トップ 湯山玲子の「人間はカラダだ!」 / BODY 【特集/歩くチカラを見直そう】日本人よ、歩き姿勢を自然に任せることなかれ

生きるためのボディ&ソウル。鍛えれば、人生きっといい感じ

湯山玲子の「人間はカラダだ!」

2013年5月 1日

文/湯山玲子
イラスト/腹肉ツヤ子

BODY

【特集/歩くチカラを見直そう】

日本人よ、歩き姿勢を自然に任せることなかれ

Image 去年の11月から始めた、糖質制限ダイエットの効果を実感する今日このごろだが、その際に医者から言われたのが、「とにかく、筋肉量を上げてください」だった。なぜ、医者? というのは、恥ずかしながらこの湯山ダイエット計画、雑誌『クロワッサン』の企画もので、プロのお医者さんの検診つきだったのだ。

筋肉量イコール足の筋肉ということで、勧められたのがウォーキング。それも、わざわざトレーニングウェアに着替えて、ということではなく、日々の生活に取り入れた方が持続性があるということで、11月以来、私は大好きなタクシーに背を向け、特に帰って寝るだけの飲み屋の帰りにテクテク歩いている。

歩き方は、通っているジムのインストラクターに指導を受けた。私はこの数年、膝の痛みに悩まされていたのだが、「それは歩き方が悪い」と彼は言う。「蹴り上げたら、膝を伸ばしたまま着地して体重を乗せるように。腰自体がスーッと前に進んで行くイメージです」。そのとおりやってみると、確かに体重は膝関節が垂直になったところに乗るので、全然膝が痛くない! と、そういう目で周囲の人を見てみると、ほとんど全ての人が微妙に膝が曲がった状態で歩いている。私はこれ、暗黒舞踏にも共通な農耕民族ならではの"ラク"な民族的な姿勢だと思っていたのだが、ラクかもしれないが、膝には大変に負担がかかる「止めた方がいい」歩き方だったのだ。

そして、この歩き方をやり続けていてあることに気がついた。この冬、私はサイドゴアブーツを愛用していたのだが、その形状はといえば、ソールや革がしっかりしていて、けっこうハードコアな造り。筋力を上げるためにはこのぐらいの負荷があった方がいいかも、と星飛雄馬の大リーグボール養成ギブス装着系の勢いで履いていたのだが、意外にもこのブーツの装着時には、例の「膝伸ばしウォーキング」が非常にスムーズに行くことに気がついてしまった。たとえて言えば、足が重りのついた振り子のよう。蹴り上げた足が靴の重みでストンと地面に落ちて、馬力のある推進力になっていくのである。靴の重さはもうまったく感じられずに、本当に歩くことが苦痛ではなくなった。
草履と下駄で歩いてきた私たちが
さぁ、靴を履いたならば...
私はこの体験を通して、欧米の靴文化の身体感覚がよーく理解できた。こういう重い革靴の文化があったからこそ、欧米人は自然と膝が曲がらない美しい歩き方ができてしまうのであろう。一方、私たちの文化は草履や下駄の文化。その自然な歩き方は、能や日本舞踊を見ればわかるように、摺り足である。これもまた、膝に負担がかからない優雅な歩き方なのだが、それが靴に取り変わったときに"間に合わせ"で行った歩き方が、すなわち膝を曲げて歩くことだったのだろう。

それでいうと、ハイヒールに関しても考え方が変わってくる。女性の身体にとって負担が大きい、と悪の権化のように言われているが、これもバレリーナがつま先で立つように骨盤を締め、インナーマッスルをうまく使えぱ、正しい姿勢にからだをもってくることができて、エクササイズにもなるという意見を最近では目にする。確かに、欧米の女性は60歳過ぎてもハイヒールを履きこなし、腰が曲がったおばあさんは本当に少ない。

とにかく、日本人の私たちは、歩き方を自然にまかせてはいけない。日本人は西洋の文化を取り入れて、うまく日本化することがうまいが、こと、この靴の文化だけは、残念ながら現在でも消化不良だったのである。

湯山玲子(著述家) 自ら寿司を握るユニット「美人寿司」、クラシックを爆音で聴く「爆音クラシック」を主宰するなど、カルチャー界を牽引。著書に『四十路越え!』(ワニブックス)、上野千鶴子氏との共著に『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)がある。

構成/本庄真穂

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