からだのために「やってる人」の奥の手公開!

美の流儀

2018年5月 2日

語り/武田裕美(POP UPアーティスト)

HEART

【番外編/学びと美を考える】

ポップアップを通して自分が咲く喜びを

「美」をコンセプトにした学びの場、ワコールスタディホール京都と連動した美の流儀【番外編】。今回は、花をモチーフにポップアップ作品をつくる、武田裕美さんが登場します。 武田裕美さん ――ワコールスタディホール京都で販売している武田さんのポップアップアート(飛び出すペーパーアート)は、足を止めて見入るお客さまがとても多いようです。武田さんご自身は、ポップアップアートのどんなところに惹きつけられたのでしょうか?

ありがとうございます。飛び出すしかけ(=ポップアップ)は、子どもの頃に見たことがある方が多いかと思いますが、私が最初に出合ったのは少し遅めの大学生のときでした。場所は留学していた先のカナダの雑貨屋で、手のひらの上で起こった光景にわけがわからないくらい鳥肌が立ち、「これを追求したい」と全細胞で感じたのを、今でも強く覚えています。

それから少しずつ、いろいろなポップアップの本を見るようになっていく中で、ポップアップが表現しているのは、高さ・幅・奥行に「時間」をプラスした四次元の世界だということ。それを実現する仕掛けの技術に限りがないこと、そして紙だけで表現可能であることを知り、それら全部に惹きつけられています。

――現在の形になるまでは、どのように勉強されたのですか?

はじめはどこか学べる場所がないか探したのですが、見つけることができず、一から独学しました。市販の飛び出すしかけ絵本を買って、それをまねしてつくってみたり、失敗の中から見つけた基本のしかけやそれが生み出す動き、角度や長さの法則などをノートに記録したりしていました。初めてオリジナルをつくれるようになったのは、そんな日々を5~6年続けた後です。そしてそれが、今ワコールスタディホール京都で販売させていただいている、この花のポップアップ(下の写真)です。 花のポップアップ その後、もうひとつオリジナル作品をつくった後、今の自分の設計力を知りたくなりました。おこがましいことに、独学を始めた当初から、これを趣味ではなく仕事にすると思っていたので、自分のレベルを把握する必要があったのです。
そこで、私がポップアップをつくるきっかけとなった本の作者で、一番尊敬していて大好きなイギリスのポップアップ作家、キース・モーズリー氏に会いに行こうと思いました。

彼との面識はなかったので、まず手紙を出してみたり、その後イギリスに行っていろんな人を訪ねたりを繰り返し、2年後の2013年の夏にやっと会うことができました。実際に作品を見てもらって以降は、ご縁をいただき、ポップアップの設計で大事なこと、ロット数が多い場合の型紙の設計の仕方、今まで見たことのなかったような技術、そしてそれらをつくる上で大切にされている美学などを教わり、今ではそれらを軸に、今までの制作方法を調整しながら自分なりの制作をしています。 右/グレーの封筒は武田さんがキース・モーズリーさんに出した手紙。初めは転居先不明で戻ってきてしまった。左/その後、キース・モーズリーさんからもらった返事の手紙とネームカード。 右/グレーの封筒は武田さんがキース・モーズリーさんに出した手紙。初めは転居先不明で戻ってきてしまった。左/その後、キース・モーズリーさんからもらった返事の手紙とネームカード。 ――趣味ではなく仕事としてとなると、困難なこともあったのではないでしょうか。

いちばん困難だったと感じることは、私には自信というものが、まったくなかったことです。今までつくった作品に対していくら家族や友人たちが「わあ、きれい」と言ってくれたり、せっかく尊敬する人に多少認めてもらえたとしても、「どうせ知り合いだから、そう言ってくれてるんだ」と思ったり、この角度から見たら変だとか、この細部が汚いとか、これぐらいできる人はいくらでもいるとか...。そういうふうに自分の作品、そして自分自身を一切認められないような期間が、ポップアップを始めてから約10年続いていました。

ここ数年でいちばん落ち込んでるな...という時期、――確か昨年の初めあたりだったと思うのですがーー、そのときに、ふといつも本棚の奥にしまっていた作品(Let Me Bloom)を取り出して、久しぶりに見返しました。それまでも何度か作品を見返すことはあったし、そのたびに「まだまだだな」と感じていたのに、なぜかそのときは、「わあ、きれい...」と初めて思えました。

そして、ああ、確かに設計に無理があるし細部の詰めも甘いけど、でもこれはこのままで十分きれいで、そのままでずっと咲いていたんだと、7年前の自分がつくった作品に言い聞かせられているような感覚になりました。

それからはようやく、つくったポップアップ作品を本にしてみたり、カードにしてみたり、個展をしてみたりという活動を始める覚悟が、少しずつできるようになりました。ポップアップで仕事をしている人とも、国内外を問わず交流してみたり、つくったものを手にしてくれた方から、涙が出るようなありがたい言葉をいただいたりします。こうした経験を経て、これまでの10年は自分はそのままで咲いてることを認める期間、これからの10年はそれを周りの人にも「あなたも咲いてるよ」と伝える10年にしたい。そう思うようにもなりました。

前置きが長くなりましたが、そんな感じで自信のなさから生まれる困難はありつつも、今となっては趣味だとしても仕事だとしても、起こりうる困難はほかのみなさんとまったく同じかなと思います。そして、死ぬまでつくり続ける中で何かしらになったらと思っています。 ワコールスタディホール京都のショップでは武田さんの作品の展示と販売が常設されている。 ワコールスタディホール京都のショップでは武田さんの作品の展示と販売が常設されている。 ――ポップアップを手にすることで、「きれい!」と元気になる体験を、ワコールスタディホール京都での講座で味わってもらいたいですね。

講座では花の色や葉の形などひとつひとつのパーツを選んでいただき、自分だけのポップアップ作品を制作します。不器用な方でもつくれるように型紙を設計していますし、もし間違っても、そのものを活かしたりカバーする方法はあります。完成したら部屋に飾ったり大切な方に贈ったり、また、ふとしたときに開けてみて、ご自身が「咲いてる」と感じてもらえたら本望です。私自身は、いつもひとりでつくっているので、誰かと一緒にポップアップをつくれる機会をとても楽しみにしています。緊張しますが、どうぞよろしくお願いいたします。

武田裕美 POP UPアーティスト
京都生まれ滋賀育ち、京都在住。植物、ことに花が咲きゆく時間や情景を表現したポップアップ作品を制作。

日本のポップアップを確立するひとりとなり、世界に魅せていくことを目標に、日本特有の美意識や製造技術に注目しながら日々ポップアップの研究を行っている。

2016年The Movable Book Society(アメリカ)主催「メッゲンドルファーアーティストブック部門」ファイナリスト。

大切にしているモチーフのほとんどは植物で、型紙を設計するときは「何をどう動かすか」 と 「何を動かさず留めておくか」という、時間の表現に特に注目している。

ワコールスタディホール京都 武田裕美さんのワコールスタディホール講座情報
【すきなパーツを選んで組み立ててみよう 〜自分だけの花のPOP UPづくり】
2018年5月24日(木) 19:00〜20:30
料金/3,780円(税込)

取材・撮影/ワコールボディブック編集部

※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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