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美の流儀

2016年12月21日

語り/千種清美(文筆家・脚本家・大学講師)

HEART

【番外編/学びと美を考える】

自然の美にかなうものはありません

「美」をコンセプトにした学びの場、ワコールスタディホール京都と連動した美の流儀【番外編】。今回は、伊勢神宮に関するエキスパート・文筆家であり、俳句を日々楽しんでいる千種清美さんが登場します。

――まず、千種さんが俳句を始められたきっかけを教えてください。

三重県の伊勢で雑誌編集者をしていたとき、編集長になるのをきっかけに、もっと語彙を増やしたいと思ったことでした。初めは何もわからないながらもつくってみたら、俳人の黛まどか先生が佳作に選んでくださって、うれしくなって、どんどんはまっていきました。 千種清美さん ――どのように上達されていったのですか?

まず歳時記を買って読み、そして外に出かけて景色を意識して見るようにしました。そうすると、同じ場所でも季節によって見えるものが異なり、言葉の表現もいろいろあることがわかります。たとえば風は季節で感じ方は異なり、その表現は早春なら「風光る」、初夏だと「風薫る」という季語で表されます。また、冬の気候だけでも、「小春」「冬ざれ」「短日」...というように、細かく使い分けられています。

私は雑誌の原稿を書くとき、こうした季語をさりげなく織り交ぜて使ったりするようになりました。ほかにも、人と挨拶をするときに、「今日はいい小春日和ですね」「木枯らしが吹きましたね」などと、季語が会話のきっかけにもなります。

季語には、自然はもちろん、色やお料理などに関する言葉もたくさんありますし、「日記買う」(冬の季語)なんていうのもあるんですよ。基本的なものだけで6000語あると言われています。全部を覚える必要はありませんが、季語を知り季節感を知ることは、自分を磨き、日々を豊かにするきっかけになります。さらに、自然をリスペクトすることにつながり、これは日本人として大事なことだと思います。日本人はもともと自然信仰が根源にあり、自然の中に神様の存在を感じていたのですから。

――季語を知ることは、俳句のためだけでなく、日本人的な信仰の気持ちをもつことや、コミュニケーションツールになるのですね。それを、今回のワコールスタディホール京都では、どのように学んでいくのでしょうか。

6回のシリーズをとおして、季節に関わる言葉を知りながら、俳句をつくっていきます。教材として、ご自分で書き込んでいく形の二十四節気手帳を使います。この手帳には、季節ごとの解説が書いてあるのですが、メモ欄を大きくつくってあって、新しく知った季語や感じたことなどをメモできるようになっています。それを継続して、6冊集まったら刺繍糸で綴じて、ひとつの手帳にまとめます。後で読み返したとき、そこにある言葉を使ってさらに俳句をつくることもできます。季節の備忘録として活用していただければ、うれしいです。 二十四節気手帳 千種さんが講師をつとめる講座「黛まどか監修 俳句で感じる二十四節気 〜京都に息づく美〜」 の教材「二十四節気手帳」。6回の講座終了時には和綴じで一冊に仕上げる楽しみも。
※写真は制作途中のもののため、実際の手帳とは異なる場合がございます。
――その学びを、季節の行事や風習が残る京都で受けることにも、意味がありそうですね。

昔から多くの俳人が京都を訪れ滞在し、行事やお祭りを俳句に詠み込んできました。伝統行事の多くが現在も残っていますし、神仏に対する敬いがある。生活の中に自然の移ろいも取り入れられている。そんなところが私は大好きです。

京都以外の方は、全6回の受講タイミングで京都を訪れて、季節の行事を見て行くなんていうのも、いいかもしれません。また受講できない方でも、日常の中で日記代わりに季節の変化や気づいたことをメモしておくことは、おすすめします。

――季節を意識すること、知ることは、忘れがちだけれど、とても大事なことなのですね。

自然の移ろいはそれ自体がとても美しく、自然の「美」にかなうものはありません。どんな一流のアーティストでも、自然をつくり出すことはできません。その代わり、自然にある曲線や色からヒントを得て、芸術を生み出すことはできます。ほかにも料理人や文を書く人など、何かを「つくる」「生み出す」ときに、自然と関わり敬うことは欠かせないことなのです。ぜひみなさんも、日常の中で自然を意識し、言葉を知る楽しみを体験してみてください。世界が広がり、心が豊かになるのがわかるはずです。 千種清美さん

千種清美 文筆家・脚本家・大学講師
三重県津市生まれ。実践女子大学卒業。雑誌編集長などを経て独立。新幹線車内誌に「永遠の聖地、伊勢」を8年にわたり連載、出版する。著書は『女神の聖地、伊勢神宮』(小学館新書・全国学校図書館協議会選定図書)ほか。二度におよぶ式年遷宮取材やメディアへの露出で、伊勢神宮のエキスパートの評価を得るが、もともとは俳句、旅、美しいもの、おいしいものが大好きで、素敵な暮らしを追いかけてきた。現在は『お伊勢さん』『芭蕉が詠む祈りのこころ』(KBS京都・BSフジ等放送)の全脚本の担当など、著作だけでなく、皇學館大学文学部非常勤講師、テレビコメンテイターなど活動の場を広げる。

ワコールスタディホール京都

取材・文/南 ゆかり
撮影/平賀 元

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