2022.11.17

【特集】おとなの温活どうする? #02
漢方専門医が教える、おとな世代の「冷え」事情<前編>

データで解説!更年期の「ほてり」「冷え」のリアル

漢方専門医 渡邉賀子先生

日ごとに寒さ増す11月。この時期の「冷え」を、「冬だから」「体質だから」「更年期だから」とあきらめてはいませんか? まずは「冷え」を正しく知ることから。日本で初の「冷え症外来」を開設し、女性の冷え問題のエキスパートである渡邉賀子先生に、おさえておきたい基礎知識を伺いました。

「のぼせ」と「冷え」を
同時に感じる更年期世代

卵巣の機能が衰えて月経が完全になくなることを「閉経」といいますが、日本人の平均的な閉経年齢は約50歳です。閉経時期は個人差が大きいのですが、閉経を挟んだ10年間、年齢でいうと45~54歳くらいを更年期といいます。この時期は卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が減少することなどによって、さまざまな不調が起こりやすくなります。

閉経前後の10年間が「更年期」

更年期症状の代表的なものが「のぼせ」やほてり、発汗、いわゆるホットフラッシュといわれるものです。これは女性ホルモンが急激に減少するために起こることです。脳から性腺刺激ホルモンを出して、少なくなった女性ホルモンをなんとか分泌させようとしますが、この反応が自律神経に影響を及ぼし、上半身、特に頭や顔に現れて、のぼせや発汗が起こります。特に暑くもないシーンでひとりだけ大汗をかいて恥ずかしい思いをした、などというのが、典型的な更年期症状のひとつです。

女性ホルモンの低下に伴う更年期症状には、このほか気持ちの落ち込みやイライラ、動悸、めまいなど様々なものがあり、治療としては女性ホルモンを補うホルモン補充療法が用いられます。ホルモン補充療法は、多様な更年期症状に有効ですが、特にホットフラッシュやのぼせ、ほてり、発汗に効果的なことから、更年期ののぼせは女性ホルモンの影響が大きいと考えられます。

一方、「冷え」はどうかというと、これもまた女性に特有の悩みだと言えます。20代~50代の男女に「感じやすい不調」を調査した花王株式会社のデータがあります(下のグラフ)。「冷え症」は、「肩こり」「腰痛」「身体的な疲れ・だるさ」「精神的な疲れ」に続いて5番目にきています。特徴的なのは、男性との比較。「肩こり」や「身体的・精神的な疲れ」については男性でも多くが実感しているのに対し、「冷え症」に関しては、女性が男性の5倍。女性ならではの悩みだということがわかります。

女性が感じやすい不調

さらに、北里研究所のデータで「冷え」を自覚している人の割合を年齢別に見てみると、興味深いことがわかります。いちばん多いのは、35~44歳、つまり更年期の少し前の年代。45~54歳の更年期世代は、全体の半数が冷えを自覚していることになります。(下のグラフ)

冷えを感じている人の割合

これは、更年期ののぼせやほてりによって、冷えが多少紛らわされているということなのかもしれません。実際に、「冷えにともなって感じる症状(冷えと相関する随伴症状)」を調べたところ、矛盾するようですが、冷えのある45~54歳の女性は「多汗、ほてり」を感じている人も多いんですね。

そしてこの「のぼせ」と「冷え」は、別々にではなく、同時にも起こっています。上半身はカーッと熱さを感じながらも、手足や下半身は氷のように冷えているケースも。更年期の複雑な症状のひとつです。

熱が足りない、届かない
冷えの原因とは?

そもそも、冷えはなぜ起こるのでしょうか? 

冷え症の原因は、大きく分けると「熱が足りない」ことと「熱が届かない」ことにあります。

私たちのからだは、飲食物を原料として、「食べた物を消化・吸収すること」「呼吸」など内臓や脳の働き、そして「骨格筋の運動」などによって熱を生んでいます。普段の生活で、1日の熱量の約6割をつくっているのが筋肉です。ですから、過度なダイエットや運動不足は、熱量不足を生み、冷えにつながります。

そして、産生した熱をからだのすみずみに運ぶのは血液です。十分量の血液がサラサラで、血管もしなやか、そして心機能や血圧、自律神経がちゃんと機能していれば、熱は血流によって手足など末梢まで運ばれます。逆に、うまく血液が運ばれなければ、その場所は冷えてしまうのです。

寒いところで冷えを感じるのは、防御反応でもあるんです。人間のからだの中心部の温度、深部体温は、男女問わず約37℃にセットされていて、暑い時には末梢血管の拡張や「発汗」などで熱を体外に放散し、寒い時には末梢血管を縮小して熱を逃がさないようにするとともに、「震え」や「運動」などによって熱を産生して深部体温を保つようにできている。末梢血管の拡張や縮小といった調整は、自律神経の働きによって行われています。手足が冷たくなるのは、深部体温を一定に保ち、からだを守るための体温調節機能があるためなのです。

「冷え」に対する男女差は
服装の違いも影響

冒頭でお話しした男女差も、冷え症を考えるときのポイントになります。

まず、平均的に女性は男性に比べて筋肉量が約1割少なく、基礎代謝も1割少ない。つまり、発熱量が少ないことが、女性に冷え症が多いことの大きな原因になっています。

一方、女性は筋肉量が少ない代わりに、皮下脂肪が多い傾向にあります。皮下脂肪というと悪いもののように思われがちですが、熱という観点から考えると、発泡スチロールのように、皮下脂肪が熱を外に逃さない保温剤としての働きをしてくれているんです。たとえば、女性アスリートのように筋肉はしっかりあるけれど皮下脂肪は少ないというタイプは、熱を生み出すことはできても、保温能力が低いため、冷えにつながることもあるのです。

また、服装の違いも大きいと思います。女性はスカートやストッキング、サンダルやパンプスなど、足元を出すことが男性に比べて多い。また、「快適気温帯」といって人がここちよく感じる温度が、男性より女性の方が約3℃高いんです。

こうした男女差に加えて、更年期という女性ならではの不安定な時期は、心身のストレスも多く、冷えをますます深刻な問題にしているのです。

―――基礎知識をおさえたところで、次回<後編>は冷えの具体的な予防法をお伝えします。

【特集】おとなの温活どうする?(全5回)

  • 渡邉賀子
  • 渡邉賀子(わたなべ かこ) 医学博士・漢方専門医。熊本市 医療法人祐基会 帯山中央病院 理事長。「麻布ミューズクリニック」名誉院長。1997年に北里研究所にて日本初の「冷え症外来」を開設。多くの女性が悩む冷え症の診断と治療にあたる。2004年女性専門外来「麻布ミューズクリニック」を開院。著書に『オトナ女子のためのホッと冷えとり手帖』ほかがある。
取材・文/剣持亜弥
イラスト/中根ゆたか
デザイン/日比野まり子