新訳からだ辞典「パンツ一丁」

2016年9月28日

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

HEART

今月のコトバ「抜け感」

今月のコトバ「抜け感」
突破口が求められている?
抜け感という言葉を、近年、女性誌などでよく見かけるようになった。「抜け感のあるスタイル」「抜け感メイク」など、とらえどころがない曖昧な言葉だけれど、今の時代が求める気分を表しているなと思う。先行きの見えない経済や社会を言い表す「閉塞感」の反対語といっていいだろう。

周囲のおしゃれな人たちに「抜け感って何?」と聞いてみたら「スーツだけど足もとはスニーカーや下駄で外す、みたいな」「巻きすぎないユルフワな髪」「手首、足首、鎖骨を見せること」という答えが返ってきた。ばっちり決めすぎず、適度に力を抜いた自由なスタイルといったところか。

大辞泉には「抜け」「抜ける」の用例として「抜けの良いスピーカー」「抜けの良いレンズ」「抜けるような青空」「抜けるように白い肌」などが挙げられている。すっきりとして遮るものがなく、音や光をよく通す意味だなとわかる。なんて気持ちのいい表現だろう。一方では「間抜け」「腰抜け」「気の抜けたビール」などの用例もあるわけだが、そっちの意味は置いといて。
抜け感は手を抜けない
抜け感のポイントは、からだ全体から放たれるトータルな雰囲気だと思う。風を感じるナチュラルなリラックス感と、着くずしつつもダラけすぎない絶妙なバランス感。基本的に、きちんとしていなければ力を抜くことはできないのだから、おそらくノーメイクやノーブラではダメなのである。

手を抜くだけなら簡単だけど、抜け感には洗練された高度なテクニックが必要なのか。最近は「大人の抜け感」「こなれた抜け感」「アンニュイな抜け感」がトレンドだそうで、ますます難易度は高くなってくる。

このような引き算のセンスは、年齢とともに培われていくものかもしれない。たとえばYシャツの着こなしを見ても、新入社員と先輩社員では違う。新人はシャツのボタンをぴしっと上まで留めているが、先輩はさりげなくボタンを1つ2つ外して、いい感じの抜け感を出している。逆におっさんになると、ナルシスティックに胸をはだけ過ぎ、嫌がられる場合も多いですが。
パンツがきれいという抜け感
アンニュイな抜け感といえば、小松奈々(20)と桃井かおり(65)が思い浮かぶ。どちらも個人的に大好きな女優さんだが、2人の年齢差に希望を感じる今日このごろ。「カワイイ」や「セクシー」には、年齢制限のプレッシャーがついてまわるが、抜け感は年齢不問。一生涯、堂々と追求しようではないか。

桃井かおりは、53歳で自分がやりたかったことを見つめ直そうと、海外の映画のオーディションを次々と受け始めたそうだ。単身で渡米し、ホームレスを相手に英会話を学び、移住した。昨年は結婚もし、64歳にして5本の映画に出演したが、すべて海外で撮影されたインディーズ映画。今夏公開された『火Hee』では監督、脚本、主演をこなし、映画の中で使われた魅力的なイラストも自作だという。ベルリン国際映画祭のワールドプレミアでは「私は本当にいろんな才能を持っているんですよ」と言って会場を湧かせたのである。

肩肘張らずにこんなことが言えるのは、まさに抜け感のお手本。昨年、化粧品のイベントで、ご自身の美のテーマを「パンツのきれいな女」と表現していたのも記憶に新しい。お風呂に入りながら、ゆっくりと化粧を落とすことと下着を洗濯することの2つは、19歳でデビューしたときからずっと続けているんだって。抜け感の神髄は、案外この辺にあるのかもしれない。

ところで、おしゃれな友達と抜け感の話をしていたら、アクセントが違うことに気がついた。私は「ヌケカン」の2文字目の「ケ」を高く発音していたが、彼女は「ケ」「カ」「ン」をすべて高く発音していたのである。明らかに彼女のほうが抜け感のある発音で、なんだかすごく恥ずかしかったです。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ランジェリー、映画愛好家。最近いいなと思ったのは、映画「暗くなるまでこの恋を」で妻(カトリーヌ・ドヌーブ)の裏切りに気づいた夫(ジャン=ポール・ベルモンド)が、彼女の下着を次々と暖炉で燃やすシーン。

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