今月のコトバ「サイズ感」

今月のコトバ「サイズ感」

サイズの日を楽しもう

3月12日は、ワコールが「サ(3)イズ(12)」の語呂合わせから制定した、サイズの日。3月は新生活に向けて服や靴、インナーなどさまざまなものを買い替える時期なので、この日をきっかけにサイズの大切さをより多くの人に知ってもらい、自分の体形にフィットするものを選んでもらいたいという想いが込められているそうだ。

サイズについてまとまった情報はないかなと調べてみたら、ワコールウェブストアの中に「ワコールのサイズガイド」というサイトがあるのを見つけた。さっそく「おすすめブラサイズ オンライン診断」をやってみたところ「おすすめブラサイズ」と「ワコールからのアドバイス」、さらには「おすすめブラサイズの商品」まで見ることができて、いたく感激したのだった。今つけているブラのサイズと状態についての質問に答えるだけでOKという手軽さなので、興味のある方はぜひ!

サイズ感って何?

ところで最近よく耳にするのが「サイズ感」というコトバだ。英訳すれば「feeling of size」。「感」を接尾語としてつけるだけで、具体的な数字としてのサイズではなく、感覚的にジャッジされるサイズという意味合いが生まれる。どちらかといえば「サイズ」はモノの側にあり、「サイズ感」はヒトの側にあるといえるだろう。「フィット」と「フィット感」の関係もよく似ていて、感をつけると「絶妙なサイズ感」「快適なフィット感」など、ふわっとしたポジティブなニュアンスを出しやすくなる。

近いカテゴリーのコトバに「ボリューム感」というのもあるが、こちらは演出的な要素が強い。たとえば胸や髪や唇といったカラダのパーツは、下着や化粧品などの力を借りることにより、ある程度のボリューム感を出したり、逆に抑えたりもできることが知られている。料理の得意な人であれば、少ない食材でボリューム感のあるメニューをつくることもできるだろう。

ビジネスでは「スピード感」も演出できる。政治家がよく口にするコトバであるらしいが、たとえ実際にはスピードが遅くても「やってる感」「がんばってる感」を出せば、まわりの人間にはスピード感があるように錯覚してもらえるかもしれないのだ。また「予算感」というのもビジネスでよく使われる。「予算は?」とダイレクトに聞かず、「ご予算感は?」とふんわりお伺いをたてるテクニックである。

ファッションで大事なことは

個人的に好きなコトバは「スケジュール感」だ。「このスケジュールで」と言われるとやや緊張するが、「こんなスケジュール感で」と言われると、なんとなく融通がききそうでホッコリする。こんなふうに「感」をつけるだけで意味がやわらぎ、使いやすい甘口のコトバになるのは悪くないけれど、便利すぎて中毒性があるのが難点だろうか。要するに、どんなコトバにも「感をつけたくなってしまいたくなる感」がある。

たとえば先日「プレミアム感」あふれるチョコレートをいただいた。ひとつひとつの「存在感」が際立っていて「高級感」がありながら「手作り感」がやさしく、口に入れると「素材感」を生かしたつくりたての「鮮度感」があり、ガナッシュの「しっとり感」と柑橘類の「さっぱり感」が「一体感」をかもしだし、「バランス感」がすばらしかった。めくるめく美味しさへの「没入感」に「高揚感」を得た私は、かつてない「幸福感」を味わったわけだが、この文章には少々「やりすぎ感」が…。

さて、そろそろファッションの話に戻ろう。今年のトレンドのひとつは「ストレンジ感」であると聞いた。感がついているから「ストレンジ(=奇妙)」そのものではなく、風変わりな要素をアクセント的に取り入れるという意味だろう。ファッションの世界には新しいコトバが似合うが、何はともあれ大事なのはサイズ感だ。サイズの日を迎えるにあたり、まずは自分のサイズを見直し、快適なフィット感が得られる美しい下着を身につけ、春らしいおしゃれ感のあるファッションを楽しみたいと思う。もちろん上質感は必ずほしいし、お手頃感、お買い得感、お値打ち感があれば、なおさら嬉しいです。

  • 相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ワイン、イタリア、ランジェリー、映画館愛好家。
    最近気になっているのは、真っ白でモフモフの野鳥「シマエナガ」の可愛すぎるサイズ感。手のひらに乗せてみたい!
文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代
デザイン/WATARIGRAPHIC