トップ 商品づくりの現場から / BODY 歩行で脚力トレーニング。 『健脚ウォーカー』ヒットの秘密!

インサイドストーリー

商品づくりの現場から

2015年5月13日

語り/山田隆登(ワコール人間科学研究所)

BODY

歩行で脚力トレーニング。 『健脚ウォーカー』ヒットの秘密!

いつまでも自分の脚の力で、健康的に、楽しく歩きたいというのは、年齢を重ねるほど、誰もがもつ願いです。はいて歩くことで、歩幅が広がり、歩行のスピードもアップし、歩くことじたいが脚力のトレーニングになる。さらに歩くことが楽しくなる...、こんないい循環が生み出せる商品があったら、と開発が始まり、誕生した「健脚ウォーカー」。その鍵は意外にも"皮膚"にありました。完成にいたるまでに苦労したこと、こだわり、商品の魅力について、開発を担当した山田隆登に聞きました。  健脚ウォーカー
快適に歩くためのヒントが
"皮膚"にあった!?
――まず最初に「健脚ウォーカー」とは、どのようなものなのか教えてください。

山田
 年齢を重ねると、だんだんと脚力が弱まり、それによって、ますます歩く機会が減り、さらに筋肉が衰えてしまう...という悪い循環に陥ってしまう方が多くいます。そうなってしまう前に、日常のウォーキングをしながら脚力をつけることをサポートする商品はできないかと、開発したのが「健脚ウォーカー」です。開発の際に着目したのは、高齢者の方の"膝の上のたるみ"です。

――膝上のたるみですか? たるみと歩行にどんな関係があるのですか?

山田
 はい。想像してもらえるとわかりやすいと思うのですが、歩く時にたるんでシワシワになったダボついたボトムをはいているのと、脚にぴったりとフィットしたスパッツでは、明らかにスパッツのほうが歩幅も大きく、スピードも出ます。歩きやすいですよね。対してダボダボのボトムでは、歩幅も小さく、歩行の動きも小さくなってしまいます。

――ダボダボパンツとスパッツ、歩きやすさの違いが想像しやすいですね。

山田
 私たちは、洋服を皮膚に置き換えても、これと同じことが起きているのではないかと考えました。そこで皮膚に着目し、専門の先生方とディスカッションを重ね、研究をしていくと、さまざまなことがわかったのです。ひとつは、皮膚には、"感覚のセンサー"がたくさんついていること。
皮膚のハリが失われると、
歩行にも影響が?!
――皮膚の"感覚センサー"は何を捉えるのですか?

山田
 皮膚の感覚センサーは、外的な暑さや寒さを感知することはもちろん、内側のからだの動きの状態を捉えている可能性があることもわかりました。「今、この部分がこれだけ動いている」と、からだの動きを皮膚のセンサーが把握することによって、それに応じた筋肉が動く、ということです。

この皮膚のセンサーの感度は、皮膚と深い関係があり、皮膚のハリがないたるんだ状態では、動きを適切に把握できず、筋肉の動きが悪くなる可能性があることがわかりました。

――肌のハリは、美しさ以外にも影響があるのですね。

山田
 化粧品売り場などで、肌のハリを測る器械を使った事のある方も多いと思いますが、計測器はミニ掃除機のようなもので肌を吸引し、瞬時に全部が戻ってくる状態を100%とし、戻ってくる率、肌がはじく度合いを測っています。私たちは、計測器で脚のさまざまな箇所のハリを計測しました。すると、年齢が上がるほど、ハリがもっとも低下しているのが、"膝上の皮膚"だという結果になりました。

――膝の上にお肉が乗っかった状態。心当たりがあります。

山田
 "膝上のたるみ"は、脚の動き、つまり歩行にも影響を及ぼしていると考えたのです。それを明らかにするために、脚の皮膚のさまざまな位置にたるみを引き上げるテーピングを施して、からだの実感がどのように変化するかを詳細に突き詰めていきました。すると、やっぱりなぜだか"膝上のたるみ"を押さえると、明らかに感覚が変わり、とても歩きやすくなるということが体感できたのです。

――いちばんハリを失っていた膝上が歩行にも影響を与えていた、ということですね!

山田
 はい。「膝上のたるみを引き上げれば、歩幅が広く、速い、脚力アップに適した歩き方への変化が期待できる」という論理を商品化したインナーウェアが、「健脚ウォーカー」です。 健脚ウォーカー
ふたつのラインで
膝上のたるみをスッキリ!
――具体的にはどのような仕組みですか?

山田
 膝上に配したU字のサポートライン(下の図①)が膝上3~4cmのたるんだ部分を引き上げ、その状態をキープするよう設計しています。このU字ラインと、太ももの内側と外側のラインを引き上げるサイドのアンカーライン(②)が合わさり、膝を曲げたときに上向きの力が加わるようになっています。 健脚ウォーカーの仕組み ――歩き方を変えるために、皮膚に着目したというのが画期的ですね。

山田
 もともと私は皮膚の研究をしていて、「皮膚の状態を変えることで、からだの動きに対して何かしらのアプローチができそうだ」ということまではわかっていましたが、その先に進む突破口を見つける事がなかなかできず、苦労しました。

ワコールでは、CW-Xなど筋肉に対してアプローチする商品をつくっていますが、それらの商品は、筋肉にまで届く力を発揮するために多少の締め付けの強さがあります。このことを負担に感じる高齢者もなかにはいらっしゃるので、では、筋肉にまで届かなくても、からだの表層部分に届き、効果を発揮できる"皮膚"に、新たな可能性を探っていきました。

「健脚ウォーカー」をはいて歩いたモニターさんからは、「脚が上がりやすい」「軽やかに歩ける」などの声が多くあり、開発から3年以上かけた日々が報われたようでうれしく思います。この商品で、高齢者の方の日常の歩行が脚力トレーニングに適した歩き方になり、いつまでも快適に歩ける一助になればと願っています。
山田 隆登(やまだ・たかと)

山田 隆登(やまだ・たかと) 人間科学研究所 製品因子研究ユニットリーダー。立命館大学 生体情報研究室卒業。大学では、人間の脳波や心電図などの生理情報や、感覚や感性などの心理側面に関する情報、反応や追従などの行動能力や日常生活行動に関する情報など、人間の生理・心理・行動に関わる生体情報を研究。2007年入社後、日常から運動シーンにおける不具合を解消する新商品の開発を行っている。コンディショニングウェアCW-X(シーダブリューエックス)の柔流(ジュウリュウ)やサポートタイツの開発、グラッピーのひざサポート、股関節ガードルの評価など、一貫して製品の研究開発に携わっている。

取材・文/大庭典子(ライター)
人物撮影/合田慎二

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