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  • 2023.05.17

外ごはんがおいしい季節の簡単で映える「キャンプ飯」

ビギナーでも失敗しないキャンプ情報<後編>

外ごはんがおいしい季節の簡単で映える「キャンプ飯」

海へ、山へ、川へ、アウトドアが楽しい季節。自然の中で遊ぶだけではなく、一歩進んで「キャンプ飯」にトライしてみませんか? 太陽を浴びて風が運ぶ香りを感じながら家族や気心の知れた仲間と囲む食事には、一流レストランにはない味わいがあります。今回は、テクニック不要の簡単でダイナミックでおいしいキャンプ飯を、アウトドアを得意とする料理家の蓮池陽子さんに教えてもらいました。

キャンプ飯初心者は「スキレット」を使って調理するのがおすすめ

アウトドア料理はハードルが高い……と思っていませんか? スキレット一つあれば、簡単なのに本格的で、おいしく映える外ごはんが作れるのです。「ちょっと重いのですが、鉄製で厚みがあるスキレットは、熱伝導や蓄熱性が高く、食材に熱がじっくり均一に伝わります焼く、煮る、蒸す、揚げるなど、さまざまな料理に使え、メインも副菜もごはんも、デザートだって作れる。冷めにくく、デザインも素敵なので、大皿代わりにテーブルに出せるのも魅力。調理のバリエーションが広がる、ふたつきタイプがおすすめです」

キャンプ飯の失敗を減らすために、覚えておきたいポイントがもう一つ。「キャンプ場では、近所にスーパーやコンビニはなく、忘れ物をしたときのダメージが大きいので、できるだけ仕込みをしておきましょう。あらかじめ肉や魚の調味をする、ソースを作っておくなどして、現地では焼くだけ、出すだけに。また、ゆるゆるとお酒を飲んだり、遊んだりしながら楽しむキャンプ飯は、すぐに食べないシチュエーションも想定して、時間がたってもおいしく食べられる工夫を。料理が冷めにくいスキレットは、この点でも優秀です」

今回使用するのは、4人分の料理が余裕で作れる10インチ(直径約25cm)のスキレット。キャンプ飯の最強のパートナーを使ったメインとデザート、そして手軽さが人気のホットサンドの作り方を紹介します。

メインディッシュ「3種の肉のソテーと3種のソース」
うま味たっぷりのジューシーな肉に彩り豊かなソースを添えて

メインディッシュ「3種の肉のソテーと3種のソース」

アウトドア料理の醍醐味の一つは、それぞれが自由に、好きなように食べること。そんな楽しみ方を満喫できるのが、ここで紹介する肉のソテー。うま味を逃さず、外は香ばしく中はふっくら焼き上げるのがポイントです。

「主役は、牛、鶏、豚、の3種の肉。彩りも鮮やかな3種のソースで楽しむために、下味は薄めに仕込みます。焼いた肉はそのまま食べてもいいし、野菜と一緒にトルティーヤで包んでもいい。これくらいバリエーションがあれば、大人も子どもも好みに合わせて自在にアレンジできると思います」

<材料>(4人分)
鶏もも肉(1枚)……約300g
豚ロース肉(3cm厚)……約250g
牛ステーキ肉(3cm厚)……約300g
塩……適量
オリーブオイル……適量
*添える野菜は、レタス、アボカド、トマト、紫玉ねぎなどお好みで

鶏肉と豚肉の下準備

<鶏肉と豚肉の下準備>
現地では焼くだけでいいように、家で仕込みを済ませておきます。下味をつけすぎると焦げやすいので、薄めに仕上げるのがコツ。下味をつけつつ、肉の焼き上がりがやわらかくなる塩糖水は、日常でも活用したいティップスです。

・食品用のビニール袋に水200ml、砂糖大さじ1、塩小さじ1を入れ、袋の上から軽く混ぜて塩糖水を作る。
・塩糖水の中に鶏肉と豚肉を入れ、空気を抜いて袋の口を閉じる。
・保冷できる環境で半日以上つけておく。

「3種の肉のソテーと3種のソース」作り方

<作り方>
キャンプでは暗いところで料理することもあるので、火が通りにくい食材の生焼けには気をつけて。特に鶏肉や豚肉は、中までしっかり火が通っているかを確認しましょう。厚切りやブロック肉は明るいうちに焼いておき、食べる直前に炙るという方法もありです。

❶鶏肉と豚肉を塩糖水の袋から取り出して水気を切り、さらにキッチンペーパーで水気を拭き取る。
❷牛肉は焼く直前に塩を振る。好みでこしょうをプラスしてもOK。
❸スキレットにオリーブオイルを入れて熱し、全体になじませたら、全部の肉を入れて中火にかける。
❹約3分焼いて裏返し、さらに約3分加熱して焼き色をつける。焼いている間はあまり肉を触らないように。

「3種の肉のソテーと3種のソース」作り方

❺大きめに切ったアルミホイルに牛肉を取り出し、しっかり包んで約10分保温する。
❻鶏肉と豚肉を入れたままスキレットにふたをし、様子を見ながら中弱火で片面を3〜4分ほど加熱したら火を止めて、そのまま3分ほど保温する。
❼それぞれの肉を食べやすい大きさに切り、盛りつける。

ソース

<ソース>
材料を混ぜるだけの簡単ソースですが、荷物を減らし、忘れ物で慌てないためにも、家で仕込んでいきましょう。全体が茶色くなりがちなキャンプ飯に鮮やかな色味が加わり、食べ飽きず食欲もそそります。

スパイシートマトソース
<材料>(作りやすい分量)
市販のトマトソース……100ml
カレー粉……小さじ1弱
クミンパウダー……小さじ1
コリアンダーパウダー……小さじ1
*小さな子どもがいる場合は、辛味成分が入っているカレー粉の量を調整

アンチョビソース
<材料>(作りやすい分量)
アンチョビペースト……大さじ1
にんにく(すりおろし)……1/2かけ
マヨネーズ……大さじ1と1/2
ヨーグルト……50ml
黒こしょう……少々
*あれば、無農薬レモンの皮(すりおろし)……少々

レリッシュソース
<材料>(作りやすい分量)
玉ねぎ……1/3個
ピーマン……1個
柚子こしょう……小さじ2/3〜
米酢……大さじ1と1/2
オリーブオイル……小さじ1〜
塩……適量
*玉ねぎとピーマンはみじん切りに

デザート「フルーツのロースト」
いつもの果物も焼くだけで罪悪感フリーな濃厚スイーツに

デザート「フルーツのロースト」

のびやかな屋外では、ヘルシーなデザートが食べたくなります。そんなシチュエーションにぴったりなのが、こちら。あたたかいフルーツと冷たいヨーグルトソースのコントラストが楽しめる一品です。

焼くことで水分が飛んで味が濃厚になり、見慣れた果物も新鮮で罪悪感の少ないスイーツになります。焼いておいしいフルーツの王道はバナナですが、シチリアやモロッコには焼いたオレンジにシナモンをふりかけるデザートがあるし、生のパイナップルもおすすめ。こんがり焼き色がつくので時間が経ったときの変色も気になりません。仕上げのトッピングはシナモンのほか、カルダモンやこしょうを加えると、さわやかな大人の味わいに」。お子さんと一緒でも簡単に作れます!

<材料>
オレンジ……適量
バナナ……適量
バター(有塩)……適量
シナモンパウダー(仕上げ用)……適量

A(ヨーグルトソース用)
ギリシャヨーグルト……200g
レモン果汁……大さじ1/2〜
砂糖……大さじ2と1/2
シナモンパウダー……適量
※砂糖の量は好みで調整

デザート「フルーツのロースト」

<作り方>
❶オレンジは2cm厚の半月切りに、バナナは皮をむいて縦に半分に切る。
❷Aの材料を混ぜ合わせておく。

デザート「フルーツのロースト」

❸フライパンを熱してバターを溶かし、バナナ、オレンジを入れて両面こんがりするまで中火で加熱。
❹皿に盛りつけ、ヨーグルトソースを添え、好みでシナモンパウダーをふる。

軽食「残りもので作るごちそうホットサンド」
肉に野菜にチーズ。何を入れてもまとまる幸せサンドイッチ

デザート「フルーツのロースト」

余った食材をどうするかは、キャンプ飯の課題。持ち帰るのは面倒だし、とはいえ捨てて帰るのも気が引けます。それを解決するのが、ホットサンド。ホットサンドメーカーがあれば、驚くほど簡単に専門店のような出来上がりに。キャンプの軽食に、また翌日の朝食にもおすすめです。

「焼いた肉も生野菜も、残りものをパンに挟んで焼くだけ。水っぽい食材はパンがしなしなになるので避けて、それ以外は自由に楽しんで作ってほしいです。パクチーを挟めばエスニックぽい味わいになるし、カニかまやゆで卵を入れてもおいしい。すべてをいい具合にまとめてくれる、とろけるチーズをのせるのがポイント。カットしたときの断面映えを考えてデザインすると、見た目も楽しくなりますよ」

<材料>
食パン(6枚切り or 8枚切り)……1斤
前の晩の残り物
チェダーチーズ(とろけるチーズ)……適量
マヨネーズ、マスタード、オリーブオイルなど……各適量

軽食「残りもので作るごちそうホットサンド」

<作り方>
❶ホットサンドメーカーに食パンをのせ、好みでマヨネーズやマスタード、オリーブオイルなどを塗る。
❷食パンに具材をのせ、最後にとろけるチーズをのせたら、プレートで挟んでプレスし、直火にかける。
❸弱火で片面約3分、裏返して約3分加熱する。途中焼き具合を見ながら火力や焼き時間を調整。
❹焼き上がったら網の上などに置き、2〜3分経ってから切る。空気に触れさせることでパンが湿るのを防ぎ、ふっくらした状態をキープ。

豊かな自然の中で楽しむ食事はそれだけでスペシャリテ

豊かな自然の中で楽しむ食事はそれだけでスペシャリテ

キャンプビギナーなら、手間をかけない、頑張りすぎないことが肝心。「使用後の食器や調理器具をお湯の出ない環境でしっかり洗うのは大変なので、キッチンペーパーで軽く拭いておく程度で、残りは帰ってからと割り切って。火を起こすなら、調理後にすすを落とす手間のかかる薪より、バーナーやカセットコンロが簡単で便利です。最近は、火加減の調節も自在なアウトドア用のカセットコンロも豊富。初心者はスキレット一つでできるレシピから入り、慣れてきたらストウブやルクレーゼ→ダッチオーブンにグレードアップを」

日常の食卓とは何もかもが違うけれど、その不自由さも魅力の一つ。「キャンプ飯ではお皿をあまり使い分けないので、一枚のお皿の上でいろいろな味が混ざることも想定しましょう。メインディッシュの肉のソテーに添えた3種のソースは、混ざったら南インドのミールスのように楽しめるし、生野菜にかければドレッシングにもなります」

多少の失敗も、すべてが味わいになるアウトドア料理。難しく考えず、食材を焼いて食べるだけでも、非日常のシチュエーションがスパイスになるものです。青空とフィールドがここちいい季節に、ぜひキャンプ飯にチャレンジしてみてください。この楽しさを知ったら、キャンプ沼にハマってしまうかもしれません。

  • 蓮池陽子(はすいけ・ようこ)
  • 蓮池陽子(はすいけ・ようこ) フードデザイナー。大学卒業後、都内ビストロ勤務を経て、料理教室で料理・製菓講師に。仕事の一環としてアウトドアで料理をしたり、山菜や魚介などを採りに行った経験から、おいしいものの背景には豊かな自然があることに開眼。「食の物語を紡ぐ」をコンセプトに、商品・レシピ開発、フードコーディネート、料理教室、ケータリング、記事の執筆などを手掛ける。
    https://www.atelierstory.jp
取材・文/片岡えり
撮影/蝦名まゆこ
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC