新訳からだ辞典「パンツ一丁」

2019年11月27日

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

HEART

今月のコトバ「靴下(ソックス)」

今月のコトバ「靴下(ソックス)」
靴下はインナーかアウターか
靴下とは、皮膚の保護や保温のために足に直接つける衣料のこと。ソックスのほか、ハイソックスやストッキング、タイツなども、広い意味では靴下といっていい。今回、この言葉を取り上げた理由は、年末が近づいてきたから。そう、クリスマスといえば靴下。サンタクロースが子どもたちへのプレゼントを詰めるのは靴下と決まっている。

そもそも靴下は、なぜ靴下というのだろう。靴をはいたときの靴下の状態は「靴の下」ではなく「靴の上(あるいは靴の中・靴の内側)」なのだから、「靴上」「靴中」「靴内」と呼ぶべきではないか。でも、そうじゃない。「靴下」と呼ぶ理由は、下着好きの方なら、すぐにおわかりですね。靴下の「下」は、下着の「下」と同様、「覆われている部分の内側」という意味があるからだ。

つまり、靴下がインナーウェア(内側に着るもの)の一種であることは明らかだが、位置付けとしては、レッグウェア(脚に着るもの)としてカテゴライズされることが多い。靴下といっても靴に覆われていない部分は多く、意外と目立つため、一般的にはアウターとして認識されているからではないかと思う。
靴下を脱がない人々
下着についてのアンケートの回答を紹介するワコールのWebコンテンツ『ブラパン』には、靴下をテーマにした回もある。そのコメントが面白かったので少し紹介してみたい。まずは「家に帰って、靴下はいつ脱ぐ?」という質問。いつ脱ぐかを聞いているのに「新たに別の靴下を履く」というコメントが多いことに、いたく胸を打たれたのである。

「家に帰ったら足を洗って、新しい靴下をはいてます」「ふわふわソックスに履き替えます」「寝るときも履いている」「冷え性なのでいつも靴下をはいています」「帰ってくるとソックスの上に綺麗なくつ下をはきます。それで絨毯の上を歩きます」etc. 靴下を愛好する人々の気持ちがリアルに伝わってくるではないか。

また、別の質問「デニムと靴下、先にはくのはどっち?」では、「洋服のコーディネイトを決めて最後にバランスをみて靴下を選びます」など、デニムを先にはく人が多い中、靴下が先という人のコメント「やっぱり下着からかなぁと思いました」には、はっとした。靴下は仕上げのアウターでもあるけれど、下着として、ブラやショーツとのコーディネイトを楽しむのもありかもしれない。
なぜクリスマスに靴下を吊すのか?
ところで、冒頭に「サンタクロースが子どもたちへのプレゼントを詰めるのは靴下と決まっている」と書いたが、この慣習はどこから来たのか。動物行動学の研究で知られる英国の学者、デズモンド・モリスの著書『クリスマス・ウォッチング』(扶桑社)に由来が書かれているので、要約してお伝えしよう。

サンタクロースのモデルといわれる聖ニコラウスは、自分の富を匿名で貧しい人々や子どもたちに分け与え、ヨーロッパ中で慕われる聖人となった人。あるとき彼は、全財産を失った男の話を聞いた。3人の娘に嫁入り資金を用意することもできず、彼女たちを身売りするしか手立てがなくなったというのである。彼は夜になると馬で男の家へ向かい、3人の娘の部屋の窓からそれぞれ黄金の袋を投げ入れた。袋のひとつは、窓際に吊してあった靴下の中に入っていたらしい。

これが「クリスマス・イヴに靴下を吊しておけば、聖ニコラウスが夜中にこっそりやってきて贈り物を詰めてくれる」といわれるようになった由来だ。たしかに、受け取る側からすると、窓から黄金の袋を投げ入れられるのはやや恐怖だが、靴下の中に入れてくれれば、贈り物っぽく受け取れそうな気がする。

もちろん、贈り物を詰めるのは靴下でなくてもいいと思う。パンツでもいいのかもしれない。だが、パンツに詰めると、足ぐりの部分からすべり落ちてしまうことは確実だから、残念ながらふさわしくないのである。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ワイン、イタリア、ランジェリー、映画愛好家。
好きなイタリア語は「スプーニャ(=スポンジ)」。ずぶ濡れになることを「スプーニャになる」といい、浴びるほど酒を飲むことを「スプーニャのように飲む」という。
からだをスポンジにたとえるなんてカワイイ。

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