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教えて、ドクター!

2015年5月20日

先生/上田由紀子(ニュー上田クリニック 院長)

BODY

【特集/いい汗悪い汗】

「汗っかき」は3歳までに決定する!?

「汗っかき」は3歳までに決定する!?
微妙な体温を精密に調整する汗
汗によってメイクが崩れたり、衣服に汗ジミがついたり、汗のニオイに敏感になったりと、美しさにマイナスの陰を落とす反面、お肌のツヤや輝き、新陳代謝にはいい汗をかくことが必須だったりと、美にプラスの作用も多くある"汗"。汗と美しさには、いったいどのような関係があるのでしょうか。その謎を知るべく、まず初回は、汗の役割や汗の種類など基本的なことをニュー上田クリニックの院長、上田由紀子先生に教えていただきます。

「汗は皮膚にある汗腺から分泌される液体のことで、その汗腺には2種類あります。口唇と亀頭以外のほぼ全身に分布するとされる"エクリン腺"と、からだの中でも特定の部位に存在する"アポクリン腺"。私たちが一般的に『汗が出る』と言うときの汗、エクリン腺から分泌される汗について説明しましょう。

エクリン腺から出る汗のいちばん大きな役割は、"体温を調節すること"。ただし、この場合の体温とは、脇の下や口の中などで計る深部体温のことではありません。風邪を引いて、深部体温が上がったといって汗をかけばすぐに平熱に戻るわけではありませんよね。いわゆる『熱がある』というときの"お熱"をさすのではなく、汗はもっと皮膚表面の微妙な体温の差を調節しています。

汗をかくと、汗の水分が皮膚の上で蒸発して熱を奪うことで、皮膚表面の体温が上昇するのを防ぐ働きがあります。気温が高い夏に汗をかいたり、運動をした時に汗びっしょりになるのも体温調節のための汗といえます。このような体温調節のための発汗は、"温熱性発汗"と言います。

ほかにも、辛いものや酸っぱいものを食べたときなど『辛い〜』とヒーヒー言いながらかく汗を"味覚性発汗"と言います。辛いものを食べると体温が上がって汗が出ますから、味覚性発汗も体温調節に関与する発汗と言えますが、このときの汗は出る場所に特徴があります。鼻のあたまや上唇のうえの溝のあたり、すごく辛いときには顔全体にも汗をかきますが、主に食べる箇所に近いところに汗をかきます。

さらに、汗の種類には"精神性発汗"と言われる緊張をしたときやストレスがかかったときにかく汗もあります。『手に汗にぎる』という言葉にも現れる、あのイヤ〜な汗のことです。
汗腺にはこんなにも個人差が!
エクリン腺の総数はひとりにおよそ300万個、1平方センチメートルの皮膚に130〜600個も存在しています。130個と600個ではずいぶんと数が違うじゃないか、と思われるかもしれませんが、実際、汗腺の数には相当な個人差があるのです。

汗腺の数は、幼少期にほぼ決定します。だいたい3歳ごろまでと言えるでしょう。子どもと大人ではからだや頭の大きさは全然違うのに、汗腺の数は同じということ。子どもが汗っかきなのもうなずけますよね。皮膚にある汗腺の密度が子どもは高いのです。

汗腺の数は、汗腺が形成されるときの環境が大きく関係しています。暑い場所で育った子どもは、たくさん汗をかいて体温調節しながら環境に対応するため、汗腺も発達しやすく、逆に寒い地方で育つと、汗腺は少なくなると言われています。

大人になっても汗腺の数は増えないわけですから、幼少時代と大人で暮らす場所やその気候などが変わると、なかにはうまく対応できない人もいます。幼少期は寒い地方にいて、大人になってから暑い場所に引っ越すと、うまく汗がかけず"暑さに弱くなる"可能性も。

一生を通して活動するエクリン腺に対して、もうひとつの汗腺であるアポクリン腺の活性時期は、思春期から40代半ばくらいの間に集中しています。いわゆる男盛り、女盛りのこの時期に活動することからもわかるように、アポクリン腺はホルモンと関係していて、主に情緒刺激で発汗します。

セクシュアルな興奮を覚えたときや緊張したときなどに出る汗、ということですね。場所も比較的特定部位にあり、脇の下や乳輪、外陰部、肛門のまわりなど。ワキガなどを発生するのは、アポクリン腺から出る汗によりますが、実は、汗自体は無臭なんですよ。そのあたりはまた次回にお話しましょう」

汗にも種類があり、さまざまな働きをしているのですね。3歳までに汗腺の数が決定していたとは、驚きの事実でした。そして、"汗クサい"とは日常的に使っていた言葉でしたが、まさか、汗が無臭!? 次回も汗にまつわるトリビアが伺えそうです。
上田由紀子

上田由紀子 ニュー上田クリニック院長、医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本体育協会公認スポーツドクター。
東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部皮膚科教室にて診療、研究、教育に携わった後、千葉県浦安市にて「ニュー上田クリニック」を開業。01年、国立スポーツ科学センターのオープンに伴い、医学研究部皮膚科を兼任。著書に『スポーツと皮膚』(文光堂)、『ようこそ、これからのSkin Careへ』。野際陽子著『70からはやけっぱち』(KADOKAWA/メディアファクトリー)には、野際氏との対談も収録されている。

取材・文/大庭典子(ライター)
イラスト/190

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