エイジングの事実、徹底検証!

特集/ヒップの秘密

先生/上田由紀子
(皮膚科専門医/ニュー上田クリニック 院長)
取材・文/大庭典子(ライター)

おしりの脂肪は2重構造!? 肉厚なワケだ!

なかなか痩せないヒップや太ももにはこんな理由が!

お風呂に入る前や着替えるときなど、鏡の前で全身チェックをすることはありますが、自分のヒップの形やツヤ、ハリについては、正直"よくわからない"という人が多いのではないでしょうか? 女性らしさを象徴するパーツでもあるヒップについて、皮膚の特徴やエイジングのサインなど、上田クリニックの院長、上田由紀子先生に教えていただきます。

「ヒップは、皮膚の下の脂肪のつき方に大きな特徴が見られます。まず挙げられるのは"皮下脂肪が厚い"ということ。ヒップの筋肉は、特定の動作をしないかぎり、表面からはどれくらいついているのかわかりません。試しに筋肉隆々な人を思い浮かべてみてください(笑)。二の腕などは、表面からでも筋肉の形が見えますが、ヒップの筋肉の形は立っているだけではわかりません。これは、ヒップの構造に関係があるのです。

ヒップや太ももなど、皮下脂肪がたっぷりとある部分は、脂肪が"二層構造"になっています。部分によっては、さらに増えて三層、四層となっている箇所も。つまり複数構造になっているのです。

どういうことかと言うと、皮膚の下の脂肪は、皮下組織内にたまっている"皮下脂肪"と、膜をはさんでその下に筋肉とくっついている"脂肪"があります。わかりやすく"普通の脂肪"と呼ぶことにしましょう。

このように、二層構造になっていることがヒップや太ももの皮膚の大きな特徴。では、エクササイズやダイエットなどで減るのは、"皮下脂肪""普通の脂肪"のどちらだと思いますか?

答えは"普通の脂肪"。筋肉についている脂肪のほうです。逆に言うと、"皮下脂肪"は痩せづらいのです。ヒップや太ももが痩せづらいのもそのためです。

逆に考えると、ヒップや太ももが痩せすぎているというのは、我々医者の立場からすると、危険信号でもあります。拒食症の疑いや急激に老化が進んでいるなど、さまざまなことが考えられます。

セルライトはこうしてできる!

さて。ヒップから太ももにかけてのセルライトにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。実は、セルライトができやすいのもこの構造が関係しています。セルライトはどのようにできるのか、その仕組みについてお話しましょう。

■第1ステージ
皮下脂肪が増えると、皮下の毛細血管がダメージを受けて、循環が悪くなります。そのため皮下の水分が多くなりむくむ。ただし、この時点で見た目には変化がありません。

■第2ステージ
さらに皮下脂肪が増えると...。肥大した脂肪細胞によって血管が圧迫され、さらに循環が悪化。皮膚へ必要な栄養分がゆき渡らなくなります。表面的には、凹凸は感じられませんが、皮膚を指でつまんでこするとボコボコしているのが感じられます。

■第3ステージ
さらに進むと、循環が悪くなり栄養がゆき渡らないために皮膚は薄くなり、水分と老廃物が排出できずにたまってしまいます。脂肪は固くなった繊維で覆われてかたまりになってきます(セルライトのかたまり)。見た目にも凹凸がはっきりとわかるように。

■第4ステージ
セルライト化した脂肪は、さらに硬い繊維組織で覆われてかたまりになります。皮下組織自体もダメージを受けているので、長時間立ったり、脚を下げたりしていると、痛みを感じるように。さらにはっきりと凹凸が見えます。

これがあのセルライトができる過程です。でこぼことしたセルライト、その始まりは、毛細血管がダメージを受けてしまうこと。もしも第1、2段階で気づいて、マッサージや運動を行うなど、積極的に代謝を上げられれば、きれいに治る人もいるのではないでしょうか。ただ、この段階では表面に凹凸が出ていないので、意識してチェックする必要がありますね。

残念ながら第3、4段階で気づいて、そこからきれいに治すのは、なかなか困難ですが、それでも、デスクワークで1日中座りっぱなしの人は、マメに立ち上がって歩くなど、循環に気をつけて生活することが大事。循環をよくするオイルやマッサージ器具なども効果があるかもしれません。

また、ヒップは独立して存在しているわけではありません。これはからだのどこの部位にも当てはまることですが、ヒップも然り。さまざまな部位の筋肉同士がつながり、互いに影響を与え合っているのです。ご存知の通り、ヒップは脚とつながっていますから、マッサージ等で骨盤の中のとどこおった血液を脚全体に流すようにすれば、セルライトの予防にもなるのではないでしょうか」

美しいヒップに近づくためには、血液の循環をよくすることが肝。デスクワーク時など、何時間も同じ体勢でいることが、もしかしたらあの"にっくき"セルライトの生成を加速させていたかもしれないと思うと...恐ろしいですね。気づいたときにマメに歩くこと、今日から実践しましょう。
上田由紀子

上田由紀子 ニュー上田クリニック院長、医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本体育協会公認スポーツドクター。
東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部皮膚科教室にて診療、研究、教育に携わった後、千葉県浦安市にて「ニュー上田クリニック」を開業。01年、国立スポーツ科学センターのオープンに伴い、医学研究部皮膚科を兼任。著書に『スポーツと皮膚』(文光堂)、『ようこそ、これからのSkin Careへ』。

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