今月のコトバ「アンチエイジング」

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

今月のコトバ「アンチエイジング」

年をとってはいけない時代?

高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が21%を超えた社会を「超高齢社会」というそうだ。日本の高齢化は、世界に例をみない速度で進行しており、昨年、過去最高の26.7%を記録した。4人に1人以上が65歳以上となった日本は、もはや世界一の超高齢社会なのだ。

「世界一の超高齢社会」という言葉のインパクトはすごいなと思う。反動としてアンチエイジングが流行るのは当然だし、その成果は既に出ていると思う。見た目が若く美しい人の割合は、むしろ増えているのではないだろうか。

アンチエイジングは「抗老化」「抗加齢」「老化防止」と訳されるが、大辞泉には「加齢に伴う症状の予防と治癒」とあり、具体的なケアの数々を想像させる。カタカナ語辞典では「サプリメントやスキンケア、ホルモン補充、健康療法などによって老化の進行を遅らせようとすること」とさらに具体的だ。

周囲を見まわせば、10代から80代以上までが「アンチエイジング的な何か」をやっている。これはもう、ブームなんてもんじゃない。「生まれた瞬間から老化は始まっている」という言い方もよく聞くが、あらゆる健康法・美容法は、アンチエイジングを目指しているといっていい。脳、筋肉、骨、内臓、肌、髪、各パーツなど、ケアすべき部位や手段は果てしなく、このジャンルを追求したら一生飽きないだろうし、お金をいくらかけても足りないだろう。

どこにお金をかけるべきか

ある20代女子は、自分はもう若くないと言い、美容整形にはまっている。洋服や化粧品はプチプラでも買い渋り、外食といえばファストフード。なのに小顔治療や脂肪吸引には何十万という金額を惜しげもなくポンと出す。まあ、こういうのは人それぞれの価値観だから他人がとやかく言うことではないけれど、個人的には、化粧品と下着にもう少しお金をかければ、フェイスやボディの改造料金を抑えることができるのに、と思ったりもする。

永遠のおしゃれアイコン野宮真貴さんは、年を重ねながら美人に見せるテクニック本『赤い口紅があればいい』(幻冬舎)でこう言っている。「ちょっとしたメイクのワザで印象が変わるのなら、整形にお金とリスクをかけるよりも、ずっと安上がりで簡単で安心です」「年に数回しか登場しない一張羅に大枚をはたくのはやめて、日常使いの使用頻度の高いものこそ上質なものにします」。

野宮さんは、この本で、下着についても赤裸々に書いている。ランジェリー・コンシェルジュに会って下着の楽しみ方を知ったこと。バストケアを怠ったことで下垂への道をひた走ってしまったこと。ポジティブな野宮さんは、身体の線が出るドレスを着る時には、ボディメイク用のランジェリーの力を借り、日常的には、少し崩れた身体を生かしたセクシーさを極める。しかし、まだジタバタできる年代の読者に向けては、ブラジャーやバスト専用クリームを活用したバストケアをすすめるのである。

快楽系アンチエイジングのすすめ

アンチエイジングについては、できるだけラクな方法を探したいと思う。最近注目しているのは、不老長寿ホルモンといわれる脳内物質のメラトニンだ。睡眠促進物質であり細胞修復物質でもあるメラトニンがしっかり分泌されれば、ぐっすり眠れ、アンチエイジングの役にも立つらしい。

ふだんは眠りが浅い私だが、今年初めに「子供かよ」と自分で突っ込みたくなるほど長く、深く眠れた日があった。そういえば、ふだんあまり飲まない日本酒を寝酒にしたことを思い出す。アルコールは飲み過ぎるとすぐに目覚めてしまうという認識しかなかったが、調べてみると、日本酒に含まれる清酒酵母には、睡眠の質を高める効果が確認されたというではないか。

よし、今年は日本酒の研究をしよう(単純です)。苦行系のアンチエイジングは続かないが、こういう趣味快楽系なら続きそう。皆さんもぜひ、自分に合ったアンチエイジング法で、人生を長く美しく楽しもうではありませんか。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ランジェリー、映画愛好家。最近いいなと思ったのは、映画「暗くなるまでこの恋を」で妻(カトリーヌ・ドヌーブ)の裏切りに気づいた夫(ジャン=ポール・ベルモンド)が、彼女の下着を次々と暖炉で燃やすシーン。