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2018年3月14日

先生/中島春紫(明治大学農学部教授)

BODYFOOD

【特集/現代人のための“菌活”】

旨味もアップ、栄養吸収も助ける発酵食品

----発酵食品は栄養や健康面にもプラスに働くといわれていますが、果たしてそのメカニズムとは? 引き続き明治大学農学部教授の中島春紫先生に伺います。 旨味もアップ、栄養吸収も助ける
栄養素を小さく分解、
栄養吸収をスムーズにする発酵食品
発酵食品にはからだにいいといわれる多くの理由がありますが、そのなかのひとつが、栄養の吸収を助けることです。では、どうして発酵食品は元の食材よりも栄養の吸収が高まるのか。その理由は簡単で、発酵食品に含まれている微生物が、消化しにくいものを分解してくれるからです。

タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収されます。どんなタンパク質も時間が無限にあればいつかは消化できますが、食べ物が腸内で消化吸収される時間は限りがあるので、固いタンパク質などは多くが時間切れで、そのまま排出されてしまいます。たとえば、ゴマや大豆。これらは固くて分解しにくく、栄養も吸収されにくいので、たくさん摂取したとしても半分以上の栄養が吸収されずに、そのまま流れていってしまいます。

そこで発酵食品の登場です。体内では分解されにくい大豆を原料に、麹菌と耐塩性の微生物を作用させてタンパク質をじっくりと分解したものが味噌であり、醤油です。特に醤油は、大豆のタンパク質がほとんど分解されたアミノ酸になっているのです。

さらに大豆を発酵させた納豆では、納豆菌がビタミンを自らつくっていることもわかっています。大豆そのものよりも栄養が増えているんですね。ちなみに「納豆は夜に食べたほうがより栄養を吸収する」と言われています。その理由としては、昼間の活動時や興奮しているときは、血流は脳や筋肉に多く回るので、消化管を巡る血液は限られています。寝ている間や安静時は、消化管に血液が多く流れるので、より効率的に栄養が吸収されるというわけです。
旨味もアップさせる超優秀な発酵食品、
そのメカニズムとは
発酵食品の大きな魅力は、素材から旨味を引き出すことにもあります。発酵食品の製造過程では、微生物のなかの酵素がタンパク質を分解してアミノ酸にしますが、ではなぜアミノ酸になると旨味がアップするのか。

実は、肉などタンパク質単体では、味はしません。その理由は、タンパク質は成分が大きいため、味を感知する受容体にはハマらず、舌のうえに乗せても味を感じられないのです。これは、フレッシュな肉ほど味がせず、熟成が進むと旨味が深まる理由にもつながっています。卵白や鶏のササミにはほとんど味がないでしょう。熟成が進むと、肉自身がもっている酵素によって、タンパク質がアミノ酸に分解されるのです。

アミノ酸は、苦みや旨味などその種類によって個性の違う多種多様な味わいがあります。発酵は微生物の働きによって、また熟成は自身のもっている酵素によって、タンパク質がアミノ酸に分解されます。アミノ酸になることで、その結果深い旨味を感じられ、おいしさを堪能できるのは、熟成も発酵も同じです。

これが、お肉の熟成や、肉魚を味噌漬けにしたり麹でもみ込む発酵により、素材の旨味が増すメカニズムです。

特に発酵食品は、旨味をアップさせたり、栄養吸収の効率を上げたりと、おいしさだけでなく健康の源。これからの世代にも和食が絶えることなく、日々の食卓で愛され続けることを願っています。

----おいしさにも栄養にもプラスに働く、発酵食品の魅力がわかりました。味噌や醤油、酒でつくる和食伝統の味わいを、少しずつマスターしていきたいですね。
中島春紫

中島春紫 1960年東京生まれ。1989年東京大学大学院農学系研究科農芸化学専攻博士課程修了。農学博士。東京工業大学工学部助手、同生命理工学部助手、東京大学大学院農学生命科学研究科助教授、明治大学農学部農芸化学科助教授を経て2007年同教授。現在は、麹菌のタンパク質を研究。発酵食品と酒類をこよなく愛している。著書に『微生物の科学』(日刊工業新聞社)など。新刊書『日本の伝統 発酵の科学』(講談社ブルーバックス)も好評発売中。

取材・文/大庭典子
イラスト/はまだなぎさ

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