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インサイドストーリー

商品づくりの現場から

2015年3月18日

語り/赤野美紀(ウイングブランド事業本部
メンズインナー商品企画課・課長)

BODY

機能、素材、シルエットの全方位で はきごこちの良さを目指す!

メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」。男性が今までに味わったことのないここちよさを生み出す鍵は、女性インナーの開発で培った、ワコールならではのノウハウや思想にありました。メンズインナー商品企画課長の赤野美紀が、その秘密を公開します! メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」
女性下着で培った"快適性"の技術を
メンズ下着にも活用
――男性のためのアンダーウェア「BROS(ブロス)」が誕生したのはいつですか?

赤野
 1991年ですから、今から24年前です。これまでのメンズインナーを変えていこう、新しいものをつくろうという意気込みでスタートしました。商品開発にあたっては、女性インナーをつくり続けてきたワコールのモノづくりの技術や開発思想を受け継いでいます。今、BROS(ブロス)の全商品は、ワコール人間科学研究所の3D計測(※)データを基に設計されています。 ※レーザーを当ててからだに触れずに瞬時に計測し、立体で統計解析すること。
男性の測定は2006年ごろ、クロスウォーカーをつくるときに"ジャストフィット設計"を行うために始めたのがきっかけです。ただ、男性の計測モニターを募るのはなかなか大変で...。最初はワコールの男性社員に計測させてもらったんですよ、健康診断にまぎれて(笑)。 3次元計測装置によるサイズ計測 3次元計測装置によるサイズ計測(ワコール人間科学研究所) ――それは、ナイスアイディアですね(笑)。

赤野
 はい。おかげで20代から60代まで万遍なくデータを集めることができました。このジャストフィット設計が商品化されると、画期的だと喜ばれる一方で、新たな問題も発生しました。肌と下着がぴったりと密着するのを"不快"だと感じる人が一定数いることがわかったのです。この時はちょうど、ボクサーパンツが大流行していて、それまではブリーフかトランクスの2択だったところに、ボクサーパンツという体験したことのない密着感を味わって、男性も"快""不快"について意識し始めたのだと思います。「BROS(ブロス)」としても、今後ボクサーパンツの競合商品が多く出てくるなかで、どこで差を付けるか、何に優位性をもたせるかを考えたときに、"快""不快"の感覚に焦点を当てた機能性を追求したいと考えました。

そこで、インナーの快適性を追求し、研究を行っている人間科学研究所に相談したところ、肌が感じる快、不快という感覚は、男女同じであることがわかりました。ならば、今までに女性下着の開発で培ってきた快適性のノウハウや人間科学研究所がもっているさまざまな"人間情報"を基に、メンズのモノづくりをしていくべきだという考えに至りました。 メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」左/JUST FIT BOXERS 右/SKINNY BOXERS 左/BROS(ブロス)JUST FIT BOXERS
右/BROS(ブロス)SKINNY BOXERS
ムレに対応する風の通り道、
動作に合わせた生地の設計。
からだの構造に沿う機能で"快適"を実現!
――"快""不快"を下着に反映させるというのは、どういうことでしょうか。

赤野
 ひとつは「ダブルエアスルー」という構造です。暑い部屋で汗をかいていく実験をしたところ、からだの表面温度や汗のかき方が均一ではなく、からだの熱が逃げやすいところ、汗をかきやすいところと逃げにくいところがあることがわかりました。このようにからだが反応することで、男性の鼠蹊溝(そけいこう)の上部やおしりの割れ目のくぼんでいるところは蒸れやすい、熱がこもりやすいなどの不快感につながります。

この部分に"風の通りみち"ができるよう設計したのが「ダブルエアスルー」という機能です。メッシュ部分から入り、動くときに生じる空気が、熱がこもりやすいくぼんでいるところを通って上部のメッシュ部分から出て行く流れをつくりました。 メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」AIR VENT BOXERS BROS(ブロス)AIR VENT BOXERS
――メッシュ部分は、風の出入り口ですね!

赤野
 着用テストでも、同じ商品に「ダブルエアスルー」機能が付いているものといないものを、服を着た状態ではき比べてもらったところ、この機能が付いていると、ムレが少なかったという結果に。普段はボクサーパンツ派でも、暑い日は密着感がつらいと、夏だけはトランクスをはくという人もいますが、「ダブルエアスルー」機能付きなら、オールシーズン快適にはいてもらえます。

――赤野さんは、レディスの部署からメンズに異動したのだそうですね。

赤野
 はい。部署を異動し、最初にメンズのフィッティング光景を見たときは、衝撃でしたね。ある人はパンツの裾がずり上がっていたり、ある人はおしりが食い込んでいたり...全然フィットしていないんです。私から見ると「はいていて、気持ち悪くないですか?」というようなフィット感でも、男性は「特に問題ありませんよ」と。いくら問題ないと言われても気になりまして、また人間科学研究所に相談をすることに。

人間のからだは、腕を組むとひじの皮膚が伸びますし、椅子に座るとヒップの表面積が倍になるなど、動きに合わせて皮膚の伸縮を繰り返しています。さらに、ひとつの動作でも皮膚が伸びる方向はさまざまだとわかりました。男性の下着のズレや食い込みは、からだの動きに生地の伸縮が追い付いていないことも一因。そこで、からだの動きに沿って、生地の"地の目"を変えられないかと考えました。

――生地の"地の目"とは何ですか?

赤野
 地の目とは、布地の縦と横の布目のことです。パーツごとの伸び方向を調べて、極力皮膚の伸展に沿うように、あるパーツは縦方向の地の目を使い、あるパーツは横方向の地の目を使う。地の目を切り替えながら生地を組み合わせて、動きに合った生地の伸びが得られるよう計算しました。これが「動作追随機能」です。 メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」生地の地の目についての説明
――いろいろな方向の地の目が組み合わさっているのが、わかります。

赤野
 着用テストでは、繰り返し屈伸をしてもらうなどで効果を検証しましたが、「動作追随機能」があるパンツは、ウエストのずり下がりや裾のずり上がりなどが少なく安定しているという結果が得られました。実際、お客さまからも「フットサルの日はこのパンツをはく」などの声もあり、機能性については詳しく知らなくても、からだを動かす日にはこのパンツ、と無意識に選んでもらえていることがうれしかったです。
ファッショントレンドを
邪魔しないシルエットづくり
――男性の下着への関心は、以前よりも高まってきているのでしょうか。

赤野
 そうですね、ファッションとの兼ね合いもあって高まっていると思います。スーツは全体的に細身になっていますし、半袖シャツも昔のような肘のあたりまで袖があるようなドカッとしたものは減っています。おしゃれなアウターを着ていてもインナーウェアがちょろっと出てしまっては台無しなので、ファッションの流れを汲んで、脇がフィットするものや、ローライズのズボンでもパンツが出ないような設計のものなど、アウターを邪魔しないシルエットに仕上げています。 メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」 ただ、まだ男性のほうでアウターウェアに合わせた下着選びが浸透していないところもあって、たとえば細身の薄い生地の白いズボンの下に黒のパンツを合わせてしまって、あぁせっかくおしゃれなのにパンツが透けてる...といった現象があったり。響かない下着に対する知識に対しては女性のほうが豊富なので、そこも提案していきたいと考えています。

男性は、いくら響きにくいとはいえ、ベージュの下着にはきっと抵抗があるでしょうから、そういうときは薄いグレーのパンツをはく、などアウターをカッコよく着こなすためのインナーウェアづくりも女性目線が生かされると思っています。「BROS(ブロス)」はパタンナーやデザイナーが全員女性なのも強みだと思っています。
「こんな下着をパートナーに
はいて欲しい!」がデザインの鍵。
女性視点でのモノづくりが強みに
――女性ならではの着眼点がありそうですね。

赤野
 自分たちのパートナーである男性に、こんなものをはいて欲しいという想いもデザインに反映できますし、女性がここちいいランジェリーを身につけたときの "これは自分のための下着だ!"というような快適さももっと味わってほしいと思っています。

「BROS(ブロス)」のお客さまのなかには、彼女や奥様から「こんな下着をはいて欲しい」とプレゼントされたことがきっかけで、その後もリピーターになった方も多いんですよ。あとは、ゴルフや旅行など男性同士で脱衣所にいるときに何となく視界に入った「お、あいつのパンツカッコいい」というのが、自分でパンツを買うきっかけという声もアンケートでは多かったですね。

――同性の目がきっかけに!?

赤野
 男性は、スーツの裏地やネクタイやハンカチなど、ディテールや小物にこだわったりと、隠れたところにおしゃれのポイントを置く方が多いですよね。パンツも小物感覚と言いますか、まさに見えないおしゃれというところで、こだわりをもって選ぶ方は増えているように思います。

そういう方に手に取ってもらえるよう、また、はいたときに気持ちがアガるよう、デザインはトラッドをベースに、さりげなくトレンド感や遊び心を含ませているのも特徴です。色に関しても、男性はどうしてもダークな色が主流になりますが、それだけに素材で色味に差が出ると思うんです。
色味や艶感。
上質なカッコよさを
裏付けるのは素材の良さ
――同じ色でも素材で差が出るということですか?

赤野
 メンズの下着で言うと、綿の黒には全体に浅い白っぽさが漂うので、粗野でカジュアルな雰囲気が出てしまいます。「BROS(ブロス)」では"リヨセル"という素材を使った下着があるのですが、これは色の発色がとても上質で、エレガントな風合いが出せる素材です。黒でも、男の人が好みそうな、深くてカッコいい黒が出ます。素材自体に吸湿性もありますし、滑りもよく、はきごこちも抜群です。 メンズアンダーウェア「BROS(ブロス)」NATURAL ORIGIN TRUNKS BROS(ブロス)NATURAL ORIGIN TRUNKS
――シルエット、機能、素材、とすべてに満足したら、男性は長く愛用してくれそうですね。

赤野
 本当にそう思います。メンズの下着は女性のようにからだをこう見せたいという"ボディメイク"の役割がないぶん、もっともっとシンプルに、ストレートに、ここちよさや機能性を細部まで極めなきゃいけないと感じます。その部分は、今後も追求し続けたいですし、まだ開発されていないことが多いぶん、やりがいを感じます。
赤野 美紀(あかの・みき)

赤野 美紀(あかの・みき) ウイングブランド事業本部、メンズインナー商品企画課・課長。
1989年 大阪文化服装学院卒業後、株式会社ワコールに入社。ウイングブランドのデザイナーを経て、プランナーへ。2005年、メンズインナーに移動し、BROS(ブロス)のデザインを担当。2011年より現職。

取材・文/大庭典子(ライター)
人物撮影/合田慎二

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