
心浮き立つ春の訪れは、私たちに生きる希望を与えてくれます。いつもは外出するときのインナーウェアで季節の変化をいち早く体感していたものですが、今年は家で過ごすときに身に着けるもので感じていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。
今、ナイトウェアやラウンジウェアなどのホームウェアが、世界的に注目を集めています。すでに2021年秋冬物も発表されていますが、この分野は年間通して着られるものも少なくありません。ホームウェアを軸にしながら、日々の暮らしを見直してみましょう。
ヨーロッパ老舗ブランドの挑戦
ホームウェアのリードブランドである「ハンロ」は、数年前からラウンジウェアの刷新に取り組み、領域を超えた自由な着方を提案する姿勢が市場でも受け入れられつつあります。2021年秋冬のテーマ“Sense of home”のとおり、選択は着る人とそれぞれの暮らしに任されている、というわけです。
また、いつもはブラジャーを中心とするランジェリーブランドも、このホームウェアの分野に軒並み力を入れています。シルクのスリップやローブはもとより、着やすく便利なパジャマやニットと、アイテムが広がっています。


セクシーな雰囲気のランジェリーを得意とする「オーバドゥ」も、2021年秋冬シーズンはラウンジウェアが充実しました。特に、シーズンテーマである“宝石”にちなんだプリントが施されたものは、組み合わせがいろいろ楽しめます。
オーガニックコットンのやさしさ
暮らし全般にわたるサスティナブルや、美しさと持続可能性を兼ね備えたエコレスポンシブル意識の浸透とともに、オーガニックコットン素材に対する関心もさらに高まっています。

フランスにおけるオーガニックコットンランジェリーの草分けである「オクシデント」は、家で快適に過ごすためのラウンジウェアに昨年から力を入れてきていますが、これらが好評を得ていると話していました。

また、オーガニックコットンの二重ガーゼなどを使った、ここちよいパジャマを特徴にした新ブランド「パージュアエレ」が生まれています。これはパリ在住のフォトグラファー・篠 あゆみさんが闘病していたときの体験をもとに開発したもので、ノルマンディの畑で感じた“健やかな循環”が原動力になっているといいます。
何をどう選び、どう着るか。ホームウェアは、暮らしの足元を見直すよい機会を与えてくれますね。
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武田尚子(ジャーナリスト)
インナーウェア専門雑誌の記者を経て、1988年にフリーランスに。以来、ファッション・ライフスタイルトータルの視点から、国内外のランジェリーの動きを見続けている。著書に『鴨居羊子とその時代・下着を変えた女』(平凡社)など。
「パリ国際ランジェリー展」など年2回の海外展示会取材は、既に連続30年以上となる。最新著書は『もう一つの衣服、ホームウエア 家で着るアパレル史』(みすず書房)。 http://blog.apparel-web.com/theme/trend/author/inner