女子中高生の声をもとに商品を企画する「Wing Teen(ウイングティーン)」より、ティーンのヒップに合わせた設計でおしりにくいこみにくいパンツ「non!PK」の新作が登場しました。なかでも注目は、多くのご要望を受けてデビューしたサニタリーショーツ。その開発秘話やシリーズの新商品をご紹介します。
中学生の声をヒントにパンツのくいこみを防ぐアイデアを研究
――「non!PK」のデビューはいつごろでしょうか?
松川 2018年春、ティーン向けブランド「プリリ」の中で発売をスタートしました。「プリリ」は1994年から長年ご愛顧いただいていたのですが、2020年12月に「Wing」ブランドをリブランドするタイミングに、「Wing Teen(ウイング ティーン)」という新たな名称に生まれ変わりました。
松川 「Wing Teen」は、「Wing」ブランドの中で、インナーウェアを通して小中高生の初めてのからだとの向き合いにこたえる役割を担っています。実際に着用いただく小中高生の声を細やかに収集し、ワコールならではの機能性の高い商品に投影していく姿勢はそのままに、ライフステージの中でWingを初めて体験いただくことことで、生涯のWingファンづくりにつなげていきたいと考えています。
――「non!PK」を開発したきっかけや特徴について教えてください。
丸谷 こちらは、ワコールとノートルダム女学院中学校との産学連携共同プロジェクトから生まれた商品です。実際に学校を訪ねてお話させていただき、女子中学生が同世代のお悩みを解決するアイテムを発表していただきました。もともと商品化までは考えていなくて、いいアイデアが集まればよいなというスタートでした。
でも、ほとんどの生徒がブラにまつわるアイデアを出してくるなか、「non!PK」の元になったショーツのアイデアを提案してくれた生徒がいらして。もともと女子中高生の間で使われていたパンツ(P)くいこむ(K)をキーワードにされていたのも目を引きました。実際、長年耳にしていたワードなのに手を打てていなかったこともあり、採用を決定しました。生徒たちのアイデアと、ワコール人間科学研究所のデータを活用し、共同開発しました。
松川 PKになる(=パンツがくいこいむ)のは、ティーンならではの動作も理由です。授業で起立したり、自転車に乗ったり、体育座りをしたときにくいこんでしまうなど。
佐藤 それに、大人とくらべて皮ふにはりがあり、ヒップのお肉のつき方がちがうという特徴があるので、おしりの中心にくいこみやすくなってしまうんです。ですので、ヒップが盛り上がるところに対して生地が立体的にフィットするようにしたり、ウエスト部分もギャザー分量を調整したり、独自の構造にする必要がありました。また、パンツがくいこまないように生地の伸びるところ、伸びないところのバランスも大切です。
丸谷 発売当時、「non!PK」の動画がバズってTikTokで浸透していったので、ティーンのみなさんが広めてくださったと言っても過言ではありません(笑)。今どきの流れだなと感じています。
サニタリーショーツならではの構造の工夫がポイント
――今回、サニタリーショーツが初登場とのことですが?
丸谷 そうなんです。「non!PK」のデビュー当初からたくさんのご要望が届いていたのですが、通常のショーツと違って開発難易度がとても高かったんです。今回はこれまでに蓄積してきた知識や技術を駆使して、設計、デザイン、MD、人間科学研究所など多くのメンバーのチームワークがあって開発することができました。途中で開発に加わったパタンナーの佐藤が、大人用のサニタリーショーツの経験があったことも大きかったですね。
佐藤 サニタリーショーツも、もちろんパンツがくいこみにくい機能性をもたせますが、防水布を使うのでまた新たな条件での開発が必要でした。自分たちではなく若い世代のリアルな声をヒアリングして、ナプキンをつける位置、マチの丈や防水布がどこまでくるべきか、くいこまないかを反映していきました。防水布のところで生地の伸びが止まるので、そこがちょうどヒップ部分にくるようにしています。試行錯誤した結果、生地をタテ・ヨコの両方向に伸びるようにパターン設計することによって、「non!PK」の機能をもたせたサニタリーショーツを完成させることができました。
丸谷 生地は、ティーンの方が小さいころからショーツでなじみのある綿混生地です。カラーはアンケート結果をもとに、日常的に使いやすいグレー(GY)、紺(KO)、黒(BL)をご用意しました。リボンをつける? つけない? という小さな部分もティーンの声を反映して、サニタリーショーツに関してはシンプルながらも、少し脇飾りでポイントのあるデザインに仕上げました。
ティーンの生の声を反映して商品化するデザインを決定
――こちらのボードは何ですか?
徳田 雑誌『セブンティーン』のイベントで、どのデザインが好きか1000人ほどにアンケートをとったときのボードです。このときはさくらんぼの柄、ドット柄が好評でしたね。このボードをつくるにあたって、どんな柄が欲しいかをヒアリングしたり、店頭や雑誌など媒体のトレンドを吸い上げてデザインしています。ティーンのみなさんをいつも意識しているので、街中などで持ち物や服装に目がいってしまうのは職業病です(笑)。
松川 私たちが「今、ティーンはコレを求めている」と考えているものと、実際ティーンが求めているものが違う、ということもあるんですね。純粋にお客様の意見を反映するため、このボードの好きな柄にシールを貼ってもらうんです。
丸谷 この方法はこれまで6回ほど実施していまして、私立高校や公立中学校にもご協力いただきました。「non!PK」のリピーターの方が増えていっているので、新しい柄を随時出すようにしています。
――ティーンに好まれるデザインに特徴はありますか?
徳田 白や薄い色を好まれますが、ショーツに関しては遊び心があるものも人気です。今シーズンですと、一番人気だったのが幾何学模様(写真・左上)ですね。店頭では白系が並ぶので、アイキャッチになるデザインも意識して取り入れています。それも、はげしすぎると抵抗があるようなので、ほどよく加減しています。バナナの柄(写真・右下)は、いろんなパターンでデザインしてみた結果、自身で手描きしたものが採用となりました。
松川 ありがたいことにティーンのみなさんにご支持いただいておりますので、年内での累計売上100万枚を目指しています…!
徳田 今回ご紹介のショーツのほか、スポーツにぴったりの吸汗速乾素材のショーツや、ハーフトップタイプのスポブラもご用意しています。部活動をされている方にもおすすめで、ペアで着用くださる方が増えていますので、ぜひチェックしてみてください。
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丸谷佳奈(まるたに・かな)
卸売事業本部 ウイングブランド インナーウェア商品統括部 商品企画部 商品企画二課
ワコール入社後、Wingにてキャンペーンブラジャーのパターン、デザインを担当。
2015年よりWing Teenのチーフデザイナーを担当。
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佐藤裕子(さとう・ひろこ)
卸売事業本部 ウイングブランド インナーウェア商品統括部 商品企画部 商品企画二課
キャンペーンブラジャーのパターンを経験後、2005~2018年ウンナナクールにて、デザイナー&パタンナーとしてFunFunWeek・ふんどし・ブラジェニック等の開発に携わる。Wingブラジャーパタンナーを経て、2020年よりWing Teenのパターンチーフを担当。
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徳田奈保(とくだ・なほ)
卸売事業本部 ウイングブランド インナーウェア商品統括部 商品企画部 商品企画二課
Wingにてキャンペーンブラジャーのパターンを担当後、2018年よりWing Teenのデザインを担当。
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松川圭介(まつかわ・けいすけ)
卸売事業本部 ウイングブランド インナーウェア商品統括部 商品営業部 商品営業二課
9年間、東西でセールスを経験し、その後、ウイングブランドの商品部に異動。ウェブ営業課でEC、新規販路に携わり、2020年4月より現職。
撮影/合田慎二