トップ 美の流儀 / HEART 【番外編/学びと美を考える】からだの自然な状態に立ち返れば、美は後からついてくる

からだのために「やってる人」の奥の手公開!

美の流儀

2018年4月25日

語り/矢田部英正(日本身体文化研究所 主宰)

HEART

【番外編/学びと美を考える】

からだの自然な状態に立ち返れば、美は後からついてくる

「美」をコンセプトにした学びの場、ワコールスタディホール京都と連動した美の流儀【番外編】。今回は、「日常動作をみがく身体技法」の講座を担当される矢田部英正先生をご紹介します。 矢田部先生が主宰する日本身体文化研究所。文化史家・造形作家として、東洋の伝統的な身体技法を研究しつつ、姿勢研究の一環として椅子のデザイン・製作も手がけている。 矢田部先生が主宰する日本身体文化研究所。文化史家・造形作家として、東洋の伝統的な身体技法を研究しつつ、姿勢研究の一環として椅子のデザイン・製作も手がけている。 ――ワコールスタディホール京都での3回の講座は、まず初回に「座る」というテーマからスタートします。これにはどんな理由があるのでしょうか。

日本の文化は、着物の着方から食事の作法、書道や武術などどれをとっても、「座る」ことから出発しています。日本だけでなく、東洋の文化のすべて(中国を除く)がそうでした。禅やヨガの歴史を考えてみても、座ることで心とからだの調和を保ち、自然と調和して生きるための基本としてきました。ところが現代の西洋医学では、座ることによる健康へのリスクにウェイトを置いて、座ることはやめましょうという流れができてしまった。欧米の理論を鵜呑みにせず、改めて「いかに座るか」に焦点を当てよう、というのが趣旨です。

というと、正座を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、座り方にもいろいろあって、胡座(あぐら)や立て膝、椅子座など、どれでも楽に疲れず座れる方法はあります。それには足首や股関節などからだの柔軟性が必要で、これがないと、足のしびれや、腰の痛みにつながってしまいます。まずは楽に座るための身体能力を養うことを学んでいただこうと考えています。

――「疲れずに」はとても大事ですが、ぜひとも「美しく」座る方法も知りたいものです。

姿勢が整うと、(東洋医学でいう)"腎"の働きが高まります。腎は内臓の中でも気を生み出す役割を担っているので、血液を循環させて排泄を促し、老廃物が体内から出やすくなる。その結果、肌の美しさにもつながるのです。腎臓とストレスの関係は医学的にも実証されていますが、精神状態も安定してくるし、ここちよさが伴ってきます。「自然の状態が気持ちいい」という感覚を味わっていただけるでしょう。

特別なことではなく、「自分本来の自然がどこにあるか」を意識し、骨格の構造を正しく配置する。自分の中に拠りどころとなる基準ができると、自信がわいてきます。そうすれば、肉体の衰えに影響されず、年相応に自然と美が現れるでしょう。これは、2回目の講座のテーマ「歩き方」でも共通することです。 矢田部先生が製作しているオリジナルチェア。上半身を骨盤で支える椅子を提唱し、「座れば座るほど元気になる」というコンセプト。オーダーも可能。 矢田部先生が製作しているオリジナルチェア。上半身を骨盤で支える椅子を提唱し、「座れば座るほど元気になる」というコンセプト。オーダーも可能。 ――「歩き方」は個人のクセもあり、なかなか難しそうです。

座り方と同様に、立ち方も歩き方も「からだの自然」に立ち返るためのバロメーター。そのための足指のケア、靴の選び方なども講座ではお話しする予定です。歩き方の実践では、歩くコツを学ぶ前後で動画を撮って比較もします。その変化には、みなさん驚かれると思いますよ。

以前に教えていた女子大で、2,000人の足の裏の健康調査をしたことがありました。その中で健康な足はたったの3%。97%の女性は外反母趾、巻き爪、浮足...など、足幅の狭い靴や歩き方などの影響を受けています。それが、腰痛や冷え、むくみなど、さまざまな不調の温床になっている可能性があります。講義の中では、足指1本1本が地面をつかめるか、感覚があるかをチェックし、自然なからだに近づけていくのですが、コツをつかめば案外だれでも、西洋式にも和式にも歩けるものです。 ――ユニークなのは、3回目の講座が「快眠法」。眠るにも身体技法があるのですね。

仏教には寝禅というものがあるのですが、講座ではグッズを使いながらそれを実践します。仰向けで寝て呼吸をしながら腰や背中の筋肉をゆるめていくと、からだ全体が床にピタっとついて、よい睡眠がとれるのです。参加者にはそれぞれの腰や背中の緊張具合を見て、緩める方法も実践します。これができると、どんな硬くて薄いふとんでも、どんな場所でも、ぐっすり休めるからだができるんです。

ストレスはメンタルなものでも、からだの中に緊張をつくります。すべて解放するのは難しくても、からだの筋肉をゆるめる技術がわかるだけで、多くのストレスは解放できるでしょう。参加者それぞれ、自分のどこが詰まっていて、どこを緩めると快適に過ごせるのか、そして少しずつよくなっていく気持ちよさを、実感していただければと思います。

衣食住が西洋化してきた中で、私たち日本人は禅や座の文化の良さを見失いがちです。そこにはもともと、自然と調和する素晴らしい叡智がありました。それらが生活の中に多く残る京都で学ぶ機会は、とても貴重です。学校では教わらない日々の基本動作、自然にかなったここちよい動き方へと変えていくアプローチの仕方や難しさは、人によって違います。ぜひ一緒にそのコツを見つけていきましょう。 自身で製作したカトラリー。人間工学を元にスプーンの合理的な握りの形を導き出し、それが美しい所作や動作にもつながる。 自身で製作したカトラリー。人間工学を元にスプーンの合理的な握りの形を導き出し、それが美しい所作や動作にもつながる。

矢田部英正 日本身体文化研究所 主宰
武蔵野美術大学講師 (文化史家/造形作家)、身体文化論専攻。学生時代は体操競技を専門とし、全日本選手権等に出場。選手時代の姿勢訓練が嵩じて日本を中心に世界各地の身体技法を研究する。文化女子大学大学院(現文化学園大学)博士後期課程にて和装と身体のかかわりを研究。国際日本文化研究センター研究員を経て博士号取得(被服環境学)。学位論文は『たたずまいの美学~日本人の身体技法』として中公叢書より刊行。姿勢研究の一環として1999年より椅子の開発に着手し、開発、デザイン、制作を手がける。 http://www.corpus.jp

ワコールスタディホール京都 矢田部英正先生のワコールスタディホール講座情報
【からだの使い方ワークショプ】日常動作をみがく身体技法(全3回)
第1回 座り方の基礎 〜ラクに座るための条件〜
2018年5月19日(土)
第2回 歩き方の基礎 〜「からだの自然」にかなった立ち方、歩き方〜
2018年5月26日(土)
第3回 快眠法の基礎 〜深い睡眠を効率よくとるための技〜
2018年6月16日(土)
各回14:00〜16:00
料金/12,960円(税込/全3回)

取材・文/南 ゆかり

※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
※この記事に含まれる情報の利用は、お客様の判断と責任において行なってください。

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