生きるためのボディ&ソウル。鍛えれば、人生きっといい感じ

湯山玲子の「人間はカラダだ!」

2015年2月 4日

文/湯山玲子
イラスト/腹肉ツヤ子

BODYHEART

【特集/呼吸で自分を変える】

極論! 呼吸は『心の座禅』です

極論! 呼吸は
今の世の中、無呼吸状態に陥らない保証はない
『ゼロ・グラビティ』という、宇宙を舞台にしたヒューマン&サスペンスSF映画がある。
突発的な宇宙ゴミの衝突によって、乗っていたスペースシャトルを破壊されてしまった乗組員たちの起死回生の物語なのだが、全編を支配していたのは「吸っている空気がどれだけもつか?」という恐怖だった。そう、私たちは、普段の生活ではまったく無自覚に呼吸しているのだが、その空気がないと、人間は生きてはいけないのである。主人公の女性乗組員は、次から次へと襲ってくる危機をなんとかクリアして、とうとう大気圏を突破し、海にシャトルを着水させるのだが、今度は海水がどーっと船内に流れ込んできて、今度は水中という無呼吸状態に陥る。彼女は最後の力を振り絞って海面上に出て、波打ち際に倒れ込むのだが、もうもう、その安堵感は「呼吸できてよかった!」とそのひと言につきるのだ。
「まあ、一生スペースシャトルに乗ることはないから、こういう恐怖とは無関係」などとタカをくくっていてはいけない。この世の中、いつなんぞ、「呼吸を止めて、脱出しなければいけない」状況に陥らないという保証はない。タイタニックのような船の沈没映画では、「いったん潜って、次の部屋に顔を出す」というような行動で命拾いをするシーンが多々あるが、それはまったくの絵空事ではないのだ。
一度、呼吸を止めてみる
前回は、ヨガの呼吸法の一部を紹介したが、実は世の中には、「なるべく長く息を止めていられる」という技術も存在する。私は大学生のときに一年だけ、非常にハードコアな体育会ダイビング部に在籍していたのだが、そのとき訓練を受けた呼吸法に「ハイパーベンチレーション」というものがある。これ、ハッハッとスピーディかつ断続的に息を口から吐き、吐ききって苦しくなったところで一気に大きく息を吸い、呼吸を止めるというもの。普通に大きく息を吸い込むよりも大量に空気を肺に送り込むことができるのである。タンクからの空気を吸い、結果、口からの呼気の泡で、魚が逃げてしまうスキューバーよりも、素潜りのスキンダイビングのほうが私は好きなのであるが、この「ハイパーベンチレーション」呼吸で潜って観察した海中の景色は、たとえようもない美しさと静謐さがあった。訓練を進めていくと、無呼吸でいられる状態は長くなり、最終的には苦しさで海上に出るよりも、「もう、水中にいるのはこのぐらいにしておくか」という余裕でダイビングを切り上げるまでにはなっていたのであった。
すると、呼吸に意識的になる
なので、今でもプールで泳ぐ機会があると、この呼吸法でもって、潜水を楽しむことがある。どれだけ潜って距離を伸ばせるかというよりも、深いところで、昔スキンダイビングのときによくやったように、仰向けになってチラチラと太陽の光を受ける水面を見上げたり、水中の梯子につかまって、水底に正座をしてみたりを楽しむことがある。不思議とこの呼吸の息を止める状態は苦しいものではなく、心がびたっと静止して落ち着く、一種の座禅のような効能さえあるのだ。
休日の朝風呂は、リラックスにもってこいだが、そのぬるめの温浴に水中メガネを持ち込んで、ブクブクと「水中無呼吸状態」にトライするのも手かも。日常生活の中で当たり前だと思っている呼吸を意識的に行うことは、本質的本能的な「生きている実感」を取り戻すことに通じるのです。

ゆやま・れいこ 著述家、ディレクター。自ら寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック」を主宰するなど、カルチャー界を牽引。著書に『四十路越え!』(ワニブックス)、上野千鶴子氏との共著に『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)がある。

構成/本庄真穂

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