飽和脂肪酸を取りすぎない「おかず」の工夫

文/おくだじゅんこ(管理栄養士)
イラスト/いしわたりきわこ

飽和脂肪酸を取りすぎない「おかず」の工夫 前回、コレステロールを上げる原因として、「飽和脂肪酸」が絡んでいるようだというところで話を終えました。今回はそのコレステロールを上げる原因となる「飽和脂肪酸」について説明していきましょう。

脂肪は大きく分けると「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」のふたつに分けられます。
簡単に言うと、飽和脂肪酸というのは、主に肉の脂身やバターに多く、不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、一価は植物油脂などに、多価は魚油やえごま油に多く含まれています。

【脂肪酸の分類】
●飽和脂肪酸
...... 長鎖脂肪酸(肉の脂)
...... 中鎖脂肪酸(ココナッツオイル)
...... 短鎖脂肪酸(バター)

●不飽和脂肪酸
...... 一価不飽和脂肪酸(オレイン酸:オリーブ油、紅花油、菜種油)
...... 多価不飽和脂肪酸 →n-6系:リノール酸(植物油)
            →n-3系:EPA・DHA(魚油)
               :α‐リノレン酸(えごま油)

日本人45~75歳を対象とした研究、JPHC Studyでは「飽和脂肪酸量」と心筋梗塞にかかる確率は比例していて、米国での多くの介入研究でも「飽和脂肪酸摂取量」を減少させると「冠動脈疾患」、「動脈硬化」、「LDL(悪玉)コレステロール値」が減少することが示されています。

簡単に言うと、飽和脂肪酸の多い肉の脂やバターを控えて、魚を食べましょう! という話になるのですが、もう少し細かく見ていくことにしましょう。

さて、日本での脂質の目標量ですが、まず1日の脂質の割合は全体の食事の20~30%に。
そして飽和脂肪酸の割合は7%以下が基準とされています。

どんな食事をすると脂質の割合が30%を超えてしまうのか、どんな食品を使うと飽和脂肪酸は7%以下になるのか、考えてみたいと思います。

揚げ物定食があったとします。ごはんと味噌汁とほうれん草のおひたし、それにメインのフライもの。
その脂質割合と飽和脂肪酸比率を計算してみました。
目標値はあくまで1日分の食事の中での話なので、1食だけで見ることはありませんが、あくまで目安として、イメージをつかんでみてください。

●ごはん、味噌汁、【ロースとんかつ】、ほうれん草のおひたし
...... 脂質45.1% 飽和脂肪酸12.9%
●ごはん、味噌汁、【アジフライ】、ほうれん草のおひたし
...... 脂質31.0% 飽和脂肪酸4.8%
●ごはん、味噌汁、【ヒレかつ】、ほうれん草のお浸し
...... 脂質27.9% 飽和脂肪酸4.3%

いかがですか?
同じフライものにしても、「ロースとんかつ」と「アジフライ」とでは、飽和脂肪酸の量はまったく異なります。
また同じ「とんかつ」でも、「ロース」にした場合と「ヒレ」にした場合では、全く違う数字になります。
もちろん揚げ物ばかり食べていては脂質の割合が上がってしまうのでよくないけれど、使う食品によって飽和脂肪酸の比率は大きく異なるということです。また、部位によっても飽和脂肪酸の量は変わります。

●部位によって違う飽和脂肪酸の量
豚肉100gの場合
...... バラ:12.95g > ロース:7.84g > もも:3.59g > ヒレ:0.56g

肉の脂身が多いほど、飽和脂肪酸は多くなります。
また、肉以外でも多い食品をあげておきましょう。

●飽和脂肪酸の多い主な食品(100gあたり)
・カップラーメン 8.72g
・あんこうの肝  8.23g
・鶏皮      16.30g
・生クリーム   27.62g
・無塩バター   52.43g

脂身の多い肉はあまり食べないから大丈夫、と思っていても、生クリームやバターをたっぷり使った菓子パンやケーキ類、チョコレート、そしてカップラーメンなどの即席めんに多く含まれます。

こうしてみると、やはりごはんに魚に、野菜の煮物。和食がからだにいいと言われる理由がわかる気がしますね。

文/おくだじゅんこ(管理栄養士) 広島生まれ。国立病院勤務の後、8年間にわたり株式会社ワコールに勤務。陸上選手から社員まで幅広く健康管理に携わる。2012年に再び地元広島へ戻り診療所の栄養士に。
自身が根っから食いしん坊☆自分自身の栄養管理に日々奮闘中!

イラスト/いしわたりきわこ 東京生まれ。テキスタイルデザイナーを経て、コピーライター、ライター、イラストレーターに。渾身の著書「駅弁の旅」、「ぜいたくはひとりごはん」共著に「東京ナチュラルスイーツ」、「おいしいごはんの店~自然派レストラン全国ガイド」などがある。