骨美人はウォーキングでつくられる!

特集/歩くチカラを見直そう

先生/森谷敏夫(京都大学大学院 人間・環境研究科教授)
取材・文/大庭典子(ライター)

Image ウォーキングは、ダイエットにも効果的なうえに、心臓までも鍛えられるなんて、うれしすぎるご褒美がたくさん!(Vol.2を参考)と毎日の歩行も俄然楽しくなっていたところ、「歩行が健康美にいい理由、まだまだありますよ」と森谷先生。今回は骨の強化とウォーキングのいい関係について引き続き、京都大学大学院・森谷敏夫先生にお伺いします。

骨を溶かして吸う!? 恐怖の破骨細胞の正体

「骨は、基本的に3か月から6か月でつくり直されます。つくり直すためにまず何をするかというと、骨を壊します。骨を壊す細胞を破骨細胞(はこつさいぼう)といいますが、この細胞は、硫酸のようなものを骨にふりかけて、溶かして吸う。骨を食べているんです。破骨細胞、見てみますか?」
骨を食べる...?! おそるおそる画面で破骨細胞を見てみると、「きゃゃぁー!!」取材班一同悲鳴。4本の触覚をもった楕円形の生き物(細胞)がゆっくりと骨を...。まるでオカルト映画を見ているようですが、これは現実。私たちの体のなかで実際に行われていることなのです。 Image

3倍のエネルギーを使うウォーキングは、スカスカ骨予防にも効果的!

「骨が弱くスカスカになる原因は、カルシウム不足ともうひとつ、この破骨細胞の働きが盛んになって必要以上の骨を溶かしてしまうこと。そこでウォーキングの出番です。歩行は、安静時の3倍のエネルギーを使うので、体中をめぐる血液量も増えるのはご存じの通り。もちろん骨にまわる血液量も増加します。破骨細胞が骨を溶かそうとしても、弱アルカリ性の血液がびゅんびゅんまわってきたら、やりづらいったらないわけです(笑)。
また、ウォーキングなどの運動で骨へ刺激を与えることが新しい骨をつくる骨芽細胞の働きを活発にしてくれるのです。

というわけで、ウォーキングは骨を壊す破骨細胞の働きを抑え、骨をつくる骨芽細胞(こつがさいぼう)の働きを活性化する効果がある。つまり、骨の強化に効果的だといえるのです。しかも、血液が体中を多くまわるということは、骨内の血管にも血液がまわるということ。血液のなかに含まれるカルシウムやミネラル、ビタミンなどの骨をつくる材料も豊富に骨に供給されるのです。ウォーキングなどの運動が骨にとっていかに大事かということがわかりますね。カルシウム豊富な牛乳を飲んで、寝てたって果報は来ませんよ。十分なカルシウムを取ったら、靴を履いてウォーキングへ!」

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森谷敏夫
(京都大学大学院 人間・環境研究科教授)
南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、PhD)。テキサス農工大学大学院助教授、カロリンスカ医学研究所客員研究員(スウェーデン政府給費留学)などを経て、2000年より現職。専門は、応用生理学とスポーツ医学。60歳を超える今も、体脂肪率は驚異の9.8%。明朗快活な人柄も人気で、面白く、ためになる講義は大盛況。著書は『メタボにならない脳のつくり方』(扶桑社新書)など多数。

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