今月のコトバ「白の下着」

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

今月のコトバ「白の下着」

オトコの白のインパクト

白と下着は仲がいい。『使い方のわかる類語例解辞典』(小学館)をひもとけば、「白」の使い方例として「白の下着」が最初に登場するほどの親密度だ。<基本の色名+ファッションアイテム>の用例としては、ほかに「グレーのセーター」「黒の靴」「ねずみ色の背広」「灰色の外套」「ピンクのドレス」「紫のスカーフ」「桃色の浴衣」なども登場する。だけど、ビシッと決まっているのはやっぱり「白の下着」。「彼は絶対に白だ」という秀逸な例文も掲載されていたが、これは彼のパンツの色を推測した女の叫びではなく、彼は犯罪の容疑がないという意味であり、やや残念だった。

白の下着といえば、何はともあれパンツだろうと思っていたが、戦時中の許されぬ恋を描いた『この国の空』という映画を観て、考えが少し変わった。主演の里子(二階堂ふみ)がどこまで脱ぎ、どんな下着を見せるのかとドキドキするシーンで、相手役の市毛(長谷川博己)の下着に不意討ちされたのである。それは、ぱりっぱりの白のふんどしだった。

市毛のふんどしは一瞬映るだけだが、鮮烈な印象を残す。ふんどしというアイテムのインパクトとともに、その清潔感が。市毛の妻子は疎開中で、彼は自分で掃除や洗濯をするタイプではない。枕カバーなどはありえないほど汚れていた。なのに、ふんどしだけは気合いが入っていたのだ。

年齢とともに不足する成分は?

初めてのデートは白の下着で、とはよくいわれることだが、白の下着をつけるべきは男かもしれない。19歳の里子と浮気しようとしている市毛さえも、誠実そうに見せてしまうマジック。男性の白の下着(特にブリーフ)は女性に人気がないようだが、それは、よれよれであった場合。ぱりっぱりの清潔感があればオッケーであると断言したい。

女性の下着についていえば、白の神通力は別格だ。シタギップリというアンケート企画で、男性にウケがよかった下着の色を女性に聞いたところ、もちろん白がトップ。ウケがよかったアイテムは「Tバック」、ウケがよかったディテールは「レースのついたもの」がトップだった。つまり最強アイテムは「白レースのTバックショーツ」ということになる。みんな、今すぐ買いに行こう。

セクシーすぎる下着も、白を選べばリスクは軽減するのかもしれない。シタギップリによれば「セクシー下着より清楚な下着が大事」と考える女性は62%。理由は「清楚な下着で色香を漂わせることはできても、セクシー下着で清楚さは表現できない」「色気は大人になればでてくるけど、清らかさって失われてくるから」「オトナになるとただでさえアクが強くなるので下着はシンプルな方がいい」などなど。年齢とともに不足しがちな清楚成分は、ぜひとも白で補おう。

「初めて」を彼と共有する方法

だが現実には、清楚さの演出には限界がある。こころとからだに染みついた百戦錬磨は「白の下着」+「私、初めてだから」というカマトトな台詞ではぬぐいきれない。と思っていたら「私、初めてだから」を自然に言う方法があることを『ハッピーエンドが書けるまで』という映画が教えてくれた。

クラスメイトのふたりが、互いにひかれあい、交際をはじめる。彼は初めてで、彼女は初めてじゃない。そのとき彼女は「クロゼットでしよう」と彼に提案するのだ。「クロゼットでするのは私も初めてだから」と。彼女はヤク中で、素行にも問題がある女の子なのだが、とっても可愛くて、彼はもうメロメロ。白の下着とあわせて、覚えておきたい高等テクニックだ。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ランジェリー、映画愛好家。最近いいなと思ったのは、映画「暗くなるまでこの恋を」で妻(カトリーヌ・ドヌーブ)の裏切りに気づいた夫(ジャン=ポール・ベルモンド)が、彼女の下着を次々と暖炉で燃やすシーン。

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