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  • 2024.04.17

法学者・谷口真由美先生が解決! ストレスが吹き飛ぶ「人づきあいの新常識」仕事編

前回に続き、「人間関係の悩み」の実践編。みなさんから寄せられたお悩みを、法学者・コメンテーターの谷口真由美先生が関西弁の効いた「真由美節」で解決します! 前編は、「仕事のお悩み」から。上司や部下とうまくやり抜く方法とは?

Q1 新しい部下が私より年上です。仕事のミスが多く注意もしづらく、その上そこそこプライドも高そう。上手な対処法はありますか?(40代)

A. 反撃は禁物! 年上部下のパターンの把握がカギ

部下となれば年上も年下も関係ありません。「部下なのに年上だから」と反射的に遠慮してしまう人は、まず上司としてのマインドセットから変えましょう。また、覚えておくといいのが、プライドの高い年下部下は、大きく2パターンに分けられるということです。

1つは、自分がやってきたことに自信があって、その分野や業界のことをよく知っているパターン。2つ目のパターンは、案外仕事ができなくて、それをプライドの高さでカバーしている人。1つ目の、業界に精通していて自信がある人の対処法は、おだててどんどん仕事を振るといいんですけど、相談者の方の状況は、年上部下にミスが多いとのことなので2つ目のパターンですね。

この場合、絶対にやってはいけないことは、「お前がいかにできない奴か知らしめてやろうか!」と反撃することです。逆効果やで。こういうときは、ストレスがかかりますが、相手がミスするもんやと思って、仕事を振るべき。あと、1on1で段階的にミスを注意していくのが大事ですが、いっぺんに言うたらあかんよ。話しながら、具体的にいつどんなミスがあったかを示してあげてください。伝えにくいかもですが、具体的に言わないと「どんなミスを私がしたって言うんですか?!」と責められかねないので。「チームのために、こういうミスは減らしてくださいね〜」と、優しく“年上部下”さんに言ってあげるところから始めたらいいんちゃうかな。

法者・谷口真由美先生が解決!ストレスが吹き飛ぶ「人づきあいの新常識」仕事編

Q2 悪い人じゃないけど、言い方がキツくて責められている気分にさせる同僚。うまくつきあう方法は?(20代)

A. クスッと笑える理由をつけて、相手に伝えよ

ずっと気になるようなら、相手に伝えて改善してもらうほうがいいですね。「あの〜(^ ^)ちょっとだけ優しく言ってもらってもいいですかね?(笑)」と、笑いに落としながら伝えられると100点。もう少し面白くするなら、たとえば「〇〇さんの口調ですが、実は私からするとトーンがきつくて。お話ししたあと、いつも3時のおやつが食べられないんですよ…。私、仕事をするうえで3時のおやつはめちゃくちゃ大事なので、もう少し優しくおっしゃっていただけますでしょうか…!」と、伝えようか(笑)。これなら笑えるやろ。

でも、相手の何が嫌なのかははっきりさせて伝えなあかんで。方言なのか、イントネーションなのか、語尾なのか。私も関西人なので、よくカジュアルに「あんたさ〜」って友達に言うのですが、関東の人から「あんたって言わないでよ、怖いわ〜」と指摘されて以来、その人に対しては気をつけるようにしています。

もし相手の言い方がひどすぎて笑いで解決できなそうなら、先輩また上司に相談しましょう。そのときは、必ず疑問形で相談すること。「〇〇さんの口調がきついんですよ」ではなく、「彼の口調がきつく感じるのですが、どう思います?」と、疑問形で聞いて、その上司がどう思っているのかちゃんと聞き出しましょう。

あと、こういう悩みでよく「悪い人じゃないけど…」と前置きする人が多いですが、世の中「ほんまに悪い人」なんかそういません。相手に「悪気がない」っていうのがポイントで、人からしたら「悪いこと」をしているのに気づいていないのが問題です。あなたががまんすることはないです。

Q3 苦手な人がいても、嫌なことを言われても、平気な顔ができる人になりたい(20代)

A. がまんせんでいい。「きょとん」顔をきわめよ

嫌なことを言われても平気な顔ができる人になりたいって? ならんでいい、ならんでいい! もしかしたらあなたが気づいていないだけで、ハラスメントを受けている状態かもしれません。

苦手な人には、平気な顔をしたり媚びを売ったりする必要ないです。もし職場で会ったら、挨拶したあと、「スン」って顔をしましょう。平気な顔を続けていると、「この子にはなんでも言っていいんだ」と思われてしまうことも。そうなるとやっかいですよ。

女の人は「愛想よくしてその場をうまく切り抜けなさい」と言われたことがある人も多いのでは。そんなこと、まったくありませんから。嫌なことを言われたときは、サンドイッチマンみたいに「ちょっと何言ってるかわからない」と心の中で言いながら、表情も「はて?」ときょとん顔をするのが意外と大事です。

今日からみんな、「え?この人、何言っているの…?」という表情の練習をしましょう。あまりにもひどかったら「すみません、もう一度説明していただけますか?」と言ってみて。私はコメンテーターの仕事で、ほかの人が言っていることが理解できないときは、カメラに映っていても「ん?」っていう顔をしますよ。共感や理解ができるときはうなづきます。表情も大事なコミュニケーションの一部。相手の言い方や態度がおかしかったら、顔に出しましょう。

法学者・谷口真由美先生が解決!ストレスが吹き飛ぶ「人づきあいの新常識」仕事編

Q4 10歳以上年下の新卒社員とうまく会話ができません。「子どもっぽいな」と感じてしまって、嫌な態度をとってしまいます(30代)

A. 子ども嫌うな、来た道だ。年寄り嫌うな、行く道だ

「子ども嫌うな、来た道だ。年寄り嫌うな、行く道だ」という言葉があります。もしかしたら、あなたも新卒のときに同じようなことを先輩から思われていたかもしれません。だから、ペイフォワードだと思ってやさしく年下と接しましょう。逆に、今のあなたを「子どもっぽいな」と思っているかもしれない40代、50代もいるわけです。年下にはあたたかい目で、自分にもそういう時があったなぁと思いながら見守ってあげましょう。

Q5 よく後輩から相談されるのですが、上手に話を聞き出すことができず落ち込みます。聞き上手になる方法を教えて(30代)

A. 自身のエピソードを呼び水に話を引き出そう

よく後輩に相談される時点で、たぶんあなたは聞き上手な人ですね。つまり、これ以上うまく相談に乗りたいと悩むあなたは、目標がチョモランマの頂上並みに高すぎるかも? 今の自分にまずは自信を持ちましょう。あなたはもう話を聞いてくれそうな空気感をお持ちなんですから。

話し上手な人は、本来聞き上手でもあります。もし相手が相談しに来たものの説明しづらそうにしていたら、あなたからその悩みに関する自身のエピソードを話してみるといいかもしれません。それが呼び水になって、相手も話しやすくなることもあるので。

Q6 人間関係で嫌なことがあっても、イライラしないメンタル維持法が知りたい(30代)

A. 自分だけのストレス解消法を知っておこう

お、この手の相談は私の得意分野や。なんて言ったって、私の人生のモットーは「不機嫌さんよりご機嫌さん」ですから。

まず、自分はどうしたらストレスが解消されるのかを、模索する時期を設けてみましょう。好きなものに囲まれる環境づくりは、ストレスとつきあっていく上でとても大事です。たとえば、お気に入りの香水をつけていたら気分が晴れるという人は、常にその香水を身にまとっておくとか。私の場合は、イライラしたら寝るようにしています。休みの日に外に行ってリフレッシュするほうがいい人もいれば、私みたいに家でずっと寝たり、甘いものを食べていたほうがいい人など、ストレスが和らぐ方法はさまざま。つまり、自分の機嫌は自分でしか保てないので、解消方法を自分で理解しておくのが重要です。ほかにも、ストレス解消グッズを家や職場に置くのもいいですよ。からだをあたためるものとか、触ると癒されるぷにぷにしたグッズとか。

私は企業研修でよく「自分の取扱説明書」を書いてもらうセッションを行います。それくらい、自分を観察して把握することは、仕事をするうえで大事です。四季、天気、生理、PMSなど人によっていろんなものが気分や体調に影響します。どうしたら自分の機嫌をよく保てるか、どういう言葉を言われたら傷つくのか…。すべてわかっておくことで、ストレスを予防したり解消したりできます。

法学者・谷口真由美先生が解決!ストレスが吹き飛ぶ「人づきあいの新常識」仕事編

---- 谷口先生は、対人関係で「がまんをしないこと」と「言語化」が大事だと強調します。何がつらくて悩んでいるのかをはっきりさせることは、悩みを解決へと導く一歩。そして、がまんせずに誰かに相談したり、直接話し合うことで物事が解決される可能性が高まります。これから仕事で悩んだら、谷口さんのアドバイスを思い出して、いざ実践! 次回は谷口先生のお悩み相談【プライベート編】をお届けします。

  • たにぐち まゆみ
  • たにぐち まゆみ 1975年大阪市生まれ。法学者。専門は国際人権法、ジェンダー法など。現在、神戸学院大学客員教授・佐賀女子短期大学客員教授・立教大学諮問委員。スポーツハラスメントZERO協会代表理事、ビジネスと人権研究所代表理事など。企業のハラスメント対策・SDGs・ESGなどのコンサルタントなども務める。近著に『おっさんの掟ー「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」ー』(小学館)、『きみの人生はきみのものー子どもが知っておきたい「権利」の話ー』(荻上チキと共著、NHK出版)。
取材・文/ぺ・リョソン
イラスト/stock.adobe.com
デザイン/WATARIGRAPHIC