KCI収蔵品の補修、保存を行う「補修室」より日々の奮闘を綴ります。
KCIでは様々な目的でコルセットのレプリカを製作しています。前回のような展示用コルセット(※)や、衣装をマネキンに着せ付けて展示する際の下着として使用する着付け用コルセット、今の人々が実際に19世紀のコルセットの装着を体験するための試着用コルセットなどです。今回はこの試着用コルセットの作り方を紹介します。
素材の種類や色はオリジナルと別のものを使用していますが、ボーンの数やシルエットはオリジナルを再現しています。まずKCI収蔵のオリジナルコルセットのパターン(ドレス製作用設計図)をとり、これをもとにグレーディング(服のサイズを大小に変化させること)し、SS・S・M・Lの4種類、色は白・黒の2種類を製作しました。


試着用レプリカコルセットの製作手順
1.必要なサイズの型紙を作成し、綿ツイルの生地から型紙パーツとテープパーツを裁断する。スチール(特に力がかかる部分用)とABS樹脂をボーンとして裁断する。
2.前中心から後ろ中心へパーツの順番通りに外表(=縫い代が表側に出る状態)にミシンで縫い合わせる。
3.表側から縫い目を覆うようにテープを縫い付けたのち、ボーンの幅ごとにテープをステッチする。
4.前中心にバスク(=コルセットの留め具)を手で縫い付ける。
5.ボーンを通し、上下の端始末としてパイピングする。上側には布と同色の装飾用レースをつける。
6.ボーンが中で動かないように強度の高い糸で端を刺繍して固定させる。同色の装飾用レースをつける。
7.後ろ中心にハトメをつけ、ハトメに紐を通して完成。

現在このコルセットは博物館実習受講者や学芸員が外部で講義をする場合など、主に教育普及の目的で使用しています。オリジナルは女性用ですが試着時には男性も同じものを体験します。実際にコルセットを付けてみることで、付ける過程の苦労や着装感、また着用後のウエストの細さへの驚き(男女ともに着用前より10cm以上細くなることも!)……、と発見がたくさんあります。

(※)「今日の補修室 第11回 レプリカ(複製品)の製作②」も合わせてご覧ください。
(KCI広報誌『服をめぐる』第12号 2019年3月発行より)
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- 京都服飾文化研究財団(KCI) 京都服飾文化研究財団(The Kyoto Costume Institure, 略称KCI)は、西欧の服飾やそれにかかわる文献や資料を体系的に収集・保存し、研究・公開する機関です。現在18世紀から現在までの服飾資料を約13,000点、文献資料を約20,000点収蔵。それらを多角的に調査・研究し、その結果を国内外の展覧会や、研究史の発行を通じて公開しています。 https://www.kci.or.jp/