生きるためのボディ&ソウル。鍛えれば、人生きっといい感じ

湯山玲子の「人間はカラダだ!」

2015年7月15日

文/湯山玲子
イラスト/腹肉ツヤ子

BODYHEART

【特集/いい汗悪い汗】

ここでひとつ、体臭について考えてみる

ここでひとつ、体臭について考えてみる
エアコンよりも扇風機が売れている
「不快なモノやコトをなるべくなくすべくサービスを提供していく」というのが、資本主義のDNAだとするならば、汗をかくほどに暑い環境はどんどん身の回りからなくなっていくことになる。しかし今度は「夏なのに汗をかかないことが自分自身の身体を壊す」というマックス不快な事実がわかると、人は率先して汗をかくようになる。
クールビズは、省エネとともに「夏に汗をきちんとかかないと身体がヤバい」という実感からも支持されたキャンペーンだった。実際、家電売り場に行くと、かつてはバリバリ時代遅れ感のあった扇風機が、例のダイソンの物理実験器具みたいなものから、卓上で顔に当てる小型のモノまで百花繚乱だ。

この時期の"はおりもの臭"に注意
汗の不快さは、その匂いにもある。夏の日常、何も大汗までかいていなくても、身体にはうっすらと体温調節のための汗がしみ出ている。基本、肌に当たる洋服は、小まめに洗濯して清潔にしなければならない。なので、みんながシャツやブラウス姿になる盛夏においては、案外「汗臭さ」は退けられるのだが、ちょっと肌寒く、ジャケットも着用するような梅雨時期のほうが実は要注意。なぜなら、この時期の満員電車におけるみなさんの体臭のキツさは年間最高だという実感が私にはあって、梅雨以前、年によっては真夏日のような日差しが続くゴールデンウィークあたりから、ソレは際立っていく。
なぜならば、ジャケットには汗が充分しみこんでいるのに、シャツほどは洗わないから。たまに、くさやの干物のような匂いをまき散らしているサラリーマンがいるが、それは「昨夜の焼き肉屋の脂とタバコの煙」+「満員電車の汗のフレーバー」が、ジャケットの上で恐るべき化学反応を成し遂げてしまった結果。他人にとっては、毒ガス並みの匂いのキツさに当人が気づかないのは、汗のフレーバーが自分の体臭の一部だからである。人間はとかく、自分に甘くて他人に厳しいのだが、その最たるものが「自分の体臭」かも知れない。
恋人の匂いは好きですか?
というわけで、申し訳ないが、私は汗の季節に自分の汗ばんだ脇の下の匂いを嗅ぐのがキライではない。スヌーピーのライナスのように、幼い子どもがお気に入り毛布を手放さないのも、自分の匂いが自分を一番落ちつかせることを知っているからだ。面白いのが、自分の汗の匂いには前日の食べもののフレーバーが混じることがあるのだ。最もわかりやすいのが、インドカレーを食べた翌日の脇の下は、ハッキリとカレーの匂いがする。
私は海外で仕事をするときに、時差ボケ解消に現地のサウナに行くことにしているが、そこでは石鹸の匂いに混じって、必ずその国のエスニックフードの匂いが感じられるのに驚いたことがある。香港では煮込みなどに多用される八角の匂い、インドはカレー、そしてモロッコのハマムは羊臭さがあった。それらは明らかに「自分の民族と違う汗臭さ」であり、気をつけないとそれはすぐに排外主義に結びつくということを忘れてはいけない。私たち日本人だって「お醤油臭い体臭」を自分がわからなくても、もっているはずなのだから。
男女の関係も、「なんだか、今回の彼氏の匂いは落ち着く」というような相手がいたら、それはもう最高の相性と言っていいだろう。「婚活パーティに匂いテストのようなものを取り入れてみたら?」と思ったが、現実味はないなぁ。

ゆやま・れいこ 著述家、ディレクター。自ら寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック」を主宰するなど、カルチャー界を牽引。著書に『四十路越え!』(ワニブックス)、上野千鶴子氏との共著に『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)がある。

構成/本庄真穂

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