2022.04.20

【特集】今からできる髪つや対策#04

血行促進は髪にも不可欠。髪質改善は長期戦でのぞもう

毛髪診断士 本山典子さん

---- 髪の毛には、食生活やホルモン状態、ストレス度合いなど、今の自分のライフスタイルが反映されています。どんな生活習慣を心がけたら、髪のつやが高まるのでしょうか? 今すぐにできることから教えてもらいました。

髪は、
健康のバロメーター

私たちの髪の毛のサイクルは、細胞分裂が起こり、新しい髪の毛が生えてくる<成長期>と髪の毛の成長が止まる時期<退行期>、毛根が小さくなり髪が抜け落ちる<休止期>の3つのサイクルを繰り返しています。

髪は健康のバロメーターでもあります。今の髪の毛の状態は直近3~4か月の生活習慣やホルモン状態、ストレス度合いなどが強く反映されています。ただし、髪全体の質を改善しようとするならば、<成長期>の年数である3~4年をかけて長い目で少しずつ整えるつもりでいるといいでしょう。

ヘアサイクル(毛周期)

「赤」「黒」の食材は生命源

つやのあるきれいな髪をつくるために、何を食べるかはとても重要です。これさえ食べればOKという食材はなく、バランスのいい食事を心がけるのがいちばんですが、簡単なのは、食材を見た目の色で分類した「赤・白・黄・緑・黒」の5色を目安にすることです。どの色の素材も欠けることなく、バランスよく摂取することが大事です。

毛髪診断士 本山典子さん

#01でお話ししたとおり、エネルギーが十分にないと、12万本もの髪の生成はうまくできません。5色のうち、肉類やマグロ、鮭といった良質のタンパク質をもち、血液をつくる「赤」の食材と、昆布やわかめ、ひじきなどの海藻類やきのこなど滋養をつくる「黒」の食材は、生命力の源となります。おとな世代は特に積極的にとりましょう。

また、最近では紫外線が危険だからと太陽を浴びる量が極端に少ない人もいます。日光浴をして、免疫力を高めるビタミンDを生成することは、美しい髪への一歩ですので、髪の毛が痛まないように紫外線対策はしつつも、一定の時間太陽の光を浴びることも意識してください。

すき間時間に、
頭皮の血流促進

適度な運動はもちろん、髪のつやに必要ですが、無理やりやったところでなかなか習慣化できません。「やらなきゃ」という気持ちから頑張るのではなく、「気持ちよくて気づけば続いていた」と習慣になるのがベスト。そこで簡単なエクササイズをご紹介します。

みなさんは自分の頭に筋肉はあると思いますか? 下の図を見てください。頭には、前頭筋、後頭筋、側頭筋の3つの筋肉がありますが、頭のてっぺんには筋肉がありません。頭頂は帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)という「筋膜」で覆われているのですが、筋肉がないので血流がとどこおりやすく、老廃物も溜まりがちです。それによって頭皮全体の血流が悪くなる、むくんでしまうなどの現象が起こりやすく、抜け毛が出たり、髪のつやも失われてしまいます。

頭部の筋肉と筋膜

頭頂の筋膜をやわらかくするポイントは、まず側頭筋と後頭筋をほぐすこと。ここが凝っていると、そこよりも上に血液がまわりにくく、筋膜が硬くなってしまうのです。ですが、現代人は特に後頭筋がゴリゴリに凝っています。その最大の原因は、スマホやPCの見過ぎです。スマホの動画など、目を酷使して視覚の情報を整理するのに後頭部を使うことからも、後頭筋は凝り固まります。加えて、スマホを見るときに無理な態勢で首を支えてることも、後頭筋を硬くしてしまいがちです。

毛髪診断士 本山典子さん

ただし、スマホも今や生活習慣なので断つことは不可能でしょう。大切なのは自分を労ること。おすすめは後頭部で手を組み、頭で手を押し、手で頭を押す、両方で押し合いっこするストレッチです。力を入れる→離す→入れるを繰り返していると、前に突き出したスマホ首が本来の位置に戻りやすくなります。これによって、離したときに血液がどっと流れる感触がわかると思います。あとは、耳を引っ張って、軽くうなずく動作も頭の血流を良好にします。仕事中や電車の中でもできるので、スマホを見過ぎたときなどに活用してください。

頭部をほぐすストレッチ

またリンパの流れをよくすることも健康的なつや髪には必須です。リンパはからだ中を巡って、老廃物を排除するなどの働きを行なっていますが、特に大事なのが鎖骨下のリンパ節。鎖骨のくぼみは、全身から集められたリンパが最終的に流れていく場所なので、血流を促すことが、髪質にも影響します。

鎖骨下のリンパを流す簡単なポーズを紹介します。椅子に座った状態で、両手を上げてバンザイの状態に。そのあと片手ずつ交互にさらに伸ばしていきます。このとき、手ではなく脇や肋骨をあげる感覚で行うのがポイントです。ちょっと伸ばすだけで刺激になりますので、空いた時間にぜひやってみてください。(4回連載終わり)

【特集】今からできる髪つや対策

  • 本山典子 毛髪診断士。短大卒業後、「シャンプー好き」が高じて美容師免許を取得。美容学校教職員、美容室勤務を経て、ヘアケア商材を扱うメーカーに入社。ヘアケアメーカーの事業部長として企画開発、営業、販売などに携わり、毛髪ケアの独自スキルを活かして世界12カ国でヘアケア指導を行う。毛髪理論だけでなく人体構造学、漢方学、五感学に通じ、身心に働きかける「本山メソッド」が国内外で評価され話題に。2015年、(社)国際毛髪皮膚科学研究所代表理事に就任。著書に『正しいケアで毎日が輝く! 毛髪診断士のときめき美髪BOOK魔法のシャンプー&スカルプストレッチ』(メイツ出版)など。
取材・文/大庭典子
撮影/望月みちか
デザイン/日比野まり子
イメージ写真/shutterstock.com