「朝食抜きNG」のわけを「時間栄養学」で考えると?

文/おくだじゅんこ(管理栄養士)
イラスト/いしわたりきわこ
「朝食抜きはNG」のわけを「時間栄養学」で考える

「同じカロリーを摂取していても、なぜか細い人と太っている人がいる」という素朴な疑問や、「水を飲んでも太る体質だから」とダイエットをあきらめる人…。栄養指導の現場でも、このような方がたくさんいました。そんなときに出会ったのが、「時間栄養学」という理論です。

体内時計はひとつじゃない!?

これまで栄養学では、健康のため・ダイエットのために、「何をどれだけ食べるか」が重要視されてきましたが、今はそれに加えて「いつ食べるのか」という考え方も重要になってきています。

人のからだは、1日を24.5時間で動いていて、毎朝、太陽の光を浴びることで24時間に合わせるようリセットされています。このように、からだのリズムを調整しているメカニズムを体内時計といい、みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。この時計について、「光を浴びるとからだ全体が動きだす」といったイメージでとらえられているかもしれませんが、実はそこまでシンプルなものではありません。

体内時計というのは、ひとりひとりにひとつではなく、脳にある主時計のほかに、各臓器や筋肉など、それぞれに時計をもっている、ということがわかってきました。しかも、それぞれの臓器はすべて異なる周期で動いているので、誰かが号令をかけなければ、ばらばらな動きをして、まとまりがなく、スムーズにからだが働きません。

というわけで、それぞれの時計を主時計に同調させることが必要となってくるわけです。

内臓は朝食を合図に眠りから覚める

ではどうやったら、ばらばらな時計を同調させることができるのでしょうか? 昔からいわれているとおり、主時計は脳の視床下部、目に近いところにあるため、朝の太陽の光によって時計をリセットしています。一方、各臓器の抹消時計、特に消化器や代謝の要である肝臓などの時計は、朝食に同調して時計合わせをするということがわかってきました。

リセットの合図となる「朝食」は、「夜間、長時間絶食した後」に食べる食事であることが、より強い同調因子になるといわれています。 日本では朝に食べる食事のことを「朝食」と呼びますが、英語では、「breakfast」=「break」(壊す、くずす、破る)と「fast」(断食、絶食)という単語でできています。つまり、夕食後の絶食時間による空腹状態を破って口にする食事と表現されています。とても理にかなった呼び方です。

朝食をとらなければ、摂取カロリーも減って痩せるだろうという考え方もあると思いますが、それは少々間違いです。「朝食」をとり、体内時計をカチッと入れることで、ほかの臓器にもスイッチが入り、からだは1日スムーズに動くようになるのです。

実際、朝食を食べる人のほうが食べない人よりも、肥満者の数が少ないという結果も出ています。

「夜に食べると太る」本当のわけ

朝食は食べるとしても、仕事や家事の都合で夕食の時間が21時を過ぎるという方もいるでしょう。お昼は12時に食べるのに、夕飯は深夜近く、なんていう生活になってしまうと、昼食後から夕食までの空腹時間が長くなってしまいます。本来の空腹時間は夜ですから、内臓の時計はリズムをくずしてしまい、からだはうまく代謝できません。

また、食事をとると、吸収された栄養素が分解・代謝され、一部が熱となって消費されます。これを「食事誘発性熱産生」と呼ぶのですが、これは朝や昼間に食事をとったときと比べ、夜では50%も低下するとの報告もあります。つまり、同じカロリーの食事をしても、夜遅く食べる人ほど、肥満になりやすいということなのです。

仕事柄、夜遅くなってしまうのは仕方がない方もいることでしょう。そんな方は、夕方、仕事の合間に、炭水化物(おにぎりやパンなど)をとっておき(ただしドカ食いはNG)、家に帰ってからおかず(タンパク質や野菜)をとるのがおすすめです。肥満は血糖値の上昇やそれをコントロールするインスリンというホルモンが関係するのですが、この食べ方であれば、血糖値の上昇も抑えられるので、肥満も抑制できるというわけです。

昔から、「朝型生活がよい」「早寝、早起き、朝ごはん」などと言われてきましたが、その裏付けもしっかり証明されてきているようです。

「朝食が食べられない」という方も、夕食の食べ方、夜間絶食時間を見直してみると、自然と朝に空腹感も得られて、食べられるようになるかもしれません。「朝食を制する者は、体調も制する!」ですね。

実際、日本人の摂取エネルギー量は、国民健康栄養調査の結果から見ても増えてはいません。2019年最新のデーターでも、1日のエネルギー摂取量は1903kcal、その10年前の2009年は1861kcal、20年前の1999年の摂取エネルギー量は1967kcal。むしろ減っているのです。

太るからとカロリーを気にしたり、何をどう食べるかを考えたりすることはもちろん大切ですが、「いつ食べるのか」にもぜひ着目してみてください。

参考資料
『時間栄養学 時計遺伝子と食事のリズム』(女子栄養大出版部)
『臨床栄養 Vol.136 No.3』(医歯薬出版株式会社)

  • おくだじゅんこ/管理栄養士 広島生まれ。2004~2012年の8年にわたり株式会社ワコールに勤務。陸上選手から社員まで幅広く健康管理に携わる。 病院栄養士を経て、現在は広島酔心調理製菓専門学校にて、調理師やパティシエの卵たちと「健康且つおいしい!」を追求し、日々奮闘中。
からだ用語辞典: 視床下部 / インスリン

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