新訳からだ辞典「パンツ一丁」

2017年6月28日

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

HEART

今月のコトバ「キレキレ」

今月のコトバ「キレキレ」
グダグダからのキレキレ
「切れがいい」という言い方がある。刃物の切れ味、水や油の切れ具合、頭の回転のよさ、動きの鋭さなどを広く賞賛する言葉だ。「キレキレ」は、中でも「すごい切れ」を表す言葉で、超人的なニュアンスが加わる。動きが高速かつ鮮やかだったり、シャープで冴えわたった印象を残す場合のスペシャルな表現である。

定番の使い方は「キレキレのダンス」「キレキレの変化球」など。最近では「キレキレの直球」とも言うし「キレキレのビール」なんてのもあり。キレキレの世界は、節操なく広がっているようだ。「キレキレな人」などと言われると、運動神経が良い人なのか、突然怒り出す人なのか、よくわからないこともある。

キレキレの類語は、キビキビ、サクサク、シャキシャキといったところか。反対語は、グズグズ、ダラダラ、グダグダ......。後者は、明らかにネガティブでやる気のない言葉だが、逆に人間らしくもあり、誰だってこういう時があっていいのだと思う。ふだんグダグダな人が、思いがけない場面でキレキレな動きを見せた時、私たちは、そのギャップに感動するのである。
キレキレは身を守る
先日、飲み会の席で、60代のM氏が誤ってフォークを落とした。よく食べ、よく飲むM氏は、かなり酔っ払っていたのだ。しかし彼は、ろれつの回らなさとは裏腹なキレキレの身のこなしで、フォークが落下する寸前に見事にキャッチし、事なきを得た。瞬時に体勢を立て直し、再び食べ始めたというそれだけの話だが、一連の動きの鮮やかさに、おっと思ったのは私だけではなかった。次の瞬間には「今のMさん、カッコよかったね!」と賛辞が飛んだのである。

落としかけたフォークをキャッチしただけで、まさかの声援と拍手。聞けば、M氏は日頃からジムに通い、週末にプレイするテニスやゴルフも相当な実力という。グダグダ飲んでいるだけの人に見えても、思わぬ瞬間にトレーニングの成果は現れるものなのだ。

ほかに、キレキレなビジネスマンの技を目にする場所といえば駅。階段を超高速でタタタタと駆け降り、発車ギリギリの電車に魔法のようにすべりこんだり。ただし迷惑をかけてはダメだ。私は昨日、駆け込み乗車してきた人の鞄のストラップから飛び出た金具に後頭部を直撃され、降車後には、ホームを急ぐ人のキャスターバッグに足をひかれたばかり。散々だが、ぼーっとしている自分も悪い。身に降り注ぐ危険はキレキレな動きで回避し、ついでに他人を助けるくらいのことをしなくては。
書きっぱでゴメン?
「キレキレ」には、実はもう一段階高いレベルがあり「キレッキレ」「キッレキレ」などと表記される。「ッ」という促音(つまる音)がキレキレ度を強調するというわけだ。促音を効果的に使った言葉としては「切りっぱなし」というのもあり、投げやりな語感が涼しげでいいなと思う。「裾が切りっぱなしでアウターにひびきにくい下着」や「毛先をいじらない切りっぱなしのボブ」などは、今シーズン大人気である。

しかし、涼しげな「切りっぱなし」をさらに略した「切りっぱ」という言い方はどうか。この手の言葉は、語感が良すぎて感染力が強く、いつのまにか「切りっぱ」にとどまらず、「電話かけっぱでゴメン」「今日は立ちっぱだった」「こんど打ちっぱ行こうよ」なんて頻繁に使われている。

あけっぱ、つけっぱ、置きっぱ、借りっぱ、言いっぱ、聞きっぱ、言われっぱ、聞かれっぱ......列挙するだけで、なんとなくイラッとくるのはなぜ? この言い方、いくらなんでも無邪気すぎ、無責任すぎなのではないだろうか。ビジネスの場では、「切りっぱ」くらいまでに留めておいたほうがいい。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ワイン、イタリア、ランジェリー、映画愛好家。
好きなネット用語は「パンくずリスト」。自分が今どこにいるのかを示す階層表示のことだが、ヘンゼルとグレーテルが森で迷子にならないよう通り道にパンくずを置いていったエピソードに由来すると知り、キュンとした。

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