
右/ソフトなハイストレッチパワーネットをメインに、独自のカッティングやエラスティックバンドでからだへのフィット性を高めている。ともに「Le Journal Intime(ル・ジャアナル・アンティム)」より。
ジェンダーフリーが進む今の時代、女性のからだと心に密接につながったランジェリーにも、その動きが反映されています。ありのままの自分を愛すること、それぞれの「femininity」(女性であること)と向き合い、前向きに生きること。そういったフィロソフィーを体現したランジェリーが世界で生まれています。
肌で感じるカラーセラピー
2021年の新しいコレクションで、“クロモセラピー(カラーセラピー)”をテーマにしていたのは、ロシアの「Le Journal Intime(ル・ジャアナル・アンティム)」です(上の写真)。2人の姉妹によって5年前にスタートしたブランドで、ワイヤーなどのハードなパーツを使わず、ストレッチ性に富んだパワーネットを使って自然にからだにフィットするランジェリーを特徴にしています。非常にモダンで洗練された印象ですが、その物づくりの背景には、長年の術後向け着圧下着の経験にもとづくメディカルテクノロジーの裏付けがあるのです。
今回の新しいコレクションでは、クラウドブルー、ワイン、ミントといった微妙な色合いが、第二の皮膚のような軽く透明感のある素材にぴったりマッチ。気分の沈みがちな日々を明るく、活動的に変えてくれるような気がします。
女性のからだと心の悩みに応える
今回、オンラインのみで開催されたパリ国際ランジェリー展(ランジェリーコネクト)で目がとまったのは、乳がんの手術で乳房切除をした女性を対象にした取り組みです。従来からの専用ブラジャーに限らず、ナイトウェアなどへとアイテムも広がっています。「Breast Flower(ブレストフラワー)」(オランダ)はその名のとおり、コサージュのような花のかたちのクッション性のあるアクセサリーで、失った乳房の代わりに胸に潜ませておくパッドとしても使えるというものです。

これはカムロエン・ファルザンさんが自分の体験によって開発したもので、病気に打ち勝った証として「すべての女性が美しく輝けるように」という願いが込められています。
この他、「フェムテック」(女性の健康に関する問題をテクノロジーで解決するという意味の造語)がクローズアップされているのに伴い、生理用ショーツについては、国内でもさまざまな動きがありますが、これはまた改めて別の機会にご紹介したいと思います。

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武田尚子(ジャーナリスト)
インナーウェア専門雑誌の記者を経て、1988年にフリーランスに。以来、ファッション・ライフスタイルトータルの視点から、国内外のランジェリーの動きを見続けている。著書に『鴨居羊子とその時代・下着を変えた女』(平凡社)など。
「パリ国際ランジェリー展」など年2回の海外展示会取材は、既に連続30年以上となる。最新著書は『もう一つの衣服、ホームウエア 家で着るアパレル史』(みすず書房 2021年3月16日発売)。 http://blog.apparel-web.com/theme/trend/author/inner