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美の流儀

2016年9月28日

語り/兼松佳宏(勉強家)

HEART

【番外編/学びと美を考える】

「学ぶ」ことは「情熱を傾ける」こと

2016年10月、「美」をコンセプトにした、新しい「学びの場」、ワコールスタディホール京都がオープンします。そこで、美の流儀の番外編は【学びと美を考える】をテーマとして、ワコールスタディホール京都と連携した、インタビューをお届けします。
初回は、「勉強家」という肩書きをもち、「スタディホール」の役割を研究しつつ広めている兼松佳宏さんが登場。兼松さんが感じている「学び」とは。そして「美」の関係とは。 兼松佳宏さん ――まず、兼松さんの肩書き「勉強家」について教えてくだい。

大学を卒業してから、Webデザイナー、クリエイティブディレクター、編集者などを名乗ってきましたが、どれもまだまだアマチュアだし、自分の仕事として誇れるものがないことをコンプレックスに感じていました。ただひとつ誇れるのが、「仕事を通じて勉強するのが好きだ」ということ。ならば、「プロの勉強家」になろう。そう決めて、中途半端な自分を肯定するためにできた肩書きです。初めて耳にする方が多いので、講演会などで肩書きを読み上げていただくとき、名刺を交換したとき、「は?」みたいな空気になるのが、けっこう面白いんです(笑)。

――兼松さんのように、大人になってから「自分は何が誇れるのか」「何ができるのか」、立ち止まって考える人は多いようです。

僕は2016年4月から京都精華大学人文学部で特任講師をやらせていただいていますが、学生のうちに何がやりたいか、何が好きか、定まっている人ってそれほど多くないように思います。だから社会に出てから、好きなことをもう一度学び直したいと思うのでしょう。社会人のための学ぶ選択肢が増えているのは、とてもいいことだと思います。今では「◯◯大学」のような市民大学も増え、センスの近い仲間と出会ったり、新しい世界を発見するための最初の一歩としては素晴らしいと思います。その上で、さらに何かを探究していきたいとすれば、物足りなさがあるのも事実です。もっと奥深い、自分の人生をかけて勉強し直すような、いわば「◯◯大学院」のような場が、もっとあったらいいなと考えていました。

――そういうときに役立つのが「スタディホール」なのですね。

そうです。そもそも「study(勉強する)」の語源は「studiam(情熱)」で、「student(生徒)」といえば、「情熱を傾けている人」をさすのだそうです。だから、これまでの「勉強」の意味を拡張して、それぞれが情熱を傾けていることを、堂々と、安心して、自由に、共有できる場があったらいい。そんな空間・時間をつくる手法を「スタディホール」として提案しています。もともとは「自習室」や「自習時間」を意味する言葉なのですが、教室を飛び出して、公園でも電車の中でも、どこでも勉強の場にすることができるんです。そしていちばん重要なのは、勉強が習慣になること。そこで "勉強習慣アドバイザー"という資格を生み出して、さまざまな勉強のサポートをしていくことが理想です(笑)。 兼松佳宏さん ――いちばん初めに「スタディホール」を思いついたきっかけは?

きっかけをくれたのは、僕の妻の兼松真紀さんなんです。もともとシナリオライターとして活動していて、「サンタのよめ」という自分のプロジェクトも展開するくらいアクティブだったのですが、子育てを機に仕事から離れたことで、自信を失ってしまっていたんですね。そこからもう一度踏み出そうとしたときに、彼女はハーブの勉強を始めたんです。寝かしつけが終わった後も没頭していて、頭がさがるくらいでした。今ではハーブの知識ともともとの物語を生み出すスキルをいかして、大人から子どもまで自然の力を楽しく学ぶことができる「魔法茶会」というイベントを始めました。

そのとき改めて僕は気づいたんです。情熱をもって勉強に向かっている横顔が、本当に「美しい」ということに。仕事のように成果を問われると、「まだまだ...」と遠慮してしまいがちですが、結果にはあまりこだわらず、プロセスを大事にするのも「スタディホール」で大切にしたいことなんです。おこがましいですが、「自分なんて」と自分の可能性に自分で蓋をしている女性も多いように感じています。スタディホールを通じて、小さな一歩でもいいので、女性の挑戦が増えていくといいなと思います。 学びと美を考える ――ワコールスタディホール京都で兼松さんがファシリテーターとなる「わたしだけのマイプロジェクト探究ラボ」が、目指していることとも重なりますね。

僕の話なのですが、高校生のときにファッションデザイナーに憧れていたんです。そのときは本気で目指すことはありませんでしたが、今になって周囲を見てみれば、「あの人に相談したらもしかしたら...」みたいに具体的なイメージが沸くんですよね。その頃の夢を追いかけるように、僕は「男性向けのパジャマブランド」を始めようとスタディをしています。すると、オーガニックコットンを使ったアパレルブランドの方に興味をもっていただいたり、福祉関連の人から「高齢者向けにニーズがあるかもしれない」というヒントをいただいたり。経験を重ねたからこそ、あのころの夢を実現できる確率は、確実に高まっていると実感しています。

――そんなふうに、この講座が受講者にとって「かつての夢」をもう一度追求する場になったら素敵です。

受講者のみなさんが、まずは「本当は何がやりたかったんだろう」と自分を振り返ったり、棚卸ししたりするきっかけにしてもらえたら。かつてあきらめた趣味でもいいし、眠っている夢でもいい。もちろん仕事と関係ないことでも大丈夫で、自分の中の悩みごとや葛藤も大事な種になるんです。それを大切に育てながら、仲間と共有することで、自分らしいあり方を見つけてゆきたいですね。

無心に情熱を傾け、勉強をする中で、「自分にも可能性がある」と気づいたときの、輝くような美しさ。それにかなうものはないと僕は思っています。

兼松佳宏 勉強家、「everyone's STUDYHALL!」発起者、京都精華大学人文学部 特任講師、元「greenz.jp」編集長。1979年生まれ。ウェブデザイナーとしてNPO支援に関わりながら、「デザインは世界を変えられる?」をテーマに世界中のデザイナーへのインタビューを連載。その後、ソーシャルデザインのためのヒントを発信するウェブマガジン「greenz.jp」の立ち上げに関わり、2010年から2015年まで編集長。2016年フリーランスの勉強家として独立。京都精華大学人文学部 特任講師、勉強空間をリノベートするプロジェクト「everyone's STUDYHALL!」発起者として、教育分野を中心に活動中。
著書に『ソーシャルデザイン』、『日本をソーシャルデザインする』、連載に「空海とソーシャルデザイン」など。秋田県出身。京都府在住。一児の父。

ワコールスタディホール京都

取材・文/南 ゆかり
撮影/合田慎二

※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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