ぐっすり眠るための必須アイテム

特集/眠りの真実

先生/古賀良彦(杏林大学名誉教授)

----意識して睡眠スイッチを入れなければ、睡眠の質は上がらないことがわかりましたが、どのような睡眠環境をつくれば質のいい睡眠を得られるのでしょうか。引き続き古賀先生に伺いました。

真っ暗&無音の部屋では脳は休めない

具体的な方法をご紹介する前に、まずは1日の中の睡眠の位置付け、夜寝て朝起きるということをきちんと守りましょう。夜寝るためには、日中活動すること。夜と昼の生活は表裏一体ですから。あとはリズムなので、1週間単位で不規則な睡眠にならないようにし、1日3食同じ時間に食べる。基本的すぎることですが、基本ができていないのに、さまざまな工夫をしても意味がないですよね。

続いて寝室の環境を見直してみましょう。真っ暗というのは一見よく眠れそうですが、不安になるため脳は休んでくれないのです。真っ暗にしないと眠れないという人は、自分で条件付けしているだけ。直接目に光が入らないフットライトなどで、ほの暗い状態にしてみてください。音に関しても、ちょっと刺激があったほうが脳は落ち着くので、入眠前に歌詞のないインストルメンタルを低音量でかけてみましょう。嗅覚は、五感の中で睡眠欲などの人間の本能に関わる大脳辺縁系に刺激を与えることから、アロマテラピーなどで眠りに誘うのも効果的です。シーツなどの触感は好みがあるので、ここちいいと思うものを選んでください。室温は季節によって変わってきますが、だいたい24〜26度、湿度50%が理想といわれています。

ストレスをもち越さないために実践したい「3R」

帰宅後、明日のためにすぐ寝るのではなく、寝る前に入浴以外のワンクッションを入れてストレスを発散させることも大事。疲れているから早く寝たい、という気持ちもわかりますが、仕事の延長線上に睡眠があるとストレスをもち越してしまうため、睡眠の質は低下してしまうのです。レスト(最上のレストは睡眠)、リラクゼーション、レクリエーション、3つの「R」をおすすめしているのですが、リラクゼーションはヨガでもアロマテラピーでもOK。ただ、からだはリラックスしても、ストレスが解消されていないこともあるので、「レクリエーション(re-creation)=自分をつくり直す」ようなことも積極的に取り入れましょう。アロマオイルをブレンドしてみるとか、準備が簡単で短時間で終了し、疲れないものなら何でもいいのです。ベッドに入る前の入眠儀式にして楽しみながらストレスを発散してみてください。

----寝付けないというプレッシャーによって眠れなくなる人も10人にひとりくらいの割合でいるそう。自分流の入眠儀式をもつことは、重要なことだと再確認しました。次回は、日常生活に支障をきたす「睡眠障害」の意外な原因に迫ります。
古賀良彦

古賀良彦 杏林大学名誉教授。NPO法人日本ブレインヘルス協会理事長。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科学教室を経て杏林大学医学部精神神経科学教室に入室。41年にわたって「脳機能画像の健康科学への応用」を研究。『睡眠と脳の科学』(祥伝社)など著書多数。

取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ