今年もクリスマスシーズンが到来しました。年末年始のホリデーシーズンに向けて、日常のあわただしさやルーティンからちょっと解放できるひと時をつくりたいものです。
ランジェリーも、いつもの機能や合理性一辺倒ではなく、少し華やいだ気持ちにさせてくれるものを選んでみましょう。
華やいだ高揚感を味わう
新型コロナウイルスの感染拡大と長期化で加速した市場構造の変化にともない、世界のランジェリー産業はシーズンレス、タイムレスの傾向が強まりました。今回紹介しているものも、2021秋冬と2022春夏をまたがるコレクションが少なくありません。全体的にランジェリーの原点に戻ったようなクラシックなものが増えていますが、その中でも非日常的な高揚感を味わえるエモーショナルなものを紹介します。
衣ずれの音が聞こえてくるような美しい色のシルクに、絶妙な陰影と輝きが散りばめられたレース。肩や胸元、背中とからだの表情を魅力的に見せるスタイル――「VALERY(ヴァレリー)」はイタリアらしい美意識の中にも、モダンなスパイスが効いています。
一方で、より新しさを印象づけるのが、当初からサステナブルな物づくりを信条としているドイツの「Opaak(オパーク)」。マイクロモダールのラグジュアリーなリブ素材に、流れるような柄のデッドストックレースを組み合わせた、「やさしく心地よいハグ」のようなコレクションが発表されました。
家や旅先で豊かなホリデーを
ラウンジウェアやホームウェアにおいても、肌触りにすぐれたラグジュアリーな体験をしたいものです。
2021秋冬の「HANRO(ハンロ)」は、“A sense of home(家の感覚)”をテーマに、長年培ってきた同ブランドの遺産の上に立ちながら、まさに「帰るべきところ」「居ごこちのよさ」を想わせる、ハートウォーミングなコレクションを展開しています。
少量受注生産でイタリア製シルクのパジャマやローブ、ランジェリーをつくっているのが、「Morpho+Luna(モルフォ アンド ルナ)」(本社はイギリス・ロンドン)です。“ダンシングバタフライ”をテーマにした新しいコレクションは、アールデコ時代の日本のシルクのアーカイブからインスパイアされたもので、イタリアのコモにあるマンテロ社の再生シルク(Resilk®)が使われています。日本の大正時代から昭和初期にかけての爛熟した文化が、このようなかたちでよみがえるのはとても興味深いものがあります。
お気に入りの一点を身に着けて、希望に満ちたホリデーシーズンをお迎えください。
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武田尚子(ジャーナリスト)
インナーウェア専門雑誌の記者を経て、1988年にフリーランスに。以来、ファッション・ライフスタイルトータルの視点から、国内外のランジェリーの動きを見続けている。著書に『鴨居羊子とその時代・下着を変えた女』(平凡社)など。
「パリ国際ランジェリー展」など年2回の海外展示会取材は、既に連続30年以上となる。最新著書は『もう一つの衣服、ホームウエア 家で着るアパレル史』(みすず書房)。 http://blog.apparel-web.com/theme/trend/author/inner