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カラダやシタギのコトバ 新解釈・連想・妄想コラム

新訳からだ辞典「パンツ一丁」

2015年6月24日

文/相川藍(あいかわ・あい)
イラスト/白浜美千代

HEART

今月のコトバ「フィッティング」

今月のコトバ「フィッティング」
オートクチュール気分を味わうには
フィッティング(FITTING)。試着という言葉を英語にするだけで、スレンダーな男に後ろからふいに抱きしめられ「もう離さないよ」と耳元で囁かれるようなスリリングな響きになる。もとの単語フィット(FIT)は「洋服などの型やサイズがからだにぴったり合うこと」。イギリスでは「セクシー」を意味するスラングであり、名詞形のフィッティングにも、その残り香が感じられる。

フィッティングには、「仮縫いの着付け」という意味もあるから「ご試着」「ご調整」とていねいに訳したいところ。この言葉のもつオートクチュール感覚は、ドレスを仕立ててもらわなくても、ジーンズの裾上げをしてもらったり、ブラのストラップを調整してもらったりする時に少し味わえる。スタッフの手を借りたい時には「試着していいですか?」ではなく、「フィッティングお願いできますか?」と言えば、オートクチュール気分はさらに盛り上がるはずだ。
毎日がフィッティング
自宅でもひとりでフィッティングごっこはできる。手持ちの服をどう着ようか、あれこれ工夫する調整の技術こそがフィッティングといえるからだ。ぱつんぱつんのスカートを無理矢理はいてしまったが、おなかを引っ込めるためにさらにガードルをつけるべきか? シャツからブラが透けてしまったがシャツを替えるかブラを替えるかこのままでいくか上着を羽織るか? そんな危機的状況もできるだけ楽しんでしまいたい。散らかった寝室をフィッティングルーム、洗面所をドレッシングルーム、トイレをパウダールームと命名し、忙しい日々を優雅に乗り切ろう。

どうしても欲しかったブラがしっくりこなかったとき、私は、お店の人に初めてブラのフィッティングをしてもらった。「失礼します」と手袋をした手をすっとブラに差し入れ、瞬時にフィットさせてくれた彼女のテクニックは忘れがたい。冷たかったらひゃっと叫んでしまうだろうし、くすぐったくてもほえぇと変な声が出てしまうところだが、「いま何した?」という感じの瞬間芸だったのだ。フィッティングのプロには、ゴッドハンド研修があるのかもしれない。バストが豊満な場合はもう少し時間がかかるのかもしれないけれど、まあ、それはおいといて。
他力本願の安心
最近は、ネットで買いものをすることが増えて、お店に足を運ぶ回数が減ってしまった。だけどその分、久しぶりに買いものに行くとうきうきしてしまう。服や下着を見ればあれこれ試着し、本屋さんに行けばあれこれ立ち読みし、ワイン屋さんに行けばあれこれ試飲して酔っぱらう。好みのものをさっと出してくれたり、最新情報を教えてくれたりするのもうれしくて、リアル店舗はフィッティングを楽しむ場所なのだなとつくづく思う。

買いものには「必要なもの」と「欲しいもの」がある。必要なものはネットで買えばいいが、欲しいものはお店で買いたい。必要性を説明できないものには、イケナイことをするような後ろめたさがあるから、言い訳や共犯者の存在が不可欠なのだ。賛同者がいないセクシーブラは孤独で不安だが、ゴッドハンドの店員さんに「大丈夫です」と太鼓判を押してもらえたら、これほど心強いことはない。

相川藍(あいかわ・あい) 言葉家(コトバカ)。ランジェリー、映画愛好家。最近いいなと思ったのは、映画「暗くなるまでこの恋を」で妻(カトリーヌ・ドヌーブ)の裏切りに気づいた夫(ジャン=ポール・ベルモンド)が、彼女の下着を次々と暖炉で燃やすシーン。

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