涼しげなデザインと軽やかな着用感!「シアーブラ」が新発売

語り/高橋知子(開発担当)、渡辺理恵(デザイナー)

近年の酷暑を想定して開発された「シアーブラ」は、手にとるとその軽やかさに驚くほど。洗練されたシンプルなデザインや、乾きやすい素材、構造のヒミツを探ります。

涼しげなデザインと軽やかな着用感!「シアーブラ」が新発売

新開発の生地は、風通しがよく乾きやすいのも魅力

――まずは「シアーブラ」開発のきっかけを教えてください。

高橋 2019年3月に発売したガードル「シアーシェイプ」とセットで着用していただけるブラジャーをテーマに開発がスタートしました。夏の暑さを思うと、裸でいたいくらい暑いですよね。それをなんとかブラで快適にできないかと考えました。素材の快適さはもちろん視覚的な涼しさにもこだわっています。

渡辺 新たに開発したのが、このメッシュ状の素材。ダブルラッセルという名称なのですが、ポリウレタンが入った素材は実はワコールでは初めてで、段ボールのような構造になっているんです。間に空間があるため熱がこもらないのが特徴です。

通気性の良いダブルラッセルは、カップ部分に使用。
通気性の良いダブルラッセルは、カップ部分に使用。

高橋 素材の開発と同時進行で構造をどうするか練っていきますが、伸びるがゆえに造形性を出すのが難しくて。技術開発や材料担当、設計担当はじめ、たくさんの方々の力でできあがった商品です。未知なことに挑戦していたので、みんなで会議を重ねて組み立てていきました。

渡辺 理恵(デザイナー)、高橋 知子(開発担当)

――軽やかさだけでなく、乾きやすさも特徴なのだとか?

渡辺 はい、素材もですが、設計面でも乾きやすさを意識しました。ゴムやストラップの重なる部分は乾きにくいのですが、梅雨を想定した温度設定の実験では、従来のブラより約1.4倍早く乾きました。夏場はもちろん暖房で意外と汗をかきやすい冬場にもご活用いただきたいですね。

高橋 モニターさんによる着用実験でも、湿度の高い状態で発汗状態をつくってもらったのですが、通常のブラと比べて「熱がこもった感じがしない」「べたっとした不快感がない」という感想をいただいています。

ナチュラルな造形性と涼しく快適なつけごこちを追求

――先ほど、この素材で造形性を出すのに苦労されたとおっしゃっていましたが、どのような流れで今の形になったのでしょう?

高橋 最初はいちばんライトに着用いただける構造として、土台のないアンダーフリーにすることを考えていました。でも、バストの大きい方には土台があるほうが安定感が上がるので、いろんな方に選んでもらえたらという思いから、最終的に土台ありにしました。

試作段階には、さまざまな構造を検討。
試作段階には、さまざまな構造を検討。

渡辺 軽さを出したい、通気性をよくしたい、デザインもスタイリッシュに…と欲もたくさんあって。こっちを削るとあっちが…と検討を重ねました。パッド受けの形もたくさん試しましたよね。

高橋 めちゃくちゃ検討しました(笑)。もともとカップに伸びる素材を使っているものの、レース部は伸びないのでそれが着用したときのカップの形に影響を及ぼして。さらにパッド受けの形でもカップの形が変わったりして…。パッドの受け口も、最初は下側を考えていましたが、そうすると着用したときにカップの下側がもこっとしてしまったので横から入れるように変更して、造形性が出るように調整しました。

カップ内側の汗取りパッド。
カップ内側の汗取りパッド。

渡辺 カップの内側には汗取りパッドをつけ、ワイヤーループも吸汗速乾性がある素材を使っています。かさばらず乾きやすいので旅行にもオススメです。また、サイドにはフロマージュという生地を採用しました。薄いのに伸ばしてもきちんと元の形に戻る特性があり、透明感も備えた軽やかな生地です。カップ自体をナチュラルにしているぶん、安定感を出すのにどうしようか二転三転しましたが、形になりました。

サイドに採用したのはフロマージュという生地。
サイドに採用したのはフロマージュという生地。

インポートライクな感度の高いデザインで全4色展開

――表のデザインのイメージについて教えてください。

渡辺 「シアーシェイプ」が艶っぽいイメージということもあり、モードでエレガントな雰囲気を目指しました。インポートライクなデザインを意識しつつ、それをさらにそぎ落として究極の涼やかさや静寂、ここちよさを探してたどりついたのが、このデザインです。涼しさを求めながらレースの存在感もあるデザインにしたかったため、刺繍を施したチュールエンブロイダリーレースを使用しました。このエンブロイダリーレースって印象が重くなりがちなのですが、全体にうすく葉脈のようにはわせた柄にすることでさわやかな印象に仕上がりました。

モードでエレガントな雰囲気を目指した。

高橋 カップ部分の生地を2枚はぎにするか、3枚はぎにするかも迷いどころでしたが、最終的には2枚はぎに。そうすると、生地の性質上縫いづらいのですが、技術担当者や設計担当者が量産に向けて精度を上げてくださいました。

渡辺 2枚はぎで、前中心に縫い目がくるデザインにしたのは、バストトップの位置とあえて重ねるためなんです。海外ではヌーディな総レースブラも多いですが、日本の女性はバストトップがわかるのはやはり恥ずかしいですよね。そこで、デザインで工夫をしました。

渡辺 理恵(わたなべ・りえ)

――カラー展開について教えてください。

渡辺 全4色で、「シアーシェイプ」と連動させたのはブラックとグレージュです。加えて、夏を連想するブルーと、かわいくなりすぎない青みのあるピンクをご用意しました。

カラーは手前からBU(ブルー)、PU(ピンク)、LG(グレージュ)、BL(ブラック)。
カラーは手前からBU(ブルー)、PU(ピンク)、LG(グレージュ)、BL(ブラック)。

高橋 実は、6月ごろWEB限定で販売するチャレンジ的な関連アイテムもあるんですよ。新技術の接着手法を使ってカップの接ぎ目をフラットにすることで、アウターへの響きを軽減させて、より軽くシンプルに仕上げた商品です。社内でも「これは攻めすぎでは?」という意見が出たくらいです。

渡辺 こちらは、とにかく軽やかにつけていただきたいという思いがあって、土台のないアンダーフリーにしています。シンプルゆえにデザイン面で悩みましたが、アンダーにゴムをつけ、メッシュっぽい格子状にすることで汗をできるだけ逃がせられるように工夫しました。「売りやすく買いやすいオーソドックスなデザインの商品」を狙ったものではありませんが、これを機にワコールブランドに新しい風が吹けばいいなと思っています。

6月にWEB限定で発売予定の「接着シアーブラ」(BDB205)。カラーはLG(グレージュ)とPU(ピンク)。
6月にWEB限定で発売予定の「接着シアーブラ」(BDB205)。カラーはLG(グレージュ)とPU(ピンク)。

高橋 いろいろお話ししましたが、ぜひ手にとって、試着で羽のような軽やかさを実感していただければ何よりです。フリーカッティング素材で、同じく夏に快適に着用していただけるショーツも2種ご用意していますので、ぜひ上下でお揃えください。

  • 高橋 知子
  • 高橋知子(たかはし・ともこ) 卸売WBインナーウェア商品統括部 商品企画部 商品開発課
    2011年入社。ランジェリーやブラジャーのパタンナー、ニットのデザインチーフ等、様々なアイテムで経験を積み、現在はブラジャーの開発を担当。
  • 渡辺 理恵
  • 渡辺理恵(わたなべ・りえ) 卸売 WBインナーウェア商品統括部 商品企画部 商品企画三課
    2000年入社。ブラジャーのパタンナーを経て、「トレフル」など数々のブランドデザインを担当。2018年キャンペーンのチーフデザイナーを経験し、現在は「ラゼ」のチーフデザイナーを担当。
取材・文/シキタリエ
撮影/合田慎二