大事なのは、こる前のセルフケア

特集/なんとかしたい!肩こり

先生/谷 諭(東京慈恵会医科大学附属病院 脳神経外科 教授)

----私たち人間にはセルフリミテッドといって、半年くらいで自然治癒する力が備わっているそう。谷先生いわく、肩こりがあっても、自分が気持ちいいと感じる方法でケアすればいいということですが...。

筋肉が固まる前に動かすことが何より重要

温める、ストレッチで筋肉を柔らかくする、マッサージをしてもらう、医者にかかって血の巡りをよくする薬を処方してもらう...。肩こりは緊張によって筋肉が張っている状態ですから、自分にとってコストパフォーマンスがいいと思う方法でケアするのがベストだと思います。ただし、前回もお話しましたが、いろいろ試しても痛みが取れず、むしろ悪化しているようだったら頚椎(けいつい)や神経に問題があるかもしれないので、専門医に診察してもらいましょう。

長時間同じ姿勢でいると筋肉は固まってしまい、動かそうとすると痛みが出てきます。ですから、30〜60分に1回、意識してからだを動かしてください。おすすめは肩甲骨のストレッチです。肩を上下に動かす、ひじを後ろに引いて左右の肩甲骨を寄せる、寄せた状態から両腕を前に伸ばし、左右の肩甲骨を離す。3方向に動かして、肩まわりの血行を改善しましょう。回数ではなく、ゆっくり、肩甲骨の動きを意識して行うのがポイントです。また、頚椎は前にカーブしているため、前かがみでデスクワークをするのも肩こりの原因になります。パソコンのディスプレイの位置を上げるなどの工夫を。

目薬はパソコン作業を行う前に

ドライアイによる眼精疲労も肩こりの原因です。まぶたのエッジから分泌される脂分が目の乾きを防いでいるのですが、涙は出るけれど脂の出が悪い人が増えているんですね。パソコンで作業する前に、ヒアルロン酸入りのドライアイ用目薬をさして目の乾燥を防ぐだけでも、眼精疲労は軽減するはずです。疲れたから目薬をさすのではなく、疲れる前にさすのがポイントです。

枕選びについてもよく質問されますが、私たちは寝ている間に20回くらい寝がえりをうっていると言われています。硬くて高さのある枕は寝がえりがうちにくいですよね。理想は寝たときに1〜2㎝ほど沈む硬さですが、寝がえりを打ったり、仰向けになったりして、首まわりの筋肉がリラックスするものを探してみてください。

----まずは、肩まわりの筋肉を緊張させない工夫をする。予防をおざなりにして肩こり解消法ばかりを模索しがちなので、生活習慣を見直してみたいと思います。次回は、肩こり特集の後半。気持ちよくて即効性のある肩こり解消法をお届けします。
谷 諭

谷 諭 東京慈恵会医科大学附属病院 脳神経外科 教授。脊椎・脊髄治療の専門医。大学病院として日本一の手術数を誇る同院にて、手術部診療部長を務める。脳神経外科的見地から肩こりの診療も行っている。書著に『テキメン! 腰痛持ちの医者が考えた治療法 85%の肩こり・腰痛は自分で治せます』(マガジンハウス)がある。

取材・文/山崎潤子(ライター)
イラスト/はまだなぎさ