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  • 2023.04.12

がんばりすぎずに、おもてなし上手になる8つのテクニック

ブランディングディレクター福田春美さんに教えてもらう

ブランディングディレクター福田春美さんに教えてもらうがんばりすぎずに、おもてなし上手になる8つのテクニック

バイヤーとして世界中を駆けまわり、自身のブランドを立ち上げるなどファッションの最前線で活躍していた福田春美さん。現在は多くの企業やホテルのブランディングを手がけるなど、ブランディングディレクターとして日本全国を飛びまわっています。そんな春美さんは、業界では知られたおもてなし上手。「hamiru亭」と謳うホームパーティーは、料理のおいしさはもちろん、盛り付けやプレゼンテーションも洗練され、友人・知人からは「予約のとれないホームパーティー」と言われるほどの人気。今回、春美さんに、おもてなしが楽しくなる、器選びやメニューの工夫など8つのテクニックを教えていただきました。

TIP1:取り皿はレイヤーでセッティングすると使う人も便利

取り皿はレイヤーでセッティング

「hamiru亭ではいつも、前菜とメイン、デザートとコース仕立て。まずはゲストが来る前に、テーブルに人数分の取り皿とカトラリー、グラスを用意。そして、ゲストが時間差で来てもいいように、自由につまめるウェルカムフード、ウェルカムドリンクを準備しておきます」

取り皿は、一人分ずつ重ねてセッティングするのがおすすめと春美さん。①の長角皿の上にバーニャカウダを入れる小鉢(②)と小皿(③)、小皿の上にスープ用のグラス(④)を置きます。使い終わった器は上から順に片付けていけば、下のお皿が取り皿として使えるという仕組み。スリムな長角皿を使用するのも、テーブルを広々と使うための工夫です。ドリンクも空になったら自分で入れやすいようにグラス(⑤)と一緒にお茶のポットもテーブルに。カトラリー(⑥)は木や石など自然素材の箸置きに。気取りすぎない雰囲気を演出できます。

バーニャカウダをゲストそれぞれのカップに注いでおく バーニャカウダは、ゲストがくる前にそれぞれのカップに注いでおく。 お茶は手を伸ばしやすいようにポットでテーブルに お茶は手を伸ばしやすいようにポットでテーブルに。 拾った石や木の枝は煮沸消毒してから、箸置きとして利用 拾った石や木の枝は煮沸消毒してから、箸置きとして利用します。

TIP2:ウェルカムフードはカッティングボードに置くだけ

カッティングボードに置いたウェルカムフード

「前日の料理の仕込みは、出汁をとっておくだけ」という春美さん。当日は、来客の1、2時間前から準備がスタート。ウェルカムフードの定番はゲストが好きにつまんで食べられる、カット野菜とバーニャカウダ。
「野菜を切って、カッティングボードの上に並べるだけで完成(笑)。うちのバーニャカウダはオイルサーディンを使っているので、アンチョビのバーニャカウダよりも軽く、飽きずに食べられます。野菜が1皿あっというまになくなるので、おかわり分の野菜もたくさん用意します」
カラフルな野菜を選べば目にも楽しく、立派なおもてなしメニューに。紫キャベツやにんじんはディップしやすい形にカットするのもポイントです。

TIP3:スープはグラスで出せば数合わせが楽

スープはグラスで出す

「前菜のひとつは、お酒を飲む前の胃をガードするための、スープやジュレが定番。今日は、最近気に入ってよく作っている焼きパプリカのポタージュ。いりこ出汁を使っているので、和風のほっとする味です」
ポタージュを入れたカップは、耐熱性のグラス。ワインを飲んだり、サラダやヨーグルトを盛り付けたりとフレキシブルに使えるグラスは、スープカップとしても重宝。クリアなグラスは、オレンジやグリーンなど色のあるスープを注ぐとテーブルを華やかにしてくれます。

TIP4:テーブルを華やかにするパエリア鍋は絶対必須!

テーブルを華やかにするパエリア鍋

hamiru亭で一番の人気メニューといえば、濃厚な魚介出汁で作るパエリア。それもそのはず、この魚介出汁は、生まれ育った北海道から送られてくるエビやカニの殻や魚のアラなどを継ぎ足しながら作った10年もの(!)。のせる具材は、春はホタルイカ、夏はアジ、秋はサンマ、冬は毛ガニや牡蠣など、旬の魚介に変わります。
「パエリアは、実は冷めたほうが味が馴染んでおいしくなります。来客の直前に炊いておけば、ゲストが揃う頃に食べ頃に。パエリア鍋は持っていない人が多いと思いますが、テーブルに出すと絶対に盛り上がるのでおすすめです」

TIP5:鍋をそのままテーブルに運べるメニューを用意する

鍋をそのままテーブルに運べるメニュー

パーティ中盤に登場する蒸し料理や煮込み料理は、鍋ごとテーブルへ。お皿に盛り付ける手間が省けるうえ、出来たての料理が熱々のまま楽しめます。このとき、鍋の蓋は開けずにテーブルまで運ぶのがポイント。何が入っているのか、開けるまでわからないサプライズを演出しましょう。
「ゲストの目の前で蓋を開けると、白い湯気が立ち上った瞬間に歓声があがります。湯気は、料理をより美味しそうに見せてくれますよね」
春美さんにとって、テーブルでのプレゼンテーションもおもてなしのひとつ。仕上げに薬味をかけたり、湯気を見せるなど、調理の最後の見せ場をゲストの前で行うことでエンターテイメント性がアップします。

蓋を開けた瞬間に立ち上る湯気と香りでエンターテイメント性をアップ 蓋を開けた瞬間に立ち上る湯気と香りが、食欲をそそります。

TIP6:出し忘れがないようにメニューは書いておくこと

出し忘れがないように書いたメニュー

おもてなしで困ることのひとつが、献立づくり。春美さんは、毎回作る定番メニューと季節のアレンジを軸に、旬の食材を使った+αの料理で構成しています。
「作るものが決まったら、メニュー表を書いてキッチンの目に付く場所に吊るしています。食材を用意したのに作るのを忘れたり、作ったのに出すのを忘れてしまったということが何度かあったので、いつからかメニュー表を書くようになりました。日付やゲストの名前もメモしているので、去年の今頃は何を作ったか、誰に何を作ったのかがわかるので、次回のメニューづくりにも役立ちますよ」
メニュー表を書いて、人気だったメニューをチェックしていけば、自分の定番料理が見つかりそう。

TIP7:メインディッシュはやはり大皿に

大皿のメインディッシュ

メインディッシュは、メニューの主役。主役には、大皿という最高のステージを用意してあげましょう。春美さんがいつもメインを据える大皿は、地元である札幌の陶芸作家、安部郁乃さんのもの。石のように見えるところが気に入っているそう。
「メインディッシュといえば、やっぱりお肉。牛肉や豚肉もいいですが、ラムチョップは特別感があるのでおすすめです。ソースは、すりおろした紅玉をビネガーとオリゴ糖であえたもの。ぶどうのマリネなど、そのときの旬の果物は何でも合います」

大皿に盛り付けるときは、余白を作って料理を引き立たせる 大皿に盛り付けるときは、余白を作ると料理がより引き立ちます。

TIP8:20cm前後の器は使い勝手がいいので数枚揃えるといい

使い勝手がいい20cm前後の器

「20cm前後のお皿は、サラダや炒めもの、デザートなどどんな料理にも使えるので、何枚か持っておくと便利です。私は無機質なかんじがする雰囲気の器が好きで集めています」
器は、ショップやギャラリーで購入するほか、全国の窯元や作家さんを直接訪ねて購入することも多いそう。春美さんが持っている20cm皿は、安藤雅信さん、野口悦史さん、松永圭太さん、宮田竜司さん、中里太亀さんなどの作家ものから、フランスのアスティエ・ド・ヴィラットまで、質感や色にニュアンスがあるものばかり。デザイン性が高く、お皿自体に存在感があるので、シンプルな料理を格上げしてくれます。

デザートのフォンテーヌブロー

この日は、アスティエ・ド・ヴィラットのお皿にいちごとブルーベリーを散らし、上にフォーンテーヌブローというフレッシュチーズのようなフランスの郷土菓子を乗せた、春美さん自慢のデザートを。フランスに住んでいた頃に食べたフォンテーヌブローに感動し、ヨーグルトや生クリームを使って何年も試行錯誤して再現したそう。
「テーブルでガーゼをほどいて広げて見せると盛り上がります。夏は桃、秋は洋梨やぶどうなど季節のフルーツを使っています」

春美さんのおもてなしには、ホストもゲストも居心地よく過ごせる、さりげない気遣いや工夫がたくさん。こちらをお手本に、今年こそおもてなし上手になりたいですね。

  • 福田春美(ふくだ・はるみ)
  • 福田春美(ふくだ・はるみ) 北海道札幌出身。セレクトショップのバイヤー、ディレクターなどを経て、2011年よりブランディングディレクターとして活動。ライフスタイルストアをはじめ、北海道の〈MEMU EARTH HOTEL〉や京都の〈moksa〉など話題のホテル、浄水器などの企業ブランディングなどを手がける。趣味は料理と旅。雑誌やSNSを通して発信されるインテリアやライフスタイルも人気。著書に『ずぼらとこまめ』(主婦と生活社)。
    Instagram@haruhamiru
取材・文/佐々木素子
撮影/MEGUMI
構成/梅原加奈
デザイン/WATARIGRAPHIC