生きるためのボディ&ソウル。鍛えれば、人生きっといい感じ

湯山玲子の「人間はカラダだ!」

2016年2月10日

文/湯山玲子
イラスト/腹肉ツヤ子

HEARTBEAUTY

【特集/食とエイジング】

前向きエイジングのための思想のコツ

前向きエイジングのための思想のコツ
200歳まで寿命があると考える
寿命と年齢を重ねることに対して、目からウロコが落ちるような発言を読んだことがある。それは「もし、自分の寿命が平均寿命の二倍だったとしたら、今から始められることはたくさんある」というもの。
確かに私たちは70歳から100歳ぐらいに死ぬと思っていて、そこから逆算して今を考えるから、「今さら、これをやってもしょうがない」と、行動のブレーキをかけてしまいがち。しかし、死はもしかして明日我が身に降りかかるかもしれない。すなわち、どうせ予測できないのならば「寿命は200歳なので、私には充分に時間がある」と前向きに人生を生きた方がいい。そう思うだけで心の余裕ができるという、考え方の転換だ。
"年相応"など念頭に置かない
高齢化社会の影響なのか、ニューヨークのファッショナブルな60歳オーバーの女性ばかりを取材した映画『アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生』が昨年春に公開されて話題を呼んだ。今春には、引き続いて『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』という、インテリアデザイナーで、実業家でもある個人のファッション・コレクションの展覧会が、メトロポリタン美術館で開催されるまでとなった女性のドキュメンタリー映画が公開されることになっている。
映画に登場する女性たちは、年相応などということはハナっから念頭にない。強烈な個性にあふれ、そしてとっても似合う装いで老境を生きている。つくづく思うのは、そこには自分と社会とを切り結ぶ、自立心と心の筋力が強烈にあるのだなあということ。アイリスのトレードマークは大きなトンボメガネと、首や腕にふんだんに纏ったコスチューム・ジュエリー。ときおり車椅子を使うようなご老体になっているのにもかかわらず、それらを平気で装い続ける。それらを着る喜びのほうが「面倒くささやしんどさ」に勝っているわけで、ここらに理想のエイジングの鍵がありそうだ。
若返りを目標にしない
いやはや最近とみに感じるのが、歳を重ねることとは「面倒くささとしんどさ」との戦いだということ。そこに抗うために、みなさんサプリを飲んだりジョギングをしたりしているが、そういう人たちがかえって年相応に取り込まれてしまっているのは、アンチエイジングそのものが目的化してしまっているからだろう。一方、アイリスをはじめ、映画の老年ファッショニスタたちの欲望はそこではなく、「今日の私が、私が考えたバッチリの服装をして人の前に立てばカッコよくて楽しい」という純粋な快楽の方。「いつも自転車よ。着ている服を見せびらかせる」と62歳の女性は、まるで1950年代の女優のような、全身白の装いとサングラス姿でストリートを疾走していくが、その境地ってことです。
「今したいこと」に焦点を当てる
アンチエイジング派は、歳を取りたくないと努力する。よく「孫の結婚式までは元気でいたい」などとがんばる人たちがいるが、そういった消化試合モードぐらいでは、だんだん増幅していく「面倒くささとしんどさ」には勝つことは難しい。一方、アイリスは車いすを押してもらい、アクセサリーの問屋倉庫に行き、目利きバイヤーのようにショッピングを楽しむのだが、「できれば週一回はこれをやりたいわねえ」と、さらっと言い放つ。
94歳になったときに、そう言える行動対象をもち続けられるかどうか。すでに今から、そういった心の準備をしておいた方がいい。

ゆやま・れいこ 著述家、ディレクター。自ら寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック」を主宰するなど、カルチャー界を牽引。著書に『四十路越え!』(ワニブックス)、上野千鶴子氏との共著に『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)がある。

構成/本庄真穂

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