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  • 2024.04.24

法学者・谷口真由美先生が解決! ストレスが吹き飛ぶ「人づきあいの新常識」プライベート編

時に厳しく、時にやさしく、人のお悩みに寄り添って解決に導く、法学者・谷口真由美先生。前回に続き、読者のみなさんから寄せられた「お悩み」に答えます。

Q1 夫のことが嫌い。でも別れてくれない。どうすればいい?(30代)

A. まずは「嫌いの理由」を言語化しよう。メモも忘れずに

嫌いなら別れましょう。といっても、別れてもらえないんですよね。まずこういうときに何よりも大事なのが、あなたが相手に抱いているのはどういう「嫌い」なのかを先にはっきりさせることです。いろんな理由で人は誰かのことを嫌いになるわけです。がまんして乗り越えられる理由なのか、または自分の限界を超えてしまう「嫌い」なのか、判別を。その前に、がまんするようなことなのかどうかを、考えないといけませんね。

たとえば「浮気を続ける性格が許せない」という理由と、「服のセンスの悪さが無理」という理由は、同じ「嫌いの理由」でも大きく違いますよね。浮気に関しては、相手の責任による「嫌いの理由」です。正直なところ、これが理由ならがまんする必要もないと思います。一方、「服のセンスの悪さ」は、人しだいで乗り越えられる「嫌いの理由」ですよね。ただ、相手にこだわりがありすぎて無理! という場合は、無理でしょう。まあ自分の人生なので、「嫌い」と思うことには自分の時間を無理に割かなくていいと思うのが私の考えですけども。

さて、どんな「嫌いの理由」であれ、限界を超えたらやることはただひとつ、すぐ離れるべきです。あとね、裁判しようと思ったら、証拠を残しておかないといけないので、時間があるときに、起きた事象をこまめにメモしておきましょう。「こういうことを言われて、すごく傷ついた」といった感じで。ボイスメモでもいいですよ。裁判では言語化が求められますからね、残しておくのが何よりも大事。ちなみに、別れてくれなくても、今は法律上3〜5年別居すると離婚(※)できますよ。

※別居期間が3年程度経過して未成熟子(親から独立して生活できない子ども)もいない夫婦の場合、不倫やDV等の有責性が認められなければ概ね判決でも離婚が認められる傾向にあります。不貞行為や暴力はないものの、夫婦喧嘩があり性格の違いから離婚したい場合で、相手が離婚に同意してくれない場合、粘り強く交渉して離婚するか、別居により第三者から見て夫婦関係が破綻していると判断がされる必要があります。
客観的にみて夫婦関係が破綻していると判断されれば、法的に離婚することが可能です。その別居期間の相場がだいたい5~10年間となります。

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Q2 縁が切れる前の前兆があれば知りたいです。○個当てはまったらこの友人とは終了! というような(40代)

A. チェック項目なんてない。「自分はどうしたいか」を考えて

人によるし、相手の性格、立ち位置にもよるので、全員にあてはまる前兆はないですよ。親や親戚のように、切ろうとしても簡単には切れない縁もありますからね。ひとつ言えるのは、縁が切れる前って自分も相手も、関わりが「薄く」なっていくもんなんです。会話が減ったり、会う回数が減ったり、薄れ方は人それぞれ。

そもそも、縁が切れたことにしばらく気づかない人のほうが大半です。「ああ、もうすぐあの人との縁が切れる」と日々感じている人は少ないはず。だから、あなたはもしかしたら人よりも繊細に生きている方かもしれません。切れた縁に対して、つらく思う必要はないです。それこそ縁なので、細くなったり、太なったり、急に切れたり、ある日突然戻ったりするものです。

「切れた」と思わず、「今はご縁がないんやな」と思っておくのが大事。でも、縁は自分しだいなところも大いにあります。「この人との縁は切れたくない」と思ったら、人は連絡頻度が減っても、タイミングを見て自分から連絡するもんです。だから、急に誰かと疎遠になったと気づいても「自分はどうしたいか」を考えてください。気持ちに従って、その人との縁を細く、または太くしていけばいいのです。

Q3 誰からも連絡がないと自分は必要とされていないと思ってしまうときがあります(40代)

A. ひとりで過ごす時間に慣れよう

Ah hah。人の基準で生きるでない! 1年以上誰からも連絡が来ないのはちょっと問題かもですが、友達によって働く業界が違うと、忙しいタイミングも違うことってありますよね?

たとえば税理士の友達がいるとしましょう。彼らは1月から3月は超多忙なので、ランチやお出かけする時間なんてなさそうですよね。あと、40代は、子育てをしていたり親の介護で忙しくなったりする時期です。ある日突然病院や施設、実家に通う頻度が増え、休みの日はできるだけ寝ていたいと思う人だって、多いわけです。だから、人の基準で生きるのはやめたほうが自分のためなのです。誰かから必要とされないと、生きていけないわけではないですよね。自分で自分の機嫌をよくする方法を見つけましょう。「誰からも連絡こないのはむしろラッキー」と思うことが大事!「休みなさい」というサインでもあると思います。そして、その間は読書をしたり、撮りためた録画を観たり、自分の好きなことをすればよいのです。とにかく、人間にとってひとりで過ごす時間に慣れていくのは、ものすごく重要なことかもしれませんね。

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Q4 親の介護や家の建て替えなどで、ことごとく姉妹で意見が合いません(40代)

A. 姉妹の間でも取り決めが大事。時間とお金の役割分担を

取り決めが大事です。血のつながった姉妹でも、もともとの性格が違うし、結婚したあとだと配偶者によって考え方や言うことが変わることなんて、いくらでもあります。

こういう建て替えの話をするときって、「親がどう快適に過ごせるか」というコアな部分について、議論されにくいんですよね。姉妹の誰が親と一緒に暮らすのかという面倒見の話と、亡くなったらその家に住むのは誰なのかなどの財産分与の話が絡みつくので、話はどんどん複雑になっていきます。親が快適に過ごすことをブレずに目的として置いたうえで、誰が何を分担するか、そしてお互い腹落ちしないことを何で解決するのか、決めておくのが大事。

たとえば、「週5日、妹が実家に通ってくれるなら、ほかの姉妹は金銭的に援助する」とか。家に通うのは、お金を出せばヘルパーさんにお願いできることでもあります。だから自身の時間を使って両親のもとに通う妹さんは、ほかの姉妹から金銭的援助を受けるか、または入院費などお金のかかる部分を姉妹に負担してもらうのが、妥当ですよね。

お互い、できないことを何で換算するのか、シビアに考えるべき。子育てと違って、介護は「お尻が見えない」ものです。このお尻っていうのは「親の死」を意味します。だから、悲しいことに家族なのにどんどん話し合いがしにくくなって、意見が合わなくなる。まずは、何でもめているのか書き出してみて、姉妹で目線が合っているのか確認しながら進めてみませんか。

Q5 育児に関して主人に相談すると、「わからん。知らん」と突き放されます。うまく巻き込む方法はあるのでしょうか?(30代)

A. こうなったらオールorナッシング方式や

「お前の子どもやろ! ワシだけの子どもちゃうぞゴルァ!」って、私ならキレますね。ていうか、キレたことありますわ。子どもを育てるって、人生の「一大プロジェクト」です。それを放棄するのであれば、「これからあなたには一切相談しないから、お金だけ出して口出ししないでね」と言いましょう。これくらい言わないと、割に合わないです。

相手にアンフェアだと言われたら、本当はあまりよくないですが、最終手段は「オールorナッシング方式」ですよ。「子育てに関わるの、関わらんの。どっち?」と尋ねましょう。楽しいことだけして、しんどいことをしない人って、会社におってもだいぶしんどいですよね。時間って、つくるもんじゃなくて「割く」もんなんです。どんなに忙しくても、子どものために時間を割けない人は、シメてやりたいわ。私が代わりにシメに行ってあげましょうか?

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Q6 大人になって友達をつくる方法を教えてください(30代)

A. 趣味と行きつけのお店をつくろう

趣味があるかないかは大きいです。多くの人が友達をつくっている方法は、スポーツサークルや、お料理教室、手芸教室、近所の食べ物屋さんです。常連さん同士で仲良くなって、友達増やしてるんです。スポーツはサークルじゃなくても、試合を観に行ったら隣の人と盛り上がって仲良くなれたりするもんですよ。

大人って良くも悪くも、一回仲良くなったらいつでもそのつながりは解消できます。あとから嫌になったらもう会わなかったらいいだけの話。学生のときみたいに、毎日同じ教室にいなければいけないわけではないですからね。そういえば、私の母はカルチャーセンターとかで友達をつくっていましたね。趣味や習い事で友達をつくりましょう。

  • たにぐち まゆみ
  • たにぐち まゆみ 1975年大阪市生まれ。法学者。専門は国際人権法、ジェンダー法など。現在、神戸学院大学客員教授・佐賀女子短期大学客員教授・立教大学諮問委員。スポーツハラスメントZERO協会代表理事、ビジネスと人権研究所代表理事など。企業のハラスメント対策・SDGs・ESGなどのコンサルタントなども務める。近著に『おっさんの掟ー「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」ー』(小学館)、『きみの人生はきみのものー子どもが知っておきたい「権利」の話ー』(荻上チキと共著、NHK出版)。
取材・文/ぺ・リョソン
イラスト/stock.adobe.com
デザイン/WATARIGRAPHIC