
2021年がスタートしました。新型コロナウイルスの感染拡大で、2020年は世界的に今まで経験したことのない年となりましたが、身のまわりの身近なものが見直されるなかで、ランジェリーへの関心も高まっています。
今回は年頭にあたって、2021年春夏シーズンの新しいコレクションとともに、最近の商品動向や消費者意識の変化をお伝えしたいと思います。まるで国境が断絶してしまったような閉塞感がありながらも、基本的な傾向は海外も国内も共通していることがわかります。
また、店頭が閉まっていたり、外出を控えたりというなかで、Eコマースによる購入が一般的になったのも大きな変化です。
つけごこちのよい快適なものを
いくつかの海外ブランドへの取材で聞こえてきたのは、何より「快適性」が優先されているということです。在宅勤務も含めて、家にいる時間が長くなったことで、特にブラジャーは軽くやさしいつけごこちが求められているようです。
自分のからだに合ったもの、安心感のあるものを求める傾向が強く、メーカーの定番として支持されている継続品の動きがよかったようです。ロックダウンを機にワードローブを整理して、新しいものを買い替えている需要もあるというエピソードも聞かれました。

加えて、従来のきめ細かいサイズ展開のブラジャーだけではなく、サイズ選びがしやすいSMLといった融通のきくタイプに人気があるのは、オンラインの買いものが増えていることとも深く関係しています。
家で過ごすラウンジウェアへの関心
もうひとつ、大きな傾向としてあげられるのは、ステイホームの新しいライフスタイルに対応し、ラウンジウェアがクローズアップされていることでしょう。
これはナイトウェアブランドに限らず、ランジェリーを中心とするブランドも積極的に提案しています。ヨーロッパの店頭では、これまでもブラジャーとナイトウェアを組み合わせたコーディネイトはよく見られましたが、今ほど実生活の中で双方が接近していることはないのかもしれません。

リーディングブランドである「HANRO(ハンロ)」では、引き続きこの商品構成が充実していますが、ナイトウェア(スリープウェア)かラウンジウェア(部屋着)かといった使い分けは着る人が自由に選んでほしいというスタンスで取り組んでいます。
サスティナビリティの意識も一般的に浸透していることから、私たちのなかに無駄なものは買いたくない、長く着用できる高品質なものを買いたいという願望が強まっているのは確かです。

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武田尚子(ジャーナリスト)
インナーウェア専門雑誌の記者を経て、1988年にフリーランスに。以来、ファッション・ライフスタイルトータルの視点から、国内外のランジェリーの動きを見続けている。著書に『鴨居羊子とその時代・下着を変えた女』(平凡社)など。
「パリ国際ランジェリー展」など年2回の海外展示会取材は、既に連続30年以上となる。現在、ライフワークとなる新たな計画を進行中。 http://blog.apparel-web.com/theme/trend/author/inner