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  • 2023.04.19

スカーフの魅力を広げる「manipuri(マニプリ)」の世界

プリントスカーフはおしゃれ上手のマストハブ<前編>

スカーフの魅力を広げる「manipuri(マニプリ)」の世界

ソルベカラーやフラワーモチーフなど、遊び心のある色柄がトレンドに浮上している昨今。ワンピースやトップス、ボトムに取り入れるのは難度が高い……という人におすすめしたいのが、スカーフです。今っぽさとタイムレスな魅力を併せ持ち、コーディネイトのアクセントのほか、ドレスアップに防寒、ヘッドアクセやバッグの飾りにと汎用性も高いスカーフは、バリエーションをそろえてストックしておきたいファッションアイテム。今回は、美しい色彩とセンスを感じるプリントが、おしゃれ感度の高い人たちに支持されるブランド「マニプリ」のスカーフの世界を深掘りします。

色に、柄に、仕立てに、唯一無二のストーリーがある

色に、柄に、仕立てに、唯一無二のストーリーがある

人気セレクトショップに新作が並び、旬のブランドとコラボするなど、時代の空気を感じさせ、誰がどんな巻き方をしても美しく見えるマニプリのスカーフ。そんなマニプリは、2009年にスタートしました。ヴィンテージスカーフにインスピレーションを得たエターナルなムードは、シンプルなファッションにもしっくり調和し、着こなしにリズミカルなアクセントを加えてくれます。

年齢も感性も異なる5人のデザイナーが、毎シーズン新しいコレクションを発表。ボタニカル柄やバンダナ柄などマニプリらしい普遍的でベーシックなプリントのほか、モダンなテイストのアート感覚なものも増え、シックからヴィヴィッド、カジュアルからエレガントまで、世界観も多彩に。

主な素材は、使いこなしたような風合いがコーディネイトにとけこむ、やわらかな12匁(もんめ)のシルク。日本人の繊細な感性にしなやかにフィットする、ハリが出すぎないテクスチャーも魅力の一つです。また、言われなければ見逃してしまいそうな細部にもこだわりが。縁かがりはミシンを使わず、伝統的な手巻きで処理。裏から表にくるりと丸め、1針1針かがるフランス巻きで、ふっくら立体的に仕上げられています。角がきちんと直角になる高い技術も、国内に数人しかいない熟練の職人ならでは。その丁寧な手仕事が美しい仕上がりを叶えているのです。

職人が丁寧に色を重ねる「手捺染(てなせん)」の繊細で奥深い発色

職人が丁寧に色を重ねる「手捺染(てなせん)」の繊細で奥深い発色

リレーのバトンを渡すように、人から人へ受け継がれて完成するマニプリのスカーフ。デザイナーが手描きでおこしたデザイン画が国内の染色工場へ渡り、染色工程の前に「版作り」が行われます。マニプリの染色は、表現したい色の数だけ版を作り、染料を調合するハンドプリント「手捺染(てなせん)」。1色に対して1枚の版を使用するため、10色使用するなら10枚の版をおこす必要が。その1枚1枚を丁寧に、均等の力加減で版画のように色を重ねて染めていく工程も「手捺染」の真骨頂です。薄い色から順に同じ作業を繰り返し、刷り終わったら色ムラや版ずれがないかを細かくチェック。染料の調合も、経験豊富な職人の感覚を頼りにミリグラム単位で何度も調整します。この手間暇かけた染色と緻密な技術により、鮮やかで豊かな色彩と、輪郭ににじみのない繊細な柄を実現しているのです。

機械で大量生産したデジタルプリントでは出しえない、熟練の職人が昔ながらの技術で紡ぐ深みと繊細さ、そして温もり。生地にしっかり染料が刷りこまれるので、裏面まで鮮やかな色柄が楽しめるスカーフ。その仕上がりには、マニプリのプライドが宿っています。

サイズや柄、素材を賢く選んでスカーフ上手に

左:シルクスカーフ88 バルーンスカイ ピンク 右:シルクスカーフ88 フローイングポピー オレンジ 左:シルクスカーフ88 バルーンスカイ ピンク
右:シルクスカーフ88 フローイングポピー オレンジ

スカーフにはバリエーションがあり、それぞれ特徴があります。入門編に最適なのは、正方形の65×65cm。大きすぎず、小さすぎず、首もとに巻いたときも扱いやすいサイズです。アレンジを楽しみたい人におすすめなのが、88×88cm。たっぷりの大判なので、ふわっと羽織ってアウター代わりにしたり、ジャケットのインナーにしたり。エコバッグとしても使えます。

柄選びのポイントも覚えておきましょう。まずは、直感的に自分が好きな色が入っているもの。洋服とリンクする色が1色入っていれば、パッと見は派手に思えても、コーディネイトするとしっくり調和します。そしてプリントを選ぶときは、全体のイメージを見てから、中央ではなく角の柄をチェック。巻いたときに目立つのは、実は中央より角なのです。

スカーフの巻き方によっては裏面も出るので、裏面のプリントがどうなっているかも確認して。ちなみにマニプリは、染料が裏抜けし、裏まできれいに色が出るように仕上げています。

さらに、素材にもこだわりたいもの。おすすめはやさしい肌あたりで、通気性がよくベタつきにくいシルクやコットン、リネンなどの天然素材です。特にシルクは保温性と吸湿性にすぐれ、冬は暖かく夏はさわやか。レーヨンやポリエステルとは違う上質な光沢と適度なハリ、美しい発色も楽しめます。

簡単にアレンジを楽しめるマニプリオリジナル

三角形を2枚つなげたダイヤ型スカーフは2パターンの柄を楽しめるのも魅力 三角形を2枚つなげたダイヤ型スカーフは2パターンの柄を楽しめるのも魅力

ベーシックな正方形スカーフ以外に、マニプリオリジナルのシェイプもあります。巻きのテクニックに自信がない初心者におすすめなのが、簡単にアレンジしやすい35×140cmのダイヤ型。ボリュームが出すぎず、折り畳まないでそのまま結ぶだけで様になり、柄の出方もイメージしやすいはず。バッグのハンドルに巻くときも手軽に使えそうです。

左:アレンジの幅が広いボウタイミニ5 右:手首に巻いてバングル風に 左:アレンジの幅が広いボウタイミニ5
右:手首に巻いてバングル風に

もう一つのオリジナルが、5×130cmの細長いボウタイ型。名前のとおり、そのまま首もとにボウタイのように垂らしたり、リボン結びしたりするほか、手首に二重に巻いてバングル感覚で楽しむ、カチューシャやシュシュのようにヘッドアクセに使う、帽子に巻いてデコレーションするなどのアレンジも。プリントをアクセントで楽しみたい人や、男性にもおすすめです。

スカーフを長持ちさせるメンテナンス術

まず、アイロンをかけるときは、あて布をして低温が基本です。シルクやコットンなどの天然素材はアルコールで変色する可能性があるので、香水を吹きつけるのはNG。いまだに頻繁に使用する、除菌・抗菌系のアルコール消毒液もスカーフにつかないように注意しましょう。

そして、目には見えなくても、首もとや頭に巻いた日は汗などを吸収しています。身につけたあとは1日くらい陰干しして、乾燥させてからクローゼットに。直射日光と高温多湿を避けて、ハンガーにかけて保管します。複数のスカーフを持っていて場所をとりたくない人は、畳んで1枚ずつクリアファイルに入れて保管すると、選ぶ楽しみも広がります。

マニプリのシルクスカーフは、おうち洗いではなくクリーニング推奨ですが、においや黄ばみ、シミがなければ、シーズン毎のクリーニングで問題ありません。

大切に扱えば一生ものになるマニプリのシルクスカーフ。シンプルな服をセンスアップする、“映える”プリントスカーフを使いこなせば、おしゃれがもっと楽しくなるはずです。

取材・文/片岡えり
撮影/岡部東京
構成/江尻千穂
デザイン/WATARIGRAPHIC