トップ 教えて、ドクター! / BODY 【特集/呼吸で自分を変える!】深い呼吸に不可欠な『コア』の筋

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教えて、ドクター!

2014年12月 3日

先生/柿崎藤泰(文京学院大学 保健医療技術学部
保健医療科学研究科教授)
取材・文/大庭典子(ライター)

BODY

【特集/呼吸で自分を変える!】

深い呼吸に不可欠な『コア』の筋

深い呼吸に不可欠なのは
横隔膜が働きやすい条件とは?!
深く、整った呼吸をするには、"横隔膜"の動きをよくすることが鍵。では、そのために必要なこととは何でしょう。引き続き文京学院大学の柿崎先生にご登場いただきます。先生の研究では、呼吸に問題を抱える人も呼吸がしやすくなり、また問題がない人も呼吸が深くなるという効果がある"ある動作"が効果的だということが分かったそうです。"ある動作"とは...?

前回の復習をすると、安静時の呼吸は、息を吸うときに横隔膜が下がり、吐くときに横隔膜が自動的に戻る、横隔膜の上下によって、肺に空気が出入りするのだとお話しました。横隔膜の動きをよくすると、呼吸は深くなります。

では、横隔膜の動きをよくするために大切なものとは何だと思いますか。バランスボールを想像してみると分かりやすいかもしれません。仮にバランスボールを横隔膜だとしましょう。息を吸うとき、横隔膜は下がるとお話しましたね。

丸いバランスボールを上から押すと想像してみると...安定感もなくぐらぐらとあちこちに動いてなかなか縦の力がかかりづらいですよね。中心が定まらないために、まっすぐに押せないのです。

では、どうしたらブレない縦の力で押すことができるか。片手でボールの脇を抑えてみたらどうでしょう。...かなり安定することが想像できると思います。片手で抑えた力、これが"腹筋"に値します。そして、もうひとつバランスボールを押すのに大事なのは、床がしっかりしていること。

床がやわらかいと、上からの力がかかりづらいですよね。床にたとえた部分は、"骨盤底筋"です。骨盤底筋とは、膀胱や子宮、直腸など骨盤内の内臓を下から支えていて、尿道や膣、 肛門を取り巻いている筋肉群のこと。

床(骨盤底筋)とサイド(腹筋)をしっかりさせることで、横隔膜はいい動きができるのです。横隔膜の動きがいい=呼吸が深くなるということ。腹筋も骨盤底筋もコアの筋肉ですから、コアを強化すれば、自ずと呼吸は深くなるのです。
お尻を持ち上げると、呼吸に変化が?!
当然、年齢とともに腹筋や骨盤底筋は衰えてくるので、それに伴って呼吸も浅くなってしまいます。では、腹筋や骨盤底筋をコツコツと鍛えることでしか、横隔膜を強化することができないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。コアを鍛える筋トレのようなことをしなくても、横隔膜の機能がアップする画期的な動作がわかったのです。

その動作とは、寝た状態で"お尻を持ち上げる"だけ。え? と拍子抜けした方もいるかもしれませんが(笑)、これは、呼吸が困難な患者さんを対象に行っても、「呼吸がしやすくなった」という結果が出ています。普通の方でも、呼吸が深くなることを実感できるかと思います。 寝た状態でお尻を持ち上げる 仰向けになり、膝が90度になるようにイスに足をのせ、お尻の下にバスタオルを置きます。タオルの高さは5~10センチを目安に。

なぜ、お尻を上げるだけで呼吸が深くなるかというと、仰向けに寝て、お尻を持ち上げたとき、内臓に圧がかかりますね。これは、横隔膜にとっては、かっこうの環境なのです。自分だけの腹筋の力では押せなかった横隔膜が下がり、呼吸がしやすくなります。

病院では、レッドコードという装置を使ってその環境をつくっていますが、家でやるなら、椅子とタオルを用意して行ってください。1日5分が目安です。

「やってみたところで、呼吸が深くなるのはその場だけなのでは」と思われるかもしれませんが、これが不思議なもので、横隔膜が動きやすい環境を外からつくってあげると、からだが「これが呼吸なんだ!」と学習しますから、何度も行ううちに、立ち上がっても歩いても、きちんとその状態を持続させることができるのです。

擬似的にでも機能しやすい環境をつくってあげると、まるでからだが思い出したかのように、自動的に機能することがあるのです。そこにどう誘導していくのかが、私たち理学療法の仕事でもあります。ぜひ一度試してください」

横隔膜のストレッチによって、なかには吸気が40%もアップした人もいるのだとか。呼吸が深くなるとからだには、どんな影響があるのでしょうか。次回お伺いします。
柿崎藤泰

柿崎藤泰 文京学院大学 保健医療技術学部、保健医療科学研究科教授、理学療法士、医学博士。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション部、昭和大学附属豊洲病院リハビリテーション部主任を経て現職。胸郭の運動分析、姿勢と胸郭周囲筋活動の関係、呼吸運動療法(呼吸困難感を和らげ、個人にみあった日常生活動作を再建するための運動療法)の開発を行う。臨床結果に基づき、培った理学療法士の技術により、呼吸器の障害を持つ多くの人々に見合う最良の「呼吸」づくりを提案。『呼吸運動療法の理論と技術』(メジカルビュー社)『ブラッシュアップ理学療法』(三輪書店)など著書多数。NHK『あさイチ』での呼吸の特集にも出演。

イラスト/190

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