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カラダやシタギのコトバ 新解釈・連想・妄想コラム

新訳からだ辞典「パンツ一丁」

2015年7月29日

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

HEART

今月のコトバ「クーパー靱帯」

今月のコトバ「クーパー靱帯」
イケメンがみつけたセンイ
クーパー靱帯(じんたい)。波乱に満ちたワケアリの物語を想像させるマニアックな専門用語だ。似たような印象を与える言葉にドーバー海峡、スーパー銭湯、ハレー彗星、バルチック艦隊などがある。

クーパー靱帯とは、バストの中に網の目のように広がるコラーゲンを主成分とした繊維束であるらしい。1840年、イギリスの外科医であり解剖学者のアストリー・クーパー氏が発表した。肖像画を見ると、モーツァルトを知的に洗練させたような、そこそこのイケメンだ。

英語版ウィキペディアには「クーパー靭帯の内部サポートがなければ、バストはそれ自身の重さで下垂し、正常な形と輪郭を失う」(Without the internal support of this ligament, the breast tissue sags under its own weight, losing its normal shape and contour)と冷静にコワイことが書かれている。しかもクーパー靱帯はきたえることができず、切れたり伸びたりすると修復できないという。そんなデリケートな繊維たちが、バストの運命を支えてくれていたなんて!
下垂こそセクシー
クーパー靱帯にストレスを与えるのは、重力や長時間の揺れなど。皮膚のうるおい成分を外側から補う美容液のように、クーパー靱帯を外側からサポートするのがブラジャーなのだろう。裸足でどこでも歩く生活をしていると、足の皮が靴のように厚くなり、画びょうを踏んでも気づかなくなるという。裸でバストをゆらす生活をしていると、ブラの分だけバストの皮が厚くなり、重さで下垂してしまうのだろうか。キャー。(※妄想です。ワコールは完全否定)

しかし、皮の厚い足や下垂した胸がダメということもないはず。もともとバストの形や大きさ、クーパー靱帯の広がり方は人それぞれ。人気投票で上位にランクインされるバストというのはあるだろうが、それはいわゆる大量消費型。垂れ方、流れ方、広がり方、左右の違いなど、スペシャルな価値がもっと見直されてもいいのでは?

マリリン・モンローは、左右のヒールの高さを意図的に変えることで、セクシーにお尻を振る「モンロー・ウォーク」を生み出したという。バランスの悪さや危うさこそがセクシーの奥義なのだ。下垂した胸も、デカダンスな胸と表現すれば、セクシーなアート作品になるだろう。
ビンテージバストへの道
からだは成長し、やがて老化する。このような容姿の変化を「劣化」という人がいるが、やめたほうがいい。先日、実年齢より10歳以上若く見える美しい先輩が「最近、劣化しちゃって」と言うので私は耳を疑った。お手本にしたい憧れの人が劣化しているのなら、この世のすべては大劣化という終末に向かって突き進んでいるだけじゃないか。一瞬、そんな暗い気持ちになったのだ。それなのに、老けて見える人が「私、いくつに見える?」(5歳以上若いと言わないと怒る)と自信たっぷりだったりするから、世の中は謎に満ちている。

見習いたいのはワインだ。ワインの熟成とは、ゆるやかな酸化であるという。急激に酸化したワインはまずくて飲めないが、理想的な環境でゆっくり変化させることで、いいものなら何十年も楽しめる素晴らしいものになる。バストだって急激に老化しないよう、大切に熟成させればいい。樽熟成ならぬブラ熟成によって、クーパー靱帯は豊潤なビンテージ・クーパーになるだろう。いい時間を過ごした人の顔にステキな表情じわが刻まれるように、いい思いをさせてあげた胸は、ブラをとったときの表情にこそ、味わいが出るはずなのだ。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ランジェリー、映画愛好家。最近いいなと思ったのは、映画「暗くなるまでこの恋を」で妻(カトリーヌ・ドヌーブ)の裏切りに気づいた夫(ジャン=ポール・ベルモンド)が、彼女の下着を次々と暖炉で燃やすシーン。

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