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美の流儀

2017年2月15日

語り/島崎信(武蔵野美術大学名誉教授
NPO法人東京・生活デザインミュージアム理事長)

HEART

【番外編/学びと美を考える】

時間と共に増す美しさと機能

「美」をコンセプトにした学びの場、ワコールスタディホール京都と連動した美の流儀【番外編】。今回は、「美しい暮らしのかたち」の講座を受けもつ、武蔵野美術大学名誉教授、NPO法人東京・生活デザインミュージアム理事長の島崎 信先生がご登場です。 島崎信さん ――第1回の講座「美しい暮らし方のすすめ」が好評のうちに終了しました。ここで先生がお話しされていた「デザイン」について、改めて教えてください。

「デザイン」というのは、物の形だけでなく、目的を達成するための「仕組みづくり」までを含みます。講座ではしょうゆ差しの話をしたんですけどね。しょうゆを注いだとき、漏れてしまったり、ふたが落ちてしまったり、ということは、「デザインしていない」ということなんです。また、「国をデザインする」という使い方もします。よく、北欧がデザイン大国と言われますが、それは物だけでなくそこに住む人のための制度がデザインされていることの表れでもあるのです。所得税も消費税もたいへん高いけれど、学費から医療費、年金まですべて保障されていて、住む人の満足度も高い。

――またこれからの講座の中では、先生ご自身の暮らしについてもお話しが聞けるとあって、とても楽しみです。

私は、東京の住まいのほかに、財団理事長をつとめる太鼓の芸能集団『鼓童』(こどう)がある佐渡、そして最近始まった京都の町家での住まいを、体験しています。その土地に住んで、季節のにおいや風を感じることが大事で、四季の変化もそれまでと違って感じるし、地元の方もレジデント(居住者)として接してくれる。それはツーリスト(観光客)で行くのと大きな違いです。40数年前から海外を含め、さまざまな土地を行き来していますが、メモ用紙だけ持っていけばどこでも仕事できます。

――第4回の講座では、進行中の京都の町家暮らしについて、さらに詳しくお写真を見ながらお聞きする予定です。

「小さな不便を楽しむ生活」とよく言っているのですが、88年前にできた町家は、それだけではなく大きな不便もたくさんありました。コンセントが足りない、壁は聚楽壁(じゅらくかべ)でカレンダーひとつ飾れない、そして寝室のある2階にトイレがない...など。ただ、文句を言っているだけではダメだから、21世紀なりの町家暮らしの知恵を出そうと思っているところです。不便なところは直し、北欧の家具を置いて椅子の生活にして。そうやって、システムをつくっているところです。 二十四節気手帳 ――町家も北欧の家具も、長い歴史のあるものばかりですが、そういったものの魅力はなんでしょうか。

自然の素材を使ったものは、時間の経過とともにその素材なりの美しさが出るものです。木の種類で異なりますが、多くは80年から120年たったころが、美しさも強度も最も増すのです。自然の素材でできたものは、自分の人生よりももっと長い、何世紀にもわたる長い時間の中に生きているわけです。

――時間が長く経過した「物」は、機能も美しさも増すというわけですね。

日本語で「古い」という言葉は、時間が経過していることをさしますが、同時に「質が悪い」という意味も含まれることが多い。対して「新しい」というと、質も良い、というような。果たして、そうでしょうか。新しい、若いというのは、人でいえば成熟していなくて、ときには愚かさと同居していて、知識も少ない。そう僕は解釈します。

「古い」「古典的な」を英語で「Classic(クラシック)」といいますが、この第一の意味は「第一級の」「最高水準の」なのです。第一級の物は、時代や国境を超えて、今に伝わり、人の心に響きます。「古い」なんて言葉で片づけずに、そこから学ぶことはたくさんある。僕が、歴史ある京都で暮らしてみようと思う理由もそこにあります。

そしてみなさんに知っておいていただきたいのは、「すべての物には、魂がある」ということ。家や家具はもちろん、カップやペンひとつにだって、命がある。そして、それを自分が選んだということは、その物の命と「縁を結ぶ」ということ。物を大事にする、すなわち物の命をまっとうするということは、縁を大事にし、ひいては自分自身を大事にする、ということでもあるのです。断捨離なんて、いかに物を安っぽく、つまり自分自身を粗末に扱っているか、ということですよ。

――では、先生が物を選ぶときの基準というと?

それは、ブランドでも値段でもなく、「僕がいいと思うもの」。だれかが持っているからとか、「似合う」とすすめられたからとか、そんな理由で、物と縁を結ぶわけじゃない。これが、自分を「デザインする」ということにつながるのです。

島崎信 武蔵野美術大学名誉教授、NPO法人東京・生活デザインミュージアム理事長
東京都出身。1956年東京藝術大学美術学部卒業。1959年デンマーク王立芸術アカデミー建築科修了。 北欧デザイン研究の第一人者であり、生活デザインの提唱者として国内外でインテリア、プロダクトデザインに関わるほか、家具、インテリアデザインの展覧会やセミナーの企画も多数手掛ける。 日本フィンランドデザイン協会理事長。北欧建築デザイン協会理事。鼓童文化財団理事長。有限会社島崎信事務所代表。NPO法人東京・生活デザインミュージアム理事長。主な著書に『デンマーク デザインの国』『美しい椅子1〜5』など。

ワコールスタディホール京都

取材・文/南 ゆかり

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