要な理由」

「REAL FOOT」体験で実感したのは「正確な足のサイズを把握すること」「それを靴選びに生かすこと」。そこで、サクセスウォークの共同開発者である、新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科の阿部薫教授に、日本人女性の足の変化、かかとの測定が必要な理由、そして靴選びの鉄則について、うかがいました。

――昔と比べて、日本人の足はどのように変化しているのでしょうか。その原因として考えられることを教えてください。

阿部薫教授(以下、阿部) 現在の靴サイズは、1983年にJIS(日本工業規格)で制定されたもので、約40年も前の日本人の足型です。当時の足幅の標準はEでしたが、現在ではより細いDがEと同率になっています。もっとも身体的に健康とされる20歳前後の女性の足型寸法について、1987年と2020年のデータを比較したところ、身長や足長には大きな変化はないものの、足幅の最頻値がEからDへと細くなっているのも興味深い点です。人は歩くときに足幅を広げ、踏ん張ることで安定し、逆に狭いと不安定になります。現代は交通機関も発達し、またインターネットの普及によって、人の物理的な移動も少なくなってきました。足を積極的に使用して歩く必要がなくなり、細い足幅でも生活できるようになったと考えられています。

――現代女性にかかとのカーブが小さい「ラインタイプ」が増えているようですが、その理由と生活への影響を教えてください。

阿部 ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)は、アキレス腱となってかかとの骨に付着しています。成長期に筋肉をよく使った人は、アキレス腱がかかとの骨を引っ張るため、そのカーブが丸く出るようになります。しかしあまり使わなかった人は、カーブがつくられずに大人になってしまうのです。

かかとの骨が小さいと、後足部の接地面積が狭く、歩行や走行時の初期接地が不安定となります。またかかとカーブがないと、靴のヒールカーブの形状に適合しないため、蹴り出し時にかかと脱げの原因となり、最悪の場合、靴が脱げて転倒する危険性もあると言われています。

――自分の足にマッチした靴を履くことの重要性と、足に合った靴の見分け方を教えてください。

阿部 JISの靴サイズには「足長」と「足幅(足囲)」があります。足長はかかとの後端から最も長い足趾(=足指)の先端までの長さのことで、足幅は足趾の付け根の幅のこと、足囲は足趾の付け根の周径を指します。つまり、現在市販されている靴のサイズは、長さと足趾まわりのサイズしか選択できず、足アーチ(土踏まず)のある中足部や、かかとまわりの後足部については基準すらないのが現状です。足アーチの形状を合わせるためにはインソールが適していますが、かかとカーブなどの形状を合わせるグッズや方法はありません。しかしかかとが小さくて靴が合わない人は増加する一方です。現代人のかかと形状に適合した靴の開発が望まれます。

自分の足に合った靴を選ぶには、第一に自分の足型寸法を正確に知ることです。百貨店や靴店で測ってもらい、購入の際は足長だけではなく、足幅を合わせるようにしましょう。さらに実際に試し歩きをして、かかとが安定して歩けるどうかをチェックすることが必要と言えるでしょう。

  • 阿部 薫
  • 阿部 薫 新潟医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 教授。義肢装具士。靴医学、運動機能解剖学、歩行分析学、義肢装具学を専門とする。日本で初めて靴とヒトと歩行の関係を科学的に研究する「靴人間科学」講座を担当。靴の研究の第一人者として、日本だけでなく、世界各国の企業のアドバイザーや研究顧問を務める。
取材・文/本庄真穂
撮影/丸山涼子
デザイン/WATARIGRAPHIC