生きるためのボディ&ソウル。鍛えれば、人生きっといい感じ

湯山玲子の「人間はカラダだ!」

2015年5月13日

文/湯山玲子
イラスト/腹肉ツヤ子

BODY

【特集/いい汗悪い汗】

汗かきから逃げていると、ろくな大人にならないぞ

汗かきから逃げていると、ろくな大人にならないぞ
麻婆豆腐でわかる、汗のかき方十人十色
原宿に「もんの凄く辛い麻婆豆腐」を出す『東波(トンポー)』という店が、昔からある。
中国系と思われるおかみさんが「皆さん、よく食べますねぇ」というその辛さは、本当に食べている間中、辛さとの格闘で頭にほかの想念が入り込む余地がないので、実はみなさん、ストレスリダクションに利用している形跡アリアリ(こうなると麻婆豆腐は、食べる座禅や写経のごとし!)。唐辛子の辛みに山椒の痺れが加わった、四川料理のその辛さは世界最強だが、それでも食べ終わったあとにどんよりするのではなく、嘘のような爽快感がやってくるところがこのひと皿の魅力。そして、この麻婆豆腐食いで面白いところは、ソレを食べて「汗みどろになる人」と「そうでない人」が、はっきりと分かれるのである。
顔を病的なまでに真っ赤にして、滝のような汗をかき、フーフー言っている男子の横で、同じく辛さに悶絶しているのにもかかわらず汗のひとつもかかない女。この店で展開される「麻婆豆腐人体実験」を見るにつけ、人間の身体は本当に個性豊かだと驚いてしまう。ちなみにこの傾向、滝のような汗派は圧倒的に男性が多い。申し訳ないが、頭の毛が寂しいことになっている、いわゆるハゲ男性の汗みどろ実数は高く、ある男性のビカピカの頭に湯気が立っていて、肉まん状態になっているのを私ははっきりと見た(ような気がする)。
お嬢さん、夏のクーラーにご用心
出すことによって体温を下げ、身体の平衡状態を保つのが「汗」だが、人間にとって不快なことをどんどんサービス化して、取り払ってくれる高度資本主義の世の中のおかげで、だんだんとその出番がなくなってきてもいる。風邪をひくと身体は体温を上げて、全力で菌を殺そうとするが、それも解熱剤で阻止してしまい、汗が出る幕はない。夏のクーラーはもっと罪深い。なぜなら、それは汗の出番をゼロにしてしまうから。私はサラリーマン時代、「家では寝るだけ。あとは全て会社」という多忙のひと夏を過ごしたことがあるが、その夏はギンギンに冷えた冷房のおかげで、夏なのにセーターを着ていたほどだ。で、体調はどうだったかと言えば最悪。その夏中、風邪をひき続けていた記憶がある。
「近ごろ、いい汗かいてるかーッ」
ちなみに、先ほどの麻婆豆腐の例で言えば、私はあれだけ辛いシロモノを食べても一筋の汗もかかない方。その体質の上に、より汗をかかない環境に甘んじていては、絶対に身体に良くない、という思いから、現在は「不快でも汗をかこうぜ」モードを心がけている。
まず、寝るときのクーラーはまずつけない。これは昨今の日本の猛暑の中では殺人的行為だが、扇風機、冷感ジェルが入ったシーツで暑さ対策ができることを発見。朝になると、夏ならば当然の汗をかいていて、明らかに「冷房つけっぱなし寝」よりも身体が軽いのは、まさに寝汗さまさまという実感がある。
汗の不快を嫌う者は、結局、何十倍もの不快がやってくる。汗は努力や苦労のメタファーだが、そこから逃げているとロクな大人にならない、という実感ともオーバーラップ。
「近ごろ、いい汗かいてるかーッ」という松岡修造モードは、人間のいろんなところの真実なのだ。

ゆやま・れいこ 著述家、ディレクター。自ら寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック」を主宰するなど、カルチャー界を牽引。著書に『四十路越え!』(ワニブックス)、上野千鶴子氏との共著に『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)がある。

構成/本庄真穂

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