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教えて、ドクター!

2018年7月25日

先生/東原和成
(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)

BODY

【特集/においと香りと人のからだ】

「ここちいい」は「からだにいい」

----好きか嫌いかの判断は、「経験」によるところが大きいということは前回お話ししましたが、嗅覚は聴覚や視覚のように加齢によって低下することはそれほどなく、むしろ、さまざまなにおいを嗅いできた経験から、歳を重ねるほど、より多くのにおいを嗅ぎ分けられるようになるケースもあるのだとか。そんな嗅覚にはどんな機能があり、その機能を有効活用するにはどうすればいいのか、引き続き東原先生に伺いました。
おいしさを決めるのは
「味」ではなく「味と香り」
聴覚は高齢になると高音が聞こえづらくなり、視力は白内障が出てくるなど、加齢による機能の低下が見られますが、嗅覚はあまり衰えません。60代後半になると多少衰えてきますが、落ちてもせいぜい2~3割。7~8割は機能しています。ソムリエが、ワインに含まれる香りの成分を覚えることで、ワインの中からその香りを識別する能力を上げるように、歳を重ね、たくさんのにおいを嗅いできた経験から、識別能力が上がるケースもあるんですよ。

でも、嗅覚は多少衰えても、日常生活にそれほど影響はないと思っている人が多いのではないでしょうか。確かに、人間は視覚と聴覚でほどんどの情報を得ているため、嗅覚が衰えても生命の危機に直面することはありませんが、嗅覚が正常に機能していないと、食事をおいしく食べることができません。おいしさは、「味」が大きなウエイトを占めていると誤解されがちですが、おいしさを決めるいちばんの要素は香りなのです。鼻の先ではなく、のど越しから上がってくる香りこそ、おいしさを感じる決め手。風邪をひいて鼻が詰まっていると、何を食べても味がしませんよね。おいしく食べられないと、食欲がなくなることもあるわけです。食事中に、どういう香りがしているか意識し、それを自分なりに表現することを繰り返すことによって、嗅覚を鍛えることができます。
そのとき自分がここちいいと思った
香りを選ぶことがベストな選択
「いいにおい」と感じることで、リラックスしたり集中力を高めたり、気持ちに働きかけることができるのも、香りの特徴的な機能です。香りの好みは個人差があるうえ、その効果のエビデンスが確立していないものが多い中、森林のにおいを嗅ぐと集中力がアップすることは、ある程度立証されています。でも、においがもたらす効果だけではなく、そのとき自分がここちよいと思った香りを選ぶことが、心とからだにいい影響を与える重要なポイントです。体臭は、汗や加齢臭といった悪い側面ばかりがフューチャーされるため、あまりいい印象がないかもしれませんが、無意識のうちにお互い安心感を与える効果があることもわかっています。今は、無臭にするか、においをつけるかの2択ですよね。もっと自然な香りを大事にすることで、よりリラックスできるのではないかと我々は考えています。

においは、たとえ不快なものであっても、基本的にからだに害はありません。ただし、以前建材に使われて問題になった接着剤や防腐剤などの中には刺激物質があり、それらはからだに悪い作用をします。強すぎる不快なにおいは、三叉神経(さんさしんけい)を刺激するため頭痛を引き起こすこともありますが、強くストレスを感じるにおいも要注意です。たとえば、同じにおいを嗅ぎ続けると、だんだん麻痺してしまうため、香りの強い香水は周囲に不快な思いをさせている可能性があることも、頭に入れておきましょう。多くの人がいるオフィスでは、そのときの気分に合わせて、1時間程度で飛んでしまうアロマ精油を少しつけるくらいが、ちょうどいいのかもしれませんね。

----香りによる気持ちへの働きかけばかりに気を取られていましたが、おいしく食べるために必要不可欠なものであることを再認識しました。忙しいと食事を楽しむ余裕がなくなりがちですが、食事中にもっと香りを意識することで、満足感を高めたいですね。
東原和成

東原和成 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻 生物化学研究室 教授。東京大学農学部農芸化学科卒業後、ニューヨーク州立大学で博士号取得。デューク大学医学部博士研究員、東京大学医学部助手、神戸大学助手などを経て、現職に。においやフェロモンの研究で、文科省若手科学者賞、日本学士院学術奨励賞、井上学術賞など数々の賞を受賞。

取材・文/山崎潤子
イラスト/はまだなぎさ

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