トップ 教えて、ドクター! / BODY 【特集/続・いざ温活!】腸に大きなダメージを与える『冷え』

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教えて、ドクター!

2015年10月14日

先生/藤田紘一郎(医学博士、東京医科歯科大学 名誉教授)

BODY

【特集/続・いざ温活!】

腸に大きなダメージを与える『冷え』

腸に大きなダメージを与える
37度でよく働くミトコンドリアエンジンとは!?
さまざまなからだの不調を起こすことが知られている、からだの"冷え"。今回は、からだの免疫機能の大きな役割を担う"腸"にスポットを当て、腸と冷えの関係について、東京医科歯科大学名誉教授、藤田紘一郎先生に教えていただきます。カイチュウ博士の名でも知られる藤田先生から聞く、腸にまつわるエピソードの数々は驚きの連続。腸と冷えの密接な因果関係を学びましょう。

「腸を良好に働かせるためには、冷えは大敵です。その理由を深く理解してもらうために、まずはエネルギーの話をしたいと思います。人間のからだには、エネルギーをつくりだすための2種類のエネルギー生成系があります。ひとつは、血中のブドウ糖を利用して瞬時にエネルギーをつくりだす解糖エネルギーと、もうひとつは、酸素を吸ってエネルギーを生み出すミトコンドリアによるエネルギー生成です。この2つはエネルギーを生み出すエンジンのようなもので、ここではわかりやすく、"解糖エンジン""ミトコンドリアエンジン"と呼ぶことにします。

このふたつのエンジンは、生まれた背景や、歴史も違います。解糖エンジンの歴史は古く、地球上に生物が生まれた"45億年"も前に誕生しました。その時代の地球には、もちろん酸素がありませんから、生物は酸素ではなく、"糖"を、エネルギーにしていたのです。

やがて、地球上には菌が生まれ、菌は炭酸ガスを吸って、酸素を吐き出します。私たちが生きていくのに不可欠な酸素が、地球に満ち、そのなかで生まれたのがミトコンドリアです。これは、酸素を取り込むことによってエネルギーとし、結果、植物や動物や人間は爆発的な進化を遂げてきました。

このように、人間は2種類のエンジンを搭載して生きています。解糖エンジンは、瞬発力を発揮するにも必要ですし、精子なども解糖エンジンが動かしていますから、子づくりにも大切なもの。いわば原始的なエネルギーと言えます。対して、ミトコンドリアは、持続力のエネルギー。長生きするためのエネルギーであり、脳や腸、肝臓や心臓もこのエネルギーを必要としています。

持続的なエネルギーをつくるミトコンドリアは、消化や免疫機能の活性化など、からだの機能を保持するためにも大切で、ミトコンドリアのエネルギーがスムーズに動いていることは、からだの健康、若々しさを保つためにもとても重要なことなのです。

ふたつのエネルギーは、活発に働く温度も異なります。解糖エンジンは、32度〜36度の低い温度で、ミトコンドリアエンジンは、37度近辺でよく動きます。
ですから、からだが"冷え"ていると、ミトコンドリアをきちんと働かせることができないのです。

ミトコンドリアが体中でもっとも多い場所は...腸。からだを冷やさないことで、腸でミトコンドリアエネルギーが効率よくつくられること、それは、腸の働きがよくなることでもあります。
幸せホルモンも、ビタミンの合成も。多彩に働く腸!
ではいったい、腸は具体的にどんな働きをしているのでしょうか。腸は、消化だけを行う器官だと思っている人も多いかと思いますが、とんでもありませんよ。ビタミンBやKなどを合成しているのも、ホルモンや酵素を合成しているのも腸。幸せ物質と呼ばれるドーパミンやセロトニンをつくっているのも腸です。

よく「健康のために、食物繊維をとりましょう」と言われますが、私たちのからだは、食物繊維それ自体を消化する酵素は、腸以外の場所にありません。腸内細菌が分解して栄養素にしてくれるから、食物繊維を食べる事にも意味があるのであって、そのときにからだが冷えていて、腸内細菌がきちんと働いていなかったら、どれだけ食物繊維を摂取したって何の効果もありません。

腸は、生物が"脳"を獲得するずっと前から、"腸だけで"生きていた時代がありました。腸が行っている、消化や吸収、免疫という3つの機能さえあれば、脳がなくても、生きてこられたのです。

食べものに関しても、からだを冷やすような食べ物に対しては、腸は便秘や下痢など、排泄物を通して、的確なメッセージを常に送ってくれる優秀な臓器。対して、脳といったら、からだを冷やすような食べものに対しても、喜んだり、もっとくれ!なんて指令を出したり、困ったものなんですよ。この話は詳しくまた次回にしましょう」

----腸は "億単位"でさかのぼれるほどの深い歴史があったのですね。幸せホルモンをつくっているのも腸だったとは、驚きです。次回は、腸を冷やさず、活発に動かすための10策をお伺いします。
藤田紘一郎

藤田紘一郎 東京大学医学系大学院修了、医学博士。金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授を経て、現在東京医科歯科大学名誉教授。専門は、寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞受賞。2000年、ヒトATLウイルス伝染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。著書に『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)、『体をつくる水、壊す水』(ワニブックス)など多数。

取材・文/大庭典子(ライター)
イラスト/190

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